日系大手製造業フィリピン拠点、大幅増益発表続く
2016/08/31
パナソニック、日清食品、トヨタ、サンミゲルビールなど
2016年上半期の企業業績発表が出揃ってきた。そのなかで、日系大手メーカーの現地法人や出資先などのフィリピン拠点の好業績発表が相次いでいる。
まず、パナソニックのフィリピンにおける製造・販売拠点であるパナソニック・マニュファクチャリング・フィリピンズ(PMPC、会計期末3月)は、7月18日、2015年度(2015年4月~2016年3月)の年次報告書を公表した。
それによると、PMPCの2015年度の売上高は前年度比21%増の81億2,431万ペソに達した。堅調なフィリピンの内需、新製品投入、昨秋のクリスマス商戦に向けての早めの準備などにより二桁増収となった。 粗利益は同25.1%増の18億0,352万ペソ(粗利益率22.2%)、税引き前利益は同84.2%増の3億9,969万ペソへと急増した。税金費用も同173.5%増加したが、純利益は同54.4%増の2億5,096万ペソへと大幅増加した。
さらに、8月14日に発表された2016年度第1四半期(4月~6月)の純売上高は前年同期比32.8%増の31億2,737万ペソ、粗利益は同64.1%増の9億2,483万ペソ、純利益は同89.1%増の1億8,939万ペソへと各々大幅増加した。特に、第1四半期の純利益は、好調であった前年度年間利益額の75%の水準にまで達したことが目立つ(速報、詳細は続報予定)。
パナソニック・マニュファクチャリング・フィリピン業績推移(単位:万ペソ)
項目 | 11年度 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | 15年度 | 16年度第1四半期 | 前年度同期比 |
純売上高 | 594,273 | 640,939 | 659.639 | 671,343 | 812,434 | 312,737 | +32.8% |
粗利益 | 142,356 | 168,913 | 173,238 | 144,166 | 180,352 | 92,483 | +64.1% |
税引前利益 | 8,712 | 16,247 | 20,152 | 21,695 | 39,969 | 23,294 | +95.2% |
所得税費用 | 2,902 | 7,862 | 3,947 | 5,437 | 14,872 | 4,355 | +127.1% |
純利益 | 5,810 | 8,384 | 16,205 | 16,258 | 25,098 | 18,939 | +89.1% |
(出所:PMPC年次報告書などから作成)
また、日清食品グループ(日清グループ)は、フィリピンにおいて、ゴコンウェイ・ファミーリーの有力食品企業ユニバーサル・ロビーナ・コーポレーション(URC)との合弁企業「ニッシン・ユニバーサル・ロビーナ・コーポレーション」(ニッシンURC、1996年設立、会計期末は9月)を通じて即席麺事業を展開、カップ麺ではトップ企業となっている。現在の日清グループのニッシンURC株式保有比率は49%となっている。
このニッシンURCの業績が好調に推移している。URCの事業報告書などによると、ニッシンURCの2015年度(2014年10月~2015年9月)の売上高は2年前の2013年度に比べ92%増の35億5,300万ペソ、純利益も同45.5%増の3億0,400万ペソへと大幅増加している。
さらに、2016年度9カ月間(2015年9月~2016年6月)の売上高は前年同期比17%増の35億6,400万ペソ、EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は同48%増の5億6,500万ペソ、純利益は同52%増の3億5,300万ペソと二桁増収増益となった。EBITDAや純利益は2015年度年間実績を既に大幅に上回っている。フィリピンの高い経済成長率、カップ麺の需要拡大にくわえ、日清グループのフィリピン事業強化策の奏功といえよう。
ニッシンURCの業績などの推移(単位:百万ペソ、15年度までは年間ベース、16年度は9カ月間)
項目 | 13年度 | 14年度 | 15年度 | 16年度9カ月間 | 前年度同期比 |
売上高 | 1,851 | 2,434 | 3.553 | 3,064 | +17% |
EBITDA | 334 | 461 | 505 | 565 | +48% |
純利益 | 209 | 299 | 304 | 353 | +52% |
総資産 | 1,099 | 1,407 | 1,612 | 1,971 | +16% |
(出所:URC年次報告書、四半期報告書などから作成)
一方、当地第2位(総資産ベース)の商業銀行であるメトロポリタンバンク&トラスト(メトロバンク)グループの持株会社GTキャピタル・ホールディングス(GTCAP)事業報告書などによると、トヨタ自動車のフィリピン拠点であるトヨタモーター・フィリピン(TMPC)の今上半期(1月~6月)の販売台数は卸売ベースで前年同期比31.4%増の7万4,451台、小売りベースで25.9%増の7万2,642台に達した。市場シェアは38.5%に達している。
したがって、今上半期の売上高は前年同期比33.4%増の712億6,610万ペソと好調であった。二桁増収効果に加え、値上げ、部品価格安定などの効果が為替損を大幅に上回ったことなどで、営業利益は同30.4%増の89億0,950万ペソ、帰属純利益は同33.1%増の68億1,600万ペソへと二桁増加した。年間帰属純利益は2013年が前年比50%増の42億ペソ、14年が同71%増の72億ペソと連続で大幅増加した。そして、15年には同41%増の102億ペソへと急増、100億ペソの大台を突破したが、16年もその最高益を大幅に上回るペースとなっている。
トヨタモーター・フィリピン(TMPC)の業績等の推移(単位:百万ペソ、16年上半期は速報値)
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 16年上半期 | 上半期伸率 | |
売上高 | 72,560.0 | 80,676.6 | 104,886.9 | 114,346.2 | 71,266.1 | +33.4% |
粗利益 | 7,993.2 | 10,256.6 | 14,628.9 | 18,355.2 | 11,206.4 | +27.2% |
営業利益 | 3,718.2 | 5,719.1 | 9,859.1 | 13,898.9 | 8,909.5 | +30.4% |
帰属純利益 | 2,808.8 | 4,219.0 | 7,210.0 | 10,193.9 | 6,816.0 | +33.1% |
総資産 | 21,035.9 | 23,750.0 | 26,706.7 | 32,290.3 | 35,889.3 | +11.1% |
(出所:GTキャピタル事業報告書よりなど作成、総資産や株主資本は年末値または上半期末値)
また、キリン・ホールディングス(キリン)が約48.39%出資するサンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)の今上半期(1月~6月)の売上高は、選挙特需もあって同19%増の473億9,600万ペソに達した。二桁増収効果やコスト節減などにより営業利益は同16%増の125億7,400万ペソ、純利益は同20%増の82億5,200万ペソに達した。
このように、業績動向が公表されている日系大手製造業のフィリピン拠点の好調さが目立つ(各社やそのグループ会社の事業報告書などより)。