京都のダリケー、ミンダナオ島カカオ産業発展を支援

JICA中小企業海外展開支援事業案件化調査に採択

2017/01/31

  国際協力機構(JICA)は、開発途上国の開発ニーズと日本の中小企業の優れた製品・技術等とのマッチングを進め、これらの製品・技術をODA事業に活用するための情報収集やODA事業実施後の事業計画立案等を支援する「中小企業海外展開支援事業~案件化調査~(案件化調査)」を2012年度から実施している。(2012年度、2013年度は外務省委託費事業として実施)。2016年度第2回分は昨年9月に公示を行い、審査を経て36件の案件を採択した。

 案件化調査の審査・採択は、優れた製品・技術を有する中小企業からの提案について、開発途上国の課題解決への貢献、ODA案件化の可能性、ビジネス展開計画の熟度等の観点から、外部有識者等の審査委員によって行われる。採択された提案については、契約交渉を経て提案企業に対してJICAが調査業務として委託(上限:3,000万円、機材の別送を必要とする場合は5,000万円)する。

 今回の募集では、35の都道府県に所在する企業より多くの提案が寄せられ、採択も日本全国に広がっている。対象国・地域については、採択案件の約半数を占める東南アジア・大洋州地域の他、東・中央アジア、南アジア、アフリカ、中南米、中東地域への提案も採択された。分野については、農業分野に次いで廃棄物処理、水の浄化・水処理分野等が多くなっている。

JICAは、今後も日本の中小企業が有する優れた製品・技術を活用した開発途上国の開発課題の解決と、これを通じた中小企業の海外展開支援を進めていく方針である。

 今回、採択された36件には、Dari K(ダリケー)株式会社(本社:京都府京都市)による、「ミンダナオ・バンサモロ地域におけるカカオの生産性向上ならびに高付加価値化に関する案件化調査」が含まれている。フィリピンではカカオ産業の新興・発展を望む声が高まっており、ダリケーはインドネシアなどでのカカオ産業支援実績などを活用し、フィリピン、特にバンサモロ地域のカカオ産業の発展に貢献する意向である。

 ダリケーの事業内容は�@カカオ豆/カカオマスの輸入・卸、�Aチョコレートおよび菓子の製造・販売、�Bカカオやチョコレートに付随する食品・健康食品などの企画・製造・販売あどである。 2011年3月に創業して以来、一貫してインドネシア・スラウェシ島でカカオ生産者に対し、技術指導を通じて彼らの所得向上やカカオ豆の品質向上に取り組んできている。

 ダリケーは、2016年10月に、開発コンサルティング企業であるアイ・シー・ネット株式会社(本社:埼玉県さいたま市)と、インドネシア・スラウェシ島のバンタエン県に共同出資のインドネシア法人PT Kakao Indonesia Cemerlang (「PT KIC)を設立した。バンタエン県を中心に農家指導や収穫後処理の技術供与をすることにより、生産性の向上やカカオの高品質化を実現し、その結果として農家の所得向上や、消費者と生産者をつなぐ取り組みによる生産者が「やりがい」を感じられる社会づくりを目指す。また、サプライチェーンの最上流である原料生産者と、最下流である消費者を繋ぐ活動を通じて得られた知見をスタディツアーやセミナーを通して、海外への事業展開や途上国の社会課題解決に興味のある個人や企業に提供することで、日本と開発途上国を繋ぐより良い社会の実現への貢献を目指すとのことである。

 カカオと聞いてイメージするガーナなどのアフリカ諸国やエクアドルなどの中米などであるが、アジアでもカカオは栽培されている。インドネシアは世界屈指のカカオの一大産地である。そのインドネシアの全生産量の7割以上は、バリ島とフィリピンの間に位置するスラウェシ島で生産されている。フィリピンに近いスラウェシ島でのダリケーの経験・実績は、今回採択されたフィリピンでの案件化調査にも大きく役立つことになると期待される。