RCBCの純利益35億ペソ、実質33%増益
2016/11/05
不正送金騒動を克服、堅調な業績推移
総資産5千億ペソ、NPL比率0.97%と良好
有力拡大商業銀行であるリサール商業銀行(RCBC)が、11月4日に、2016年9カ月間(1月~9月)の決算速報を発表した。
RCBCの今9カ月間の報告純利益は前年同期比4%減(手許計算)の35億ペソとなった。ただし、不正送金問題に関しての課徴金(10億ペソ)支払いという一時的費用を除外したコア利益ベースでは33%の増加であった。すなわち、実質33%増益決算であったともいえる。年率換算の株主資本利益率(ROE)は7.8%、総資産利益率(ROA)は0.84%であった。
主力の融資業務等による純金利収入は前年同期比3.5%増の118億6,000万ペソと堅調、総収入の67.%を占めた。そして、年率換算の純利鞘率は4.2%と業界最高水準を維持した。一方、非金利収入も同4.3%増の57億ペソに達した。
今第3四半期末(9月末)の総資産は前年同期末比3%増の5,044億ペソと5千億ペソの大台を突破している。。その一方で、財務体質の向上、自己資本拡充も推進してきている。第3四半期末の単独ベースでの不良債権(NPL)比率は0.26%、連結ベースでも0.97%と低水準。バーゼルⅢ基準での自己資本比率(CAR)は16.98%で中央銀行の最低基準10%を大幅に上回っている。補完資本 (TIER2)を除いた普通株式中核自己資本(CET1)比率も13.64%と高く、中央銀行の最低基準8.5%を大幅に上回っている。
RCBCは、支店網拡充やATM台数増加などネットワーク拡充も推進しており、第3四半期末の店舗数は477店(前年同期末は448店)、ATM台数は 1,475台(同1,295台)。1支店当たりのATM設置台数は3.09台で業界最高水準を維持している。
RCBCはフィリピンの有力財閥ユーチェンコグループ傘下の中核企業。ファーストシニアバイスプレジデントの松本康宏氏ら日本人駐在員3名(うち1人はりそな銀行から出向の山戸 昭雄氏)を含む総勢40名超の日本企業部はフィリピン民間商業銀行でも有数の規模である。日系企業700社超と取引を有し、主要工業団地に支店を開設するなど、日系企業に対し充実した金融サービスを提供している。
なお、今年2月初めに、バングラデシュ銀行(中央銀行)の米ニューヨーク連邦準備銀行に保有する口座がハッカーに不正アクセスされ、盗まれた8,100万ドルがフィリピンのRCBCジュピター支店の口座へ送金され、その後フィリピン国内等に流出するという事件が発生した。
この問題に関して特別調査を続けていたフィリピン中央銀行(BSP)は8月に、監視執行措置(SEA)として、RCBCに対して10億ペソの課長金を課すことを決定した。10億ペソというのは、BSPがSEAとして金融機関に課した課徴金としては史上最高額である。
BSPは、「今回の措置は、効果的かつ確固たる金融機関監視による金融システムの安定図るというBSPの決意の表れである」と強調した。同時に、「事件後のRDBCの資金洗浄防止強化、テロリスト資金リスク管理システム強化、統治文化強化等の動きは評価出来る」ともコメントした。
RCBCは、この10億ペソという課徴金に関して、上記の様に既に計上している。7月1日には、監督不行き届きの責任をとって辞任したロレンソ・タン前頭取兼CEO(最高経営責任者)の後任として、デベロップメント・バンク・オブ・フィリピン(DBP)の頭取兼CEOであったヒル・ブエナベントゥーラ氏が就任、新経営体制がスタートした。不正送金問題騒動を乗り越え、安定的な成長を続けているといえよう(16年11月4日のフィリピン証券取引所回覧06195-2016号などより)。