スペクティとJICA、AI技術で比の防災能力強化支援

AI活用災害管理システム「Spectee Pro」フィリピン版発表

2025/08/15

 国際協力機構(JICA)、フィリピン情報通信技術省(DICT)、日本の防災テックスタートアップのSpectee(スペクティ、本社:東京都千代田区)は、814日、AI(人工知能)を活用した災害・危機管理プラットフォーム「Spectee Pro」のフィリピン版を正式に発表した。

 発表イベントはマニラ首都圏ケソン市で行われ、202410月に締結された導入・現地化に関する協定に基づくプロジェクトが、約10カ月の現地仕様への調整やユーザーテストを経て大きな節目を迎えた。

 Spectee ProJICAの「SDGsビジネス検証調査(民間連携事業)」の枠組みで開発され、日本で実績のあるシステムをフィリピン向けに最適化したもの。SNSなどのオープンソースからリアルタイム情報をAIで収集・分析・可視化し、台風、洪水、地震、火災などの発生を一元的ダッシュボードで把握できる。これにより、関係機関がより迅速かつ正確な対応判断を行えるとのことである。

 クラウド上で提供されるSaaS型のサービスで、顧客のシステム開発などの初期投資は不要で、インターネット環境があれば手軽に導入することができる。大規模な情報システムを開発することに比べると負担は小さく、フィリピンの地方自治体(LGU)でも導入が容易なものとなっている。

 現時点で、マニラ首都圏、セブ、ダバオ、タクロバン、レガスピ、タグビラランを含む約120の政府機関、民間企業、地方自治体(LGU)が同システムを利用しており、20265月までは無償で提供される。今回のイベントでは、参加自治体が実際の災害対応での活用事例を共有し、状況把握力や連携・対応速度の向上効果を報告した。未導入の自治体や関係機関にとっては、導入検討の契機となる場ともなった。

 フィリピンは自然災害リスクが世界で最も高く、2024年世界リスク報告書では193カ国中1位と評価されている。フィリピン統計庁(PSA)によれば、2010年から2019年の自然災害による経済被害額は4,630億ペソに達しており、フィリピンにとって災害対応力の強化は喫緊の課題である。

 JICAはこの取り組みを、災害対応力の向上に資するだけでなく、国際協力を通じて民間技術を地域開発に活用するモデルと位置づけている。フィリピン政府も、国家防災減災管理計画(NDRRMP)2020-2030において最先端技術と制度的連携を防災戦略の柱と位置づけており、今回の導入はその一環となる。