上場廃止相次ぐ、港湾企業ATIが自主的上場廃止決議

国営ファンド「マハルリカ」がTOB、25年は上場企業数純減

2025/12/17

 港湾業務・ターミナル運営大手アジアン・ターミナルズ(証券コード:ATI)は、1215日開催の取締役会においてフィリピン証券取引所(PSE)メインボードからの自主的な上場廃止に向けた手続きを開始する方針を決定した。物流・サプライチェーン分野での投資柔軟性を高め、機動的な事業運営を可能にすることが目的としている。

 ATI取締役会は同日、政府ファンドである「マハルリカ投資基金(MIF)」を運営・管理するマハリカ投資公社(MIC)から、ATIの一般株主および従業員保有株の一部を対象とした株式公開買い付け(TOB)を実施する意向が示されたことを受け、自主的上場廃止することを承認した。あわせて、既存の自社株買いプログラムを拡大し、MICによるTOBと同一の枠組みで、残存する一般少数株主株および従業員持株の取得を進める。

 上場廃止の承認を諮る臨時株主総会は、2026130日に開催予定で、フィリピン証券取引委員会(SEC)およびPSEの規則に基づき手続きが進められる。

 TOB価格は136.00ペソで、独立した第三者機関によるフェアネス・オピニオンに基づくものとした。ATIは、この価格設定により、一般少数株主に対し保有株式の価値を顕在化させる明確かつ規律ある手段を提供し、投資家保護と規制順守を確保すると説明している。TOB完了後、応募状況にもよるが、MICATI持ち株比率は約11.2%となる見通し。

 ATIは、上場廃止を長期的成長に向けた戦略的措置と位置付け、迅速な意思決定、投資の自由度向上、運営能力の強化を通じて、効率化、インフラ近代化、市場開発を加速させる方針を示した。貿易を効率的かつ持続可能に支えるという同社の使命に沿った動きであるとした。

 また、MICTOBに関心を示したことは、ATIの業界内での強固な地位、業績、ガバナンス、そして国家物流・港湾エコシステムにおける重要性に対する外部からの信認を示すものと強調した。これは、戦略分野への投資を使命とするMICの投資方針とも一致するとしている。

 ATIは、SECおよびPSEの規則に従って進められる上場廃止手続きが、日常業務や従業員、顧客、取引先との関係に影響を及ぼすことはないと説明した。サービス内容、契約、既存のコミットメントは維持され、今後も設備能力の拡張、技術導入、持続可能な市場主導型運営への投資を継続する方針である。ATIは今後、規制当局のスケジュールに従い、追加の発表を行うとしている。

 なお、PSEへの新規上場が伸び悩む一方、上場廃止が相次いでいることから上場企業数がなかなか増えない状況が続いている。2025年も新規上場企業数は2社にとどまる一方、上場廃止は3社に達している。2025年末の上場企業数は2024年末日1社純減の282社となる見込み。

 フィリピン証券取引所(PSE)上場企業数などの推移
2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年予
新規上場企業数 4 4 8 10 3 3 2
上場廃止企業数 2 1 3 0 6 3 3
年末上場企業数 268 271 276 286 283 283 282
(出所:PSE資料などより作成)