三菱東京UFJ出資でセキュリティバンク更に強固

純資産78%増加、自己資本比率(CAR)19.9%へ

2017/05/03

 フィリピンの有力商業銀行であるセキュリティバンク(SECB)が、5月2日、2017年第1四半期(1月~3月)の事業報告書を提出した。

 2016年4月1日、三菱東京UFJ銀行(BTMU)はこのSECBへの20%出資(総出資額は約369億4,300万ペソ)を完了した。これにより、SECBはBTMUの分法適用会社となった。また、BTMUは、Dyファミリーに次ぐ第2位の株主となった。BTMUにとっては、アジアでは、2013年のタイのアユタヤ銀行買収に次ぐ大型投資案件となった。BTMUの出資がSECBの収益基盤を一層強固なものとしている。

 BTMUが出資する直前の四半期との比較となる2017年第1四半期の帰属純利益は前年同期比6%減の28億ペソとなった。証券売買・評価益が同44%減の8億ペソへと急減したことなどで小幅減益となったが、主力の融資による純金利収入は同27%増の44億ペソと好調であったことから依然高水準の利益計上となった。自己資本利益率(ROE)は11.4%。

 なお、2016年の年間帰属純利益は前年比11%増の85億5,000万ペソに達し、連続最高益更新となった。主力の融資による純金利収入が同28%増の159億ペソと好調で、証券売買益の減少(同38%減の18億ペソ)を十分カバーした。上記の様に、2017年第1四半期は売買益急減で小幅減益にとどまったが、主力の融資事業は好調に推移しており、年間ベースでの連続最高益更新の可能性があると言えよう。

 BTMUの出資により収益基盤が一段と拡充され、財務内容が更に向上した。2017年第1四半期末の総資産は前年同期末比41%増の7,290億ペソ、純資産は同78%増の997億ペソへと大幅増加した。なお、総資産規模は2016年末時点で業界5位となり、BTMU出資前の8位から3ランク上昇している。

 2017年第1四半期末のバーゼルⅢ基準の自己資本比率(CAR)は19.9%へ急上昇、中央銀行の最低基準10%を大幅に上回っている。また、普通株式中核自己資本比率(CET1)も17.5.%へ急上昇、中央銀行の最低基準8.5%を大幅に上回っている。純不良債権(NPL)比率は0.14%と業界最低水準、NPL貸倒れ引当率は197%と高水準である。

 なお、世界三大格付機関の一つであるムーディーズ・インベスターズ・サービス (ムーディーズ)は、2016年8月に、SECBに対する初の格付を行った。そして、外貨建て・ペソ建て長期債務の格付を、投資適格最低基準よりも一段階上の「Baa2」とした。「Baa2」は他の格付機関のトリプルB(BBB)と同格であり、フィリピン国債の格付と同ランクである。格付アウトルック(見通し)は安定的(当面変更の可能性が薄いという意味)である。短期債務格付は上から2番目のP-2(短期債務の返済能力が高いという定義)とされた。

 また、フィリピン証券取引所(PSE)は、2016年9月12日、当地の代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)採用銘柄(30銘柄)の入れ替えを行った。この入れ替えで、PSEiに新たに採用された銘柄はSECB。そのかわりにPSEiから除外された銘柄は、カジノリゾート「ソレア・リゾート&カジノ」(ソレア)を保有・運営するブルームベリー・リゾーツ(ブルームベリー)であった。このように、各方面からSECBに対する注目度が高まっている。

 SEDBは今後も良好な財務内容を維持しながら、BTMUとの協働による日本関連市場開拓などにより、業容の更なる拡大を図っていく方針である(17年5月2日提出のセキュリティバンク2017年第1四半期事業報告書などより)。