三菱東京UFJマニラ支店、ペソの下限目途1ドル=50ペソに

2016/11/10

経済・為替講演会、今後1年間の予想レンジ45.00~50.00ペソ

 

 三菱東京UFJ銀行マニラ支店は、11月9日、首都圏マカティ市ドュシタニ・ホテルにおいて、毎年恒例の経済・為替関連講演会を開催した。約150名が出席した。

 この講演は2部構成で、第1部が三菱UFJリサーチアンドコンサルティング理事の五十嵐敬喜氏による「2017年の日本・世界経済展望」、第2部が三菱東京UFJ銀行マニラ支店為替資金課の藤本義久課長による「フィリピン経済概況とペソ金利為替見通し」という構成であった。

 第一部担当の五十嵐氏は、日本経済新聞夕刊の「十字路」などに定期寄稿。2014年3月までテレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」のレギュラーコメンテーターを務めた。2014年4月から亜細亜大学経済学部特任教授を兼任。その他テレビ、新聞、経済雑誌への出演、寄稿、著書なども多い。
 
 五十嵐理事は、「シャドーバンキングなどで膨らんできた中国経済は、輸入の落ち込みから見てもかなり鈍化してきており構造的な成長率の低下が避けがたい。新興国経済は米国金融政策引締めへの転換の動きの影響を受けつつある。米国経済もこれまでの長期的回復傾向が続くか疑問である。日本低成長が続いており、当面のグローバル経済は牽引役不在で伸び悩みそうである」と予想した。

 藤本義久課長による第2部の「フィリピン経済概況とペソ金利為替見通し」では、フィリピン経済について、「個人消費を軸とした6%~7%超という2016年の成長率見込みは域内最高水準であり評価できる。輸出環境が厳しいなか、従来以上に内需依存型となる可能性がある。インフレ支出拡大などで財政収支が悪化しそうであるが、適度な赤字拡大は許容範囲。貿易赤字拡大で国際収支が悪化することがリスクファクターと考えられる」と概括された。

 金利政策に関しては、「フィリピン中央銀行(BSP)は、今年6月、金利コリドー制を導入、市中金利を適度な水準に保つことを企図している」、「2016年12月に予想される米国利上げの有無にかかわらず、景気・物価・国内資金流動性を見極めつつ慎重な政策運営が予想される。BSPのテタンコ総裁は米国利上げが即、BSPの金融政策変更につながることはないとコメントしている」などと説明、少なくとも2017年第3四半期までは、新たな政策金利ともいえる翌日物預金(ODF)金利は現行の2.50%が継続されると予想。

 ペソ対米ドルレートに関しては、「2016年12月に米国利上げが実施された場合、一旦節目の1米ドル=50ペソを目指す動きになる」と予想。しかし、それ以降は、「米国利上げのペースが早まるとは見込みづらく、ペソが買い戻される展開となり、好調なフィリピン経済のファンダメンタルズを背景に、ペソ買い優勢の展開が継続する見込み」と予想されている。ただし、「経常収支の悪化などがじりじりと相場形成に影響を及ぼす可能性がある」とのことでもある。これらの考察を背景に、以下のようなペソ対米ドル相場レンジ予想が示された。

三菱東京UFJ銀行マニラ支店による期間別ペソ対米ドル相場予想(16年11月9日時点)
・2016年第4四半期(10月~12月) :予想レンジ47.50~50.00
・2017年第1四半期(1月~3月)   :予想レンジ46.50~50.00
・2017年第2四半期(4月~6月)   :予想レンジ45.50~50.00
・2017年第3四半期(7月~9月)   :予想レンジ45.00~50.00
(16年11月9日の三菱東京UFJ銀行マニラ支店講演会やその資料などより)。