比コンビニエンス・ストア、収益力格差も一段と拡大

2016/11/24

商品売上高:セブン208億ペソ、ミニストップ42億ペソ
税前損益:セブン9億ペソの黒字、ミニストップ赤字拡大

 

 フィリピンの日系コンビニエンス・ストアの2016年9カ月間(1月~9月)の業績動向が明らかになってきた。店舗数は既に明らかにされているが、収益動向は現地パートナー企業の上半期事業報告書等に部分的に記載されている。

フィリピンの主な日系コンビニ店舗数(月末値)

年・月 12年 13年 14年 2015年 2016年
3月 6月 9月 12月 3月 6月 9月
セブンイレブン 829 1,009 1,282 1,341 1,405 1,480 1,602 1,655 1,740 1,840
ミニストップ 337 386 454 472 495 511 519 518 513 501
ファミリーマート 0 31 87 95 105 113 120 104 102 101

(出所:各社資料より作成、ミニストップ、ファミリーマートは日本側発表数値)
注:比セブンイレブンは直接的には台湾プレジデント・チェーン・ストア傘下

 フィリピンのミニストップは、ロビンソンズ・コンビニエンス・ストアーズ(RCSI)によってフランチャイズ展開されている。RCSIは、三菱商事、ミニストップ株式会社、ゴコンウェイ・ファミリー傘下のロビンソンズ・リテイル(RRHI)グループとの共同事業である。2000年にRCSIとミニストップ本社との間でカントリー・フランチャイズ契約が正式締結され、2000年12月にミニストップのフィリピン1号店がオープンした。RRHIは2013年11月にフィリピン証券取引所(PSE)に新規上場された。

 フィリピンでのミニストップ店舗数は、2012年末337店、 2013年末386店、2014年末454店、2015年末519店(日本側発表数字)と順調に増加してきた。しかし、2016年に入るとブレーキがかかり、6月末513店、9月末501店と減少減少となっている。前年同月比も、9月時点で10店減少、率にして2%減少となっている。
 
 11月14日に発表されたRRHIの2016年9カ月間の事業報告書などによると、フィリピンのミニストップのグループ総売上高(システムワイドセールス)は前年同期比8.1%増の63億1,100万ペソ、商品売上高は同3.0%増の41億5,779万ペソとなった。選挙特需などによる既存店売り上げ増加がもたらされたが、店舗数減少などにより、増収率は一桁増加にとどまり、業界トップのセブンイレブンとの差が開いている。

 商品売上高が一桁増加にとどまる一方、営業費用は同13.4%増加したことなどで、税金・金利・償却前利益(EBITDA)は同32.1%減の2億5,100万ペソへと減少した、税引前損益は1,205万ペソの赤字となり、前年同期の155万ペソの赤字からさらに悪化した。

 フィリピンでもコンビニエンス・ストアの普及が本格化、競争も激化している。現在は業界首位のセブン・イレブンをマーキュリー・セルフサービスやミニストップが追 うという構図になっている。そして、ファミリーマートとKマートが2013年進出、ローソンも2015年3月にフィリピン1号店をオープンした。

 フィリピンのセブン・イレブンは、台湾系のプレジデント・チェーン・ストア(ラブアン)ホールディングスが51.56%を所有(2016年9月末現在)するフィリピン・セブン社(PSC)によって運営されている。2016年9月末の店舗数は1,840店に達し、ミニストップの501店、ファミリーマートの101店に大差をつけている。そして、前年同月比でも360店、率にして24%増加、後続グループとの差を拡大させている。

 フィリピン・セブン社(PSC)の2016年9カ月間の業績は引き続き好調であった。全店売上高は前年同期比24.4%増の230億ペソ、商品売上高は同32.1%増の207億5,413万ペソ、税引き前利益は同24.5%増の9億1,919万ペソ、純利益は同24.8%増の6億4,340万ペソに達した。新店効果や選挙特需などで、地方でのネットワーク構築コスト増などを完全にカバー、二桁増収増益となった。下表の様に、収益面でも2番手グループ以下に大差をつけているといえよう。


2016年9カ月の有力コンビニ比較(前年同月比、単位:万ペソ)

企業 比セブンイレブン 比ミニストップ
企業目名 PSC RCSI
6月末店舗数 1,840店 501店
店舗数増加率 24% -2%
グループ全売上高 2,300,500 631,600
商品売上高 2,075,413 415,779
商品売上高増加率 32.1% 3.0%
税引前利益 91,919 -1,205
税引前利益増加率 24.5% 赤字7.8倍

(出所フィリピンセブンとロビンソンズ・リテール年次報告書などより作成)

 2013年4月にフィリピンに進出したファミリーマートの店舗網は2015年前半までは順調に増加、2015年5月に100店の大台に到達した。 ただし、業界の競争激化やフィリピン側のパートナーであるSSIグループの「店舗合理化プログラム」実施により、2015年後半以降は出店ピッチが急鈍化、2016年9ケ月間では19店の純減となっている。SSIグループ事業報告書には比ファミリーマートの業績の詳細は記述されていないが、赤字と記載されている。したがって、収益面でも、セブンイレブンの一人勝ちという状況が続いているといえよう。