損害保険ジャパン日本興亜株式会社(損保ジャパン日本興亜」は、東南アジアで展開する農業従事者向け天候インデックス保険の取組みにより、第2回サステナブルファイナンス大賞の「大賞」を受賞した。
<天候インデックス保険の概要>
天候インデックス保険とは、気温、風量、降水量、日照時間等の天候指標が、事前に定めた一定の条件を満たした場合に定額の保険金額を支払う保険商品である。近年深刻化している気候変動に対する適応策として、気候変動の影響を受けやすい発展途上国の農業セクターを中心に、注目を集めている。
東南アジアにおける取組み
(1)フィリピンにおける取組み
現地法人であるPGA Sompo Japan Insurance Inc.が、フィリピン南部のミンダナオ島の台風によるバナナ生産農家など農業生産者の被害の緩和を目的とした『台風ガード保険』の認可を取得し、14年8月1日から販売開始した。
ミンダナオ島は、フィリピンの南部に位置し、基本的には台風が上陸することが少なく、フィリピンの他の地域に比べて台風による被害が少なく農業に適した地域である。バナナ、パイナップルをはじめ、多くの農作物が大規模農園で栽培され国内外へ出荷されている。しかし、2011年から2年間連続して、ミンダナオ島に強い台風が上陸し、農作物に大きな被害をもたらしたことから、農業生産者や資金を提供する銀行等から台風による被害を緩和する保険へのニーズが高まった。
そこで、損保ジャパンおよびPGA Sompo Japan Insurance Inc.は2013年に商品開発の検討を開始し、具体的な商品開発にあたっては、日本で既に販売していた『台風ガード(天候デリバティブ)』の技術と経験を活用し、グループ会社である損保ジャパン日本興亜リスクマネジメントが確率台風モデルおよびプライシングツールの開発を行った。確率台風モデルとは、稀にしか発生しない台風やこれまでに経験したことのない経路・強さの台風を含む多数の台風をシミュレーションし、年間の台風通過頻度を算出するもの。
(2)タイにおける取り組み
タイ東北部の干ばつによる農業従事者の被害に伴う損害を緩和するため、天候インデックス保険を2010年から販売している。2012年に干ばつが発生した際に、加入者の80%以上の農家に保険金を迅速に支払った実績が現地で高く評価された結果、現在ではタイ東北部の20県まで販売対象範囲が拡大している。
(3)ミャンマーにおける取組み
ミャンマーの中央乾燥地帯の米農家とゴマ農家を対象に、干ばつリスクに対応した天候インデックス保険を2014年12月に開発した。一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)と共同で、人工衛星観測データから推定された雨量をインデックスとして活用した保険であり、日本初の開発事例である。
<サステナブルファイナンス大賞「大賞」の受賞理由>
サステナブルファイナンス大賞とは、環境問題を金融的手法で解決する「環境金融」の普及・啓蒙活動を展開する一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)が、2015年から始めた表彰制度です。日本の金融市場で環境金融商品・サービス・取り組みを展開している金融機関等を表彰対象としている。本受賞では、以下について評価された。
・気候変動の適応策としての金融商品の開発をしている。
・気候変動の影響を受け易い途上国の零細農家の持続可能な農作業を保険で支援している。
・一般財団法人リモート・センシング技術センターや現地ステークホルダーと協働で行っており、現地のインフラ整備にもつながり、社会への影響も大きい。
損保ジャパン日本興亜は、今後も東南アジアにおいて自然災害リスクに直面する農家に天候インデックス保険を広く提供していく方針である。また、リスクに脆弱な社会層へのソリューションの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献すると共に、持続可能な成長を目指していく。
なお、天候インデックス保険は2015年に、国連開発計画(UNDP)が主導する「ビジネス行動要請(BCtA)」に承認された。これは当該天候インデックス保険が、商業活動と持続可能な開発を両立するビジネスモデルとして評価されたものである。日本の金融機関として初、世界の損害保険会社として初の承認となった。このように、天候インデックスは各方面から大きく評価されている(17年1月25日の損保ジャパン日本興亜ホールディングス株式会社ニュースリリースなどより)。