11月のインフレ率2.5%、21カ月ぶりの高水準

2016/12/07

カガヤン・バレーが5.3%で最高、首都圏2.0%
寄与度:食料1.3%、外食・サービス0.2%

 フィリピン統計庁(PSA)発表によると、2016年11月のインフレ率(総合消費者物価指数{CPI、2006 年=100}の前年同月比上昇率)は2.5%(速報値)となり、前月(2.3%)から0.2%ポイント上昇、前年同月(1.1%)からは1.4%ポイント 上昇した。そして、2012年2月の2.5%以来、21カ月ぶりの高水準となった。

 11月のインフレ率はフィリピン中央銀行(BSP)の事前予想 (1.6~2.4%)の僅かに上回ったが、年初11カ月間(1~11月)の平均は1.7%で、依然として2016年政府インフレ目標(2.0~4.0%) の下限以下の推移となっている。また、特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は2.4%、前月から0.1%ポイント上昇 した。11カ月間の平均コアインフレ率は1.8%。

 11月のインフレ率上昇は、電気料金の上昇やLPGや灯油等国内の石油製品価格の上昇傾向に起因している。一方、米、魚、果物の価格上昇はトウモロコ シ、肉類、野菜価格の値下がりで相殺され、食品のインフレ率は安定していた。

 総合インフレ率を地域別で見ると、首都圏(地域別構成比30.006%)は2.0%で前月から0.1%ポイント鈍化。一方、地方 (地域別構成比 69.994%)は2.6%で、前月から0.2%ポイント上昇した。

 インフレ率が最も高かった地方はカガヤン・バレー地方(5.3%)、次いでダバオ地方(3.5%)。最もインフレ率が低かった地方は、カラバルソン地方 (1.5%)、西ビサヤ地方(1.8%、西ネグロス州除く)、イロコス地方(1.8%)であった。


CPI上昇率(インフレ率:2006年基準、前年同月比%)
項目 16年11月 16年10月 15年11月 16年1-11月
全国    総合インフレ率 2.5 2.3 1.1 1.7
      コアインフレ率 2.4 2.3 1.8 1.8
首都圏  総合インフレ率 2.0 2.1 1.0 1.1
地方    総合インフレ率 2.6 2.4 1.1 1.9
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)


インフレ率目標と実績の推移(11年以前の実績はその目標設定時の00年基準値、それ以降は06年基準)
10年 11年 12年 13年 14年 15年 16~18年
インフレ目標 3.5~5.5% 3.0~5.0% 3.0~5.0%  3.0~5.0% 3.0~5.0% 2.0~4.0% 2.0~4.0%
インフレ率実績 3.8% 4.6% 3.2% 3.0%  4.1% 1.4% -
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)


総合CPI上昇率(2006年基準、前年同月比%)
項目 年間 15年 16年
15年 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
総合 1.4 1.1 1.5 1.3 0.9 1.1 1.1 1.6 1.9 1.9 1.8 2.3 2.3 2.5
食料品・非アルコール飲料 2.5 1.7 1.7 1.7 1.5 1.6 1.6 2.3 2.9 2.7 2.4 3.1 3.4 3.3
酒類・煙草 3.8 3.9 4.4 4.7 4.9 5.0 5.2 5.6 5.7 5.8 6.0 6.2 6.1 6.5
衣料・靴類 2.6 2.3 2.3 2.1 1.8 1.8 1.9 2.4 2.5 2.5 2.6 2.7 2.8 2.6
住宅・水道光熱費 -1.3 -1.2 -0.3 -0.5 -1.2 -1.5 -1.5 -1.2 -0.4 -0.2 0.2 0.9 0.9 1.3
家庭備品・設備 1.9 1.6 1.6 1.5 1.5 1.5 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.3 2.4 2.4
保健・衛生 2.1 1.8 1.9 1.8 1.9 1.9 2.2 2.4 2.5 2.4 2.7 2.7 2.6 2.6
交通・輸送 -0.1 0.6 2.2 1.5 -0.5 0.0 0.0 0.1 -0.1 -0.1 0.1 0.2 0.2 0.5
通信 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
娯楽・文化 1.1 1.0 1.1 1.0 1.0 1.1 1.3 1.6 1.7 1.8 1.7 1.7 1.8 1.6
教育 4.2 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 1.9 1.8 1.8 1.8 1.8 1.8
外食・雑貨・サービス 1.3 1.4 1.4 1.4 1.5 1.9 2.1 2.2 2.3 2.3 2.4 2.4 2.4 2.1
首都圏 1.0 1.0 1.1 0.6 0.1 0.2 0.4 1.0 1.1 1.0 1.2 2.0 2.1 2.0
 地方 1.5 1.1 1.5 1.6 1.2 1.3 1.3 1.7 2.1 2.1 2.0 2.4 2.4 2.6



