環境行政厳格化のなかで住友鉱系列企業に高評価

2016/10/10

コーラルベイ、タガニートHPAL等が大統領賞候補に

 

 フィリピン鉱山地勢局(MGB)によると、全国で操業している鉱山会社23社が2016年度鉱業環境大統領賞(PMIEA)にノミネートされた。

 PMIEA選考委員会(SC)とMGBのPMIEA事務局は、9月第4週から10月にかけて、PMIEA候補企業のフィールド検証を実施する。去る9月2日、ノミネートされた企業の初回評価を審議するために第1回会合が開かれた。

 賞は4つのカテゴリー(露天採掘、採石、探査、選鉱)に分けられている。2016年PMIEAにノミネートされているのは、露天採掘部門:リオ・トゥバ・ニッケル・マイニング社、タガニート・マイニング社、オセアナ・ゴールド社他8社、採石部門:ホルシム・マイニング&ディベロップメント社他5社、探査部門:シランガン・ミンダナオ・マイニング社他2社、選鉱部門:コーラル・ベイ・ニッケル社、タガニートHPALニッケル社、アポ・セメント社などである(16年10月7日のフィリピン鉱山地勢局発表より)。

 なお、リオ・トゥバ・ニッケル・マイニング社、タガニート・マイニング社、コーラル・ベイ・ニッケル社、タガニートHPALニッケル社は、住友金属鉱山(住友鉱)やそのフィリピンパートナーであるニッケル・オブ・アジア(NAC社)のグループ企業である。ドゥテルテ政権のもとで、鉱山の環境保全に対する査察が厳しくなる中で、複数の住友鉱系といえる鉱山企業が優秀鉱山企業の大統領賞候補にノミネートされていることは注目に値する。

 なお、住友鉱フィリピンでの事業基盤拡大、資源高度有効活用が進展している。世界のニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須となっている。住友鉱は従来回収困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルおよびコバルトを回収する技術である HPAL(High Pressure Acid Leach =高圧硫酸浸出)の商業生産化に世界で初めて成功し、2005年からフィリピンのコーラルベイ・ニッケル(CBNC、所在地:パラワン島)で、ニッケル中間製品であるMS(ニッケル・コバルト混合硫化物)の生産を開始した。2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万4千トン(ニッケル量換算)へ増加させた。
 
 このような実績を背景として、住友鉱はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクト(年産3万トン)を2013年に完成させ、全社のニッケル生産能力を同10万トンまで高め、世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を固めた。タガニート・プロジェクトにおいては、住友鉱傘下のタガニートHPAL社(THPAL)がミンダナオ島北東部タガニート地区にて、MS( ニッケル品位約57%)を年間3万トン(ニッケル量換算、以下同様)生産。THPALの資本金は40億9,500万ペソ、これまでの出資比率は住友金属鉱山62.5%、ニッケル・アジア(NAC)22.5%、三井物産15%となってきている。

 住友鉱は今年9月15日、THPALの株式を12.5%追加取得し、保有比率を75%とすることを決定したと発表した。これは、THPALのパートナーであるNACより、NACが鉱山の開発・拡張や再生可能エネルギー事業への投資により多くの経営資源を投入するため、NACが所有するTHPAL株式の22.5%のうち12.5%相当を住友鉱に売却したいとの要請があり、これに応じることとしたものである。今回のNACからのTHPAL株式の追加取得によりNACとの関係強化を図るとともに、引き続きTHPALプロジェクトの安定的な運営に努め、住友鉱のニッケル事業への原料供給をより確実なものとして行く方針である。

  なお、住友鉱は、2月15日に、長期ビジョンとその実現に向けた2016年度から2018年度までの2015年中期経営計画(15中計」)を発表した。精錬事業に関しては、ニッケルは、12中計で確立した10万トン体制でのコストダウンに注力すると謳われている。更に、長期ビジョンのターゲットである15万トン体制の構築に向け、タガニートHPALでの20%増産や播磨事業所での硫酸ニッケル生産増強に取り組むとともに、第3のHPALについても事業化の検討を進めるとされている。また、HPALからの新たな有価金属の回収を事業化し、競争力強化に努めるとのことでもある。

 また、NAC社は世界有数のニッケル資源国であるフィリピンにおいて、最大規模のニッケル鉱石生産を行う鉱山会社である。そして、住友鉱の重要な戦略パートナーである。NAC社傘下には、コーラルベイ・ニッケル・コーポレーション(CBNC)へ出資するとともにニッケル鉱石を供給しているリオツバ・ニッケル・マイニング社がある。

 住友鉱は2009年8月にナック社に資本参加した。2016年6月末時点で、100%子会社である住友金属鉱山フィリピン・ホールディングス(SMMPH)を通じて、ナック社株式約19.02%(個別株主名が明示されている分)を保有している。