オカダ・マニラ運営企業、PSE裏口上場の動き

ほぼ休眠の上場企業ABG買収で合意

2018/09/12

 カジノ・娯楽関連企業であるユニバーサルエンターテインメント(旧社名アルゼ、ジャスダック上場、以下UE社)は、マニラ首都圏で大型カジノリゾート『オカダ・マニラ』プロジェクトを推進している。
 
 最近、『オカダ・マニラ』プロジェクトの現地実施企業「タイガーリゾート・レジャー&エンターテインメント(タイガー・リゾーツ社)」が、フィリピン証券取引所(PSE)上場の休眠状態の企業を使ってPSEに裏口上場(バックドア・リスティング)するのではとの観測・噂が何度も広まっている。
 
 UE社に内紛があったこともあって、タイガー・リゾーツ社の上場方針が明確でない状況が続いてきた。UE社の現経営陣は、今年5月、今後2年程度以内を目途に「タイガー・リゾーツ社」株式公開の準備を進めていると表明した。
 
 このような動きの中で、9月11日、「タイガー・リゾーツ社」の親会社である「タイガー・リゾート アジア」(所在地:香港)が、PSE上場の持株会社「アジアベスト グループ インターナショナル(ABG)」の株式2億株(発行株式総数の約3分の2)を取得することで合意したと発表された。このABG株式売買は、2018年11月12日にPSEにおいて、特別ブロックセールというかたちで執行される予定である。すなわち、「タイガー・リゾート」グループが、PSE上場企業を買収することになる。
 
 ABGはPSE上場の持株会社と言いながら、ほぼ休眠状況であり、2016年、2017年、2018年上半期ともに収入ゼロと報告されている。「タイガー・リゾート」グループがこのような企業を買収するのは、フィリピンの「タイガー・リゾーツ社」を裏口上場させるための動きと見る向きが多い。すなわち、休眠に近いABGを買収、「タイガー・リゾーツ社」と合併させ、上場ステータスを有するABGを存続会社とすることで、通常の上場プロセスを得ないで、一気に「タイガー・リゾーツ社」を上場会社とすると見られるのである。
 
 なお、小規模や半休眠の上場会社が多く存続していたフィリピンでは、それらを活用した非上場企業の裏口上場がしばしば見られてきた。近年の裏口上場の例としては、 フィリピン航空持株会社PALホールディングス、不動産企業センチュリー・プロパティ―ズ・グループ(CPG)、カジノ企業ブルームベリー・インベストメ ント・ホールディングス(ブルームベリー)やメルコ・リゾーツ、学校チェーンのSTIエドケーション・サービス・グループ(STI)、洋酒のエンペラドール、飲料関連持株会社のマッケイ・ホールディングス、鉱業のグローバル・フェロニッケルなどが挙げられる(18年9月11日の フィリピン証券取引所回覧06047-2018号などより)。