日商サイトに「フィリピン新政権スタート」掲載

2016/09/13

羽生明央JCCIPI事務局長が8月23日に執筆

 

 日本商工会議所ウエブサイトの9月12日付けのニュースライン海外情報レポートに、「フィリピン新政権スタート(マニラ)」という記事が次のように掲載されている。執筆者はフィリピン日本人商工会議所の羽生 明央事務局長である。そして、実際の執筆日は8月23日である(以下、ほぼ原文のまま)。

 『今年行われた総選挙の結果、ドゥテルテ新大統領が誕生し、新たな政権がスタートした。当選後大統領に就任する前にもかかわらず、すぐに8項目の経済政策を発表し、その後10項目の経済政策(※下記参照)を掲げて、ダバオ市において経済界と意見交換を行うなど、その動きはずいぶんと早かった。経済政策では現在のマクロ経済政策は引き継ぐとしているほか、税制改革、競争力強化、インフラ投資の加速、人材開発への投資等を掲げている。

 また、6月30日の就任式、7月25日のSONA(施政方針演説)を通して、高い得票数で国民の信頼を得たことを踏まえ、愛国心と国全体への奉仕者であることを中心に据えながら、政府への信頼強化に向け、犯罪や汚職対策、認可手続きの時間短縮、インフラ整備事業環境改善等に触れた。過激な発言や人権関連で批判が起きていることもあるが、今回ドゥテルテ大統領が当選したのは、ダバオ市長時代に治安を劇的に改善させたという実績を背景に、その実行力に高い期待が寄せられているところにあると言える。

 フィリピンの経済成長率は2015年5.9%で、今後も6%以上の成長率が見込まれている。また、人口は2015年に1億人を突破し、労働人口約4000万人、平均年齢約23歳で、綺麗な人口ピラミッドは経済成長がまだまだ続くことを想起させる。

 ドゥテルテ大統領にとって初めてとなる2017年度予算案では、全体で3兆3,500億ペソと前年度から10%以上増加させ、公共インフラ、農業、平和・治安、人的資源を優先事項としている。地元紙を見ると、2015年からの3年間の予算配分を比較する円グラフが掲載されていたが、教育や健康、社会保障といったソーシャルサービス分野への配分割合が年々増加しており、省庁別では教員といった人員を多く抱えている教育省への配分が一番大きくなっている。

 フィリピンでは、これまで初等教育6年、中等教育4年で、いわゆる大学(高等教育)入学前までの基礎教育期間が10年と、他のASEAN各国と比べて短く、通常の大学卒業年齢は20歳だった。今年度から中等教育の教育期間をさらに2年増やし、普通教育や職業技術教育等の選択肢が広がったため、大学卒業年齢は日本と同じようになっていく。移行期間中は大学卒業生が少なくなることが予想されるが、基礎教育の充実によって、より高い能力を持った人材が輩出されることが期待されている。

 フィリピンが今後ますます発展していくためには、豊富な若年労働層の質の強化や、インフラ整備、各種手続きの透明化・迅速化、犯罪・汚職撲滅といったビジネス環境の改善が欠かせない。ビジネス環境をより良くすることで、一層の外国投資を呼び込んで雇用の受け皿を増やして庶民の所得を増やし、犯罪を減少させ、それがさらに投資を呼び込んで経済発展していくという循環を生み出すために、新しい政権は急激にエンジンを点火したかのように見える。

(※)10項目の経済政策(要約・仮訳)
・財政、金融、貿易政策を含め、現在のマクロ経済政策を維持。
・税制改革、効果的な徴税を進める。税制改革のパッケージを9月までに議会に提出。
・競争力強化とビジネスのしやすさの向上。地方への誘致。外資規制緩和。
・GDP5%を目安にインフラ投資を加速。PPPを基本。
・地方企業、農業の生産性向上と地方観光の推進。
・土地所有の保全促進。土地管理のボトルネックを解消。
・健康・教育システムを含む、人材開発への投資。ビジネス界の需要に応えるスキルと訓練のマッチング。
・自立と包括的発展に向け、技術革新と創造的な能力を強化。
・貧困層保護のため、社会保障プログラムを改善。
・責任ある両親の育成。リプロダクティブヘルス法の実施。
 貧困カップルへの家族計画の周知。

(執筆:8月23日)
(フィリピン日本人商工会議所 事務局長 羽生明央)』