キリン出資のサンミゲルビール好調、純利益150億ペソ期待

2016/06/02

 

 フィリピンを代表するコングロマリットとなったサンミゲルのビール子会社で、キリン・ホールディングス(キリン)が約48.39%を出資するサンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)の業績が好調に推移している。

 SMBの2016年第1四半期(1月~3月)のビール販売数量は前年同期比21%増の5,740万ケースと二桁増加となった。特に、国内販売数量が、総選挙特需や値上げ前駆け込み需要もあって、同25%増の5,100万ケースと好調であった。そして、売上高は同23%増の232億6,700万ペソ、営業利益は同17%増の60億5,000万ペソ、純利益は同23%増の40億ペソと二桁増収増益となった。

 第2四半期も選挙特需の恩恵を受けているようであり、個人消費も依然旺盛である。したがって、2016年年間でも業績好調が予想される。SMBのラモン・アン会長は、2016年年間の純利益は120億ペソ~150億ペソ程度になろうとコメントしている。ドゥテルテ新政権が過激な酒類規制を行わないかぎり、業績続伸が期待される状況である。

 ちなみに、2015年年間の業績については、堅調な国内需要に支えられ、売上高が前年比4%増の823億7,400万ペソであった。海外部門が低調であったようだが、国内の増収効果やコスト節減などにより、営業利益は同3%増の226億3,100万ペソ、純利益は同微増の135億1,800万ペソと小幅ながら増収増益決算であった。

 なお、サンミゲル・ビール(SMB)は、2008年にサンミゲルの国内ビール事業スピンオフで発足したが、2010年初にはサンミゲルの海外ビール事業も取得している。国内シェアは90%以上と圧倒的な強さを誇っている。起源は1890年に東南アジア初のビール醸造企業として設立されたサンミゲルであり、1914年には上海、香港、グアムなどにビール輸出を開始した。そして、1948年には香港初のビール工場を設立するに至った。すなわち、125年の歴史を有する老舗企業いえる。

 キリンは、サンミゲル本体(SMC)への出資というかたちでフィリピンに進出した。その当時はSMC社自身が国内ビール事業を行っていた。しかし、その後、国内ビール事業部門はSMBとして分社化、SMBは2008年5月12日にフィリピン証券取引所(PSE)に上場された。したがって、キリンは2009年前半に、保有していたSMC株式6億2867万6,675株(発行済株式総数の19.91%)を売却、SMB株式48.39%を取得したという経緯がある。

 SMCはその後、PSEの浮動株式比率基準(最低10%)未達成で、2013年5月15日にPSEから自主的上場廃止、現在は非上場企業となっている(16年6月1日のフィリピン証券取引所回覧03180-2016号などより)。