食料品物価上昇率(2006年基準、前年同月比%)
項目 食料 コーン 果物 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 パン・シリアル 砂糖・菓子類 その他食品
11月 1.7 -2.4 0.0 3.6 12.1 0.9 3.6 1.2 -0.1 -1.6 3.9 2.8
12月 1.8 -2.6 0.4 3.5 12.0 0.8 4.2 1.3 0.2 -1.7 4.9 2.4
16/1月 1.7 -2.4 0.9 3.4 11.9 0.8 3.4 1.2 0.2 -1.5 5.6 3.0
2月 1.5 -2.0 1.8 3.3 9.7 0.9 2.3 1.1 0.2 -1.2 6.4 3.7
3月 1.6 -1.7 2.5 3.3 9.1 1.2 2.8 1.2 0.3 -0.9 7.1 2.6
4月 1.7 -1.3 2.7 3.9 9.6 1.8 1.3 1.2 1.2 -0.5 6.7 1.3
5月 2.4 -0.8 2.5 4.0 12.7 2.3 2.9 1.5 2.3 -0.2 4.7 -1.2
6月 3.0 -0.5 2.6 5.5 16.5 2.5 3.9 1.8 2.9 0.1 3.5 -3.0
7月 2.8 0.0 2.9 6.0 12.8 2.2 4.1 1.8 3.5 0.5 3.3 -2.6
8月 2.5 0.5 2.5 6.8 6.3 1.9 4.2 2.0 3.8 0.9 3.4 -2.5
9月 3.1 1.0 2.3 8.2 10.8 1.7 4.6 2.1 4.3 1.1 3.4 -2.1
10月 3.5 1.2 2.7 8.8 12.6 1.6 4.5 2.2 4.5 1.4 3.4 -1.0
11月 3.5 1.4 1.6 9.4 11.0 1.5 4.7 2.2 4.7 1.5 2.9 -0.1
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)


 なお、中央銀行(BSP)発表によると、11月の総合インフレ率(2006年=100)2.5%への寄与度は、食料品・非アルコール飲料 1.3% (うち食料品 1.3%)、住宅・水道光熱費 0.3%、外食・サービス他 0.2%、教育 0.1%、酒類・煙草 0.1%、衣料・靴類 0.1%など。

 一方、11カ月間平均インフレ率1.7%への寄与度は、食料品・非アルコール飲料0.9% (うち食料品0.9%)、住宅・水道光熱費 -0.1%、外食・サービス他0.2%、教育0.1%、酒類・煙草0.1%、衣料・靴類 0.1%。

 テタンコ中央銀行総裁は、「現在のインフレ率は、金融政策上対処可能なインフレ見通しであるとの中央銀行の評価と一致したものであり、平均インフレ率は 徐々に2016~18年のインフレ目標(2.0%~4.0%)圏内まで上昇していくと予想される」と述べた。

 中央銀行は、金融政策のスタンスが確実に物価安定に繋がるよう、引き続き、国内、海外の景気動向や物価傾向を注意深くモニターしていく方針である(16 年12月6日のフィリピン統計庁・中央銀行発表より)。


2016年11月及び11カ月間のインフレ率(2006年=100)と寄与度(%)
項目 物価指数 11月 1-11月
構成比 インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 2.5 2.5 1.7 1.7
食料品・非アルコール飲料 38.98 3.3 1.3 2.4 0.9
   うち食料品のみ 36.29 3.5 1.3 2.5 0.9
酒類・煙草 2.00 6.5 0.1 5.6 0.1
衣料・靴類 2.95 2.6 0.1 2.3 0.1
住宅・水道光熱費 22.47 1.3 0.3 -0.2 -0.1
家庭用品・営繕 3.22 2.4 0.1 1.9 0.1
健康・医療 2.99 2.6 0.1 2.4 0.1
交通・輸送 7.81 0.5 0.0 0.2 0.0
通信 2.26 0.1 0.0 0.1 0.0
娯楽・文化 1.93 1.6 0.0 1.6 0.0
教育 3.36 1.8 0.1 2.6 0.1
外食・サービス他 12.03 2.1 0.2 2.1 0.2
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)