ペソ対米ドルレート、11月は2.7%の下落

2016/12/01

24日には一時約10年ぶりの50ペソ台に
11カ月間で5.4%下落、4年連続のペソ下落へ

 

 PDS(フィ リピン・ディーリング・システム)におけるペソ対米ドルレートは、2016年11月末終値が1米ドル=49.730ぺソとなり、月間ベースで2.66%の反落となった。

 ペソ対米ドルレートは、6月~7月にかけての新政権祝賀ムードが希薄化したこと、ドゥテルテ大統領の扇情的な発言や強硬的との印象を与える運営スタイル や手法に対する懸念が高まりそれらが好調な経済に水を差すのではという観測が拡がったきていたことに加え、11月は米国トランプ新大統領の政策に関しての 思惑で米国市中長期金利が上昇したことやFRBによる利上げ観測に伴う世界的なドル高を背景に、ペソ売り圧力が一段と強まった。

 マクロ経済指標に関しては、11月17日に発表された2016年第3四半期(7月~9月)GDP成長率が7.1%、9カ月間で7.0%とアジア主要国で 最高水準であったが、ペソ安に歯止めをかけるには至らなかった。むしろ、経常収支の黒字急減(上半期で前年同期比85%減の7億7,800万米ドル)や、 財政赤字急拡大(10カ月間で同約4倍の2,160億ペソ)がペソ安の動きを強めている感がある。

 このような状況下で、11月24日には一時、2006年10月以来約10年ぶりの50ペソ台に下落した。終値は辛うじて49ペソ台へと戻し月末にかけて 僅かにペソがリバウンする場面もあったが、11月月間ではペソは軟調に推移した。これらの結果、2016年11カ月間累計では5.37%のペソ安(ペソ対 米ドルレート下落)となっている。
 
 12月は、例年クリスマスに向けて海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金が増加するというシーズン的なペソ高ファクターもあるが、米国利上げも予 想され、ペソが大幅にリバウンドする可能性は薄そうである。したがって、年間ベースでは、2013年以降の4年連続のペソ下落の可能性が非常に高くなって いる。ちなみに、2012年末から2016年11月までの約4年間のペソ下落率は17.45%に達している。

 

ペソ対米ドルレートの動き(年末値と月末価、16年は11月29日終値)
時期 年末・月末値 上昇率
2004年 56.280ペソ -1.39%
2005年 53.090ペソ 6.01%
2006年 49.030ペソ 8.28%
2007年 41.280ペソ 18.77%
2008年 47.520ペソ -13.13%
2009年 46.200ペソ 2.86%
2010年 43.840ペソ 5.38%
2011年 43.840ペソ 0.00%
2012年 41.050ペソ 6.80%
2013年 44.395ペソ -7.53%
2014年 44.720ペソ -0.73%
2015年 47.060ペソ -4.97%
 
2016年1月末 47.650ペソ -1.24%
2月末 47.545ペソ 0.22%
3月末 46.070ペソ 3.20%
4月末 46.890ペソ -1.75%
5月末 46.755ペソ 0.29%
6月末 47.060ペソ -0.65%
7月末 47.110ペソ -0.11%
8月末 46.580ペソ 1.14%
9月末 48.500ペソ -3.96%
10月末 48.405ペソ 0.19%
11月末 49.730ペソ -2.66%
 
11カ月間 - -5.37%
(出所:フィリピン証券取引所やPDS資料より作成)