9カ月間の経常収支、16億ドルの黒字に

2016/12/19

モノ貿易赤字急拡大をOFW送金などで相殺
14年連続黒字期待、前年比は大幅減ペース


フィリピン中央銀行(BSP)は12月16日、2016年第3四半期(7~9月)及び9カ月間(1~9月)の国際総合収支(BOP)を発表した。

 フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金により、経常収支は黒字というパ ターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、景気の押し上げ要因となっている。また、フィリピン格付 引き上げの大きな要素ともなってきた。

 [2016年第3四半期]
 当期の国際総合収支(BOP)は10億1,400万米ドルの黒字で、前年同期の1億2,400万米ドルから黒字額が約8.2倍へとを急拡大した。金融収 支が純流出に転落したが、経常収支の黒字拡大で支えられた。

 経常収支黒字は9億7,900万米ドルの黒字となった。サービス貿易収支や第一次所得収支の黒字大幅増加に加え、OFW送金などで構成される第2次所得 収支の黒字が前年同期比8.1%増の64億3,600万米ドルへと増加したことなどで、モノの貿易赤字79億4,700万米ドルをほぼ相殺するかたちと なった。経常収支黒字額対GNI比は1.1%、対GDP比は1.3%であった。


第3四半期の国際総合収支(単位:百万米ドル)
項目 2015年 2016年
経常収支 969 979
資本移転等収支 28 30
金融収支* -205 308
誤差脱漏 -1078 314
国際総合収支 124 1014
(*金融収支のプラス残高は純流出、マイナス残高は純流入を意味する)


 2016年9月末現在の外貨準備高(GIR)は861億米ドルで、2016年6月末の853億米ドル、前年9月末の806億米ドルを上回った。輸入の 9.8カ月分に相当。また、原本ベース短期対外負債の6.1倍、残存ベース短期対外負債の4.4倍に相当する水準である。

 [2016年9カ月間]
 2016年9カ月間の国際総合収支(BOP)は16億4,800万米ドルの黒字で、前年同期の18億0,800万米ドルから黒字が8.8%縮小した。モ ノ貿易の累積赤字が前年同期比52.1%増241億1,700万米ドルへと大幅増加したことで、経常収支黒字が同74%減の16億2,100万米ドルへと 急減したことが響いた。ただし、サービス貿易収支や第一次所得収支の黒字大幅増加、OFW送金などで構成される第2次所得収支の黒字が同6.1%増の 186億2.300万米ドルと高水準であったことから、今9カ月間の経常収支は依然黒字を継続した。

 なお、フィリピンの経常収支は、2003年から2015年まで14年連続の黒字が続いている。上記の様に、OFW送金を中心とする第2次収支の高水準の 黒字がモノの貿易赤字を相殺するパターンが続いてきている。2016年もOFW送金に支えられ、14年連続の経常収支黒字となる可能性がある(16年12 月16日のフィリピン中央銀行発表より)。


 9カ月間の国際総合収支(単位:百万米ドル)
項目 2015年 2016年
経常収支 6225 1621
資本移転等収支 80 110
金融収支* 1336 265
誤差脱漏 -3162 182
国際総合収支 1808 1648
(*金融収支のプラス残高は純流出、マイナス残高は純流入を意味する)


 [国際総合収支発表について]
 中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。

 ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、11月19日に発表 された2016年10月及び年初10カ月間の速報値。それによると、10月は1億8,300万米ドルの赤字、年初10カ月間の累計は14億6,500万米 ドルの黒字であった。下表のような詳細な積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期ベースである。


国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル)
項目 第3四半期 1 - 9月
15年 16年 伸び率(%) 15年 16年 伸び率(%)
経常収支 969 979 1.0 6225 1621 -74.0
   対GNI比(%) 1.1 1.1 - 2.4 0.6 -
   対GDP比(%) 1.4 1.3 - 2.9 0.7 -
貿易・サービス・第一次所得収支 -4983 -5457 -9.5 -11330 -17002 -50.1
   貿易・サービス収支 -5069 -6058 -19.5 -12267 -18916 -54.2
      貿易収支 -6328 -7947 -25.6 -15857 -24117 -52.1
       対GNI比(%) -7.5 -8.9 - -6.2 -9.1 -
       対GDP比(%) -9.2 -10.7 - -7.5 -10.9 -
        輸出 11170 11928 6.8 32971 32814 -0.5
        輸入 17499 19876 13.6 48827 56932 16.6
      サービス収支 1259 1890 50.1 3590 5201 44.9
第一次所得収支 86 601 600.0 937 1914 104.3
第二次所得収支 5952 6436 8.1 17555 18623 6.1
資本移転等収支 28 30 4.9 80 110 36.7
 
金融収支(マイナス勘定) -205 308 250.4 1336 265 -80.2
  直接投資 -147 -498 -239.4 -43 -2647 -6001.6
  証券投資 2450 -843 -134.4 5357 1518 -71.7
  金融派生商品 17 -11 -164.3 -12 46 466.4
  その他投資 -2526 1660 165.7 -3965 1348 134.0
 
誤差脱漏 -1078 314 129.1 -3162 182 105.8
 
国際総合収支 124 1014 719.4 1808 1648 -8.8
 対GNI比(%) 0.1 1.1 - 0.7 0.6 -
 対GDP比(%) 0.2 1.4 - 0.9 0.7 -
 
参考:OFW等の個人送金額合計 7164 7540 5.2 21122 22108 4.7
 うち銀行経由分 6481 6833 5.4 19103 20025 4.8
(出所:BSP資料より作成、注:16年は全て速報値)


フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)
04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年 15年
貿易・サービス収支 -7461 -9113 -6595 -6142 -11725 -6728 -8231 -11492 -12747 -10647 -12754 -17455
 対GNI比 -6.6% -7.0% -4.3% -3.3% -5.3% -3.0% -3.1% -3.9% -4.2% -3.2% -5.0% -6.1%
 対GDP比 -8.2% -8.8% -5.4% -4.1% -6.8% -4.0% -4.1% -5.1% -5.1% -3.9% -6.1% -7.4%
経常収支 1625 1980 5341 7112 3627 9358 8922 7125 6949 11384 10756 8396
 対GNI比 1.4% 1.5% 3.5% 3.8% 1.7% 4.2% 3.4% 2.4% 2.3% 3.4% 3.1% 2.4%
 対GDP比 1.8% 1.9% 4.4% 4.8% 2.1% 5.6% 4.5% 3.2% 2.8% 4.2% 3.8% 2.9%
国際総合収支 -280 2410 3769 8557 89 6421 14308 11400 9236 5085 -2858 2616
 対GNI比 -0.2% 1.9% 2.5% 4.6% 0.0% 2.9% 5.4% 3.8% 3.1% 1.5% -0.8% 0.7%
 対GDP比 -0.3% 2.3% 3.1% 5.7% 0.1% 3.8% 7.2% 5.1% 3.7% 1.9% -1.0% 0.9%
(出所:中央銀行資料より作成)