双日フィリピンで肥料増産へ、トップの座一段と強固に
2016/05/30
拠点のアトラスファーティライザー、比農業向上へ貢献
双日は、世界的なニーズの高まりへの対応と新分野への挑戦を掲げ、食料資源確保に向けたアグリビジネスへの取組みを強化している。
そして、農業事業という上流分野で自分たちの資源を持つこと、すなわち「作って、育てて、加工して、販売する」という形での食料資源の確保をめざして、大規模農業事業、肥料事業など海外、国内を問わず多角的な事業の構築に取り組んでいる。トレーディング機能については、穀物、油脂、飼料の分野での長年にわたる取引実績で蓄積した機能やノウハウ、情報力や顧客ネットワークを活かして、農業事業とのシナジーを発揮していく。
そのなかでフィリピン、タイ、ベトナムで推進する高度化成肥料の製造・販売事業は各国でトップクラスの市場シェアを占めており、グループ全体の生産能力が合計200万トンと東南アジアでも有数の規模を有している。双日のフィリピンにおける肥料事業の拠点はアトラスファーティライザー社(アトラス社、本社:マニラ首都圏マカティ市、工場:セブ・トレドなど)である。
現地有力紙であるマニラ・ブレティン紙5月25日号のビジネス・プロファイルに、このアトラス社の動向やアトラス社の鷲見(すみ)社長兼CEOの方針・抱負などが掲載された。
それらによると、アトラス社は、アトラス・コンソリデイティド・マイニングのセブ州トレド銅鉱における副産物の黄銅鉱を肥料原料である硫酸へ活用する事業としてスタートした。そして、1957年10月に、Aソリアノ社(アンスコア)グループ傘下企業としてアトラス社が創設され。アトラス社は58年の歴史を有するのである。1994年には日商岩井(現在の双日)とAソリアノ社との合弁企業となり、2001年には日商岩井が買収、現在に至っている。すなわち、現在は双日傘下にある。
現在、アトラス社は、フィリピンのNP(窒素・リン酸)、NK(窒素・カリウム)、NPK(窒素・リン酸・カリウム)肥料市場において42%のシェアを誇るトップ企業となっている。2005年に比べ販売数量は50%と増加しており、現在の年間生産能力は34万トンに達している。
2015年のフィリピン化成肥料市場規模は年間約180万トンと見られるが、国内の生産能力は41万9,000トンに過ぎない。すなわち138万1,000トンを輸入品に依存している。アトラス社も原料の90%を輸入するとともに、15万トンