現政権に綻び、ヤサイ外相が国籍問題で辞任へ

ロペス環境相も出身母体の環境問題等で苦境

2017/03/09

  任命委員会(CA)は3月8日、ペルフェクト・ヤサイ外相が米国籍を有していたことを理由に、ヤサイ氏の外務大臣選任を否決した。

 同委員会は、ヤサイ氏が、ドゥテルテ大統領が同氏を閣僚に任命する2日前の2016年6月28日に米国籍を放棄したとの報道の後、(フィリピン)市民権の有無で抗弁できなかったことを受け、任命却下の決定を下した。閣僚規定によると、過去25年間の間に外国籍を有していた場合は、閣僚就任の資格がないとのことである。任命委員会の外務審議会長を務めるラクソン上院議員によると、任命委員会メンバー18人中15人が、市民権問題でヤサイ氏の外相継続に否定的な立場であったとのことである。

 同日、フィリピン外務省(DFA)は、任命委員会(CA)がヤサイ外相の選任を却下する決定を下したことに対し、その決定を尊重すると発表した。すなわち、ヤサイ外相は辞任に追い込まれるといえよう。

 外務省広報担当によると、外務大臣の後任に関して、外務省は、ドゥテルテ大統領の決定を待っている。一方、省内では、移行が円滑に進むよう、また、業務が効率的に行われるよう取り組んでいく。年功序列を基準にすれば、エンリケ・マナロ外務次官(政策担当)が外相代理を務める可能性が高いと見られている(17年3月8日のフィリピン通信より)。

 一方、鉱山閉鎖・停止命令多発で一部から反発を受けているジーナ・ロペス環境資源相も厳しい立場に追い込まれている。出身母体であるロペス・グループのファースト・フィリピン・インダストリアル・コーポレーション(FPIC)が、2011年に引き起こしたマカティ市バンカルにおけるパイプライン漏れ事件において、環境や住民の健康を損ねたことへの対応などが問われている。ロペス環境資源相は、この事件は就任前の古い事件でありかつ解決済みと主張したが、消費者団体などは、住民の健康問題などはまだ解決されておらず、過去の問題ではないと反発している。

 また、禁止されたはずの鉱山露天掘りが、ロペス・グループの鉱山会社によって行われているのではないかという疑惑も生じている。さらに、鉱山閉鎖・停止命令の根拠が明瞭にされていない、同相が鉱山閉鎖・停止命令を多発するわりには、鉱業に関する規則、規定などを熟知しておらず、環境資源相としての資質に欠けるとの批判も強まっている。

 株式市場では、鉱山閉鎖・停止命令を受け株価が急落した鉱山企業の株価がかなり反発するなど、同相の強硬路線修正やさらには辞任を促すような動きらしきものが出ている。