三菱東京UFJ出資のセキュリティバンク、一段と好調
2016/11/04
第3四半期26%増益、総資本41%増、自己資本85%増加
フィリピンの有力商業銀行であるセキュリティバンク(SECB)が、11月2日、2016年9カ月間(1月~9月)の決算速報を発表した。
三菱東京UFJ銀行(BTMU)は、今年4月1日、このSECBへの20%出資(総出資額は約369億4,300万ペソ)を完了した。これにより、SECBはBTMUの分法適用会社となった。また、BTMUは、Dyファミリーに次ぐ第2位の株主となった。BTMUにとっては、アジアでは、2013年のタイのアユタヤ銀行買収に次ぐ大型投資案件となった。BTMUの出資がSECBの収益基盤を一層強固なものとしている。
SECBの今9カ月間の帰属純利益は前年同期比9%増の66億ペソとなった。証券売買益が45%減の16億ペソへと急減、非金利収入が同22%減の41億ペソへと二桁減少したことで9カ月間では一桁増益であったが、主力の融資による純金利収入は同28%増の115億ペソと好調であった。ちなみに、第3四半期の帰属純利益は同26%増の18億ペソと二桁増加となった。
なお、2015年の年間帰属純利益は前年比7%増の77億ペソに達し過去最高益を更新した。株主資本利益率(ROE)は15.2%と高水準であった。上記の様に、2016年9カ月間純利益は証券売買益急減で一桁増益にとどまったが、主力の融資事業は好調に推移しており、連続最高益更新が期待できる状況である。
BTMUの出資により収益基盤が一段と拡充され、財務内容が更に向上したといえよう。2016年第3四半期末(9月末)の総資産は前年同期末41%増の6,800億ペソ、株主資本は同85%増の960億ペソへと大幅増加した。なお、総資産規模は業界5位となり、BTMU出資前の8位から3ランク上昇した。バーゼルⅢ基準の自己資本比率(CAR)は21.0%へ急上昇、中央銀行の最低基準10%を大幅に上回っている。また、普通株式中核自己資本比率(CET1)も18.4%へ急上昇、中央銀行の最低基準8.5%を大幅に上回っている。
第3四半期末の不良債権(NPL)比率は 0.33%と低水準、NPL貸倒れ引当率は169%と高水準である。今9カ月間で18店増加、第3四半期末の店舗数は280店、ATM設置台数は598台に達している。
なお、世界三大格付機関の一つであるムーディーズ・インベスターズ・サービス (ムーディーズ)は、今年8月29日に、SECBに対する初の格付を行った。そして、外貨建て・ペソ建て長期債務の格付を、投資適格最低基準よりも一段階上の「Baa2」とした。「Baa2」は他の格付機関のトリプルB(BBB)と同格であり、現在のフィリピン国債の格付と同ランクである。格付アウトルック(見通し)は安定的(当面変更の可能性が薄いという意味)である。短期債務格付は上から2番目のP-2(短期債務の返済能力が高いという定義)とされた。
また、フィリピン証券取引所(PSE)は、今年9月12日、当地の代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)採用銘柄(30銘柄)の入れ替えを行った。この入れ替えで、PSEiに新たに採用された銘柄はSECB。そのかわりにPSEiから除外された銘柄は、カジノリゾート「ソレア・リゾート&カジノ」(ソレア)を保有・運営するブルームベリー・リゾーツ(ブルームベリー)であった。このように、各方面からSECBに対する注目度が高まっている。
SEDBは今後も良好な財務内容を維持しながら、BTMUとの協働による日本関連市場開拓などにより、業容の更なる拡大を図っていく方針である(16年11月2日のフィリピン証券取引所回覧06125-2016号より)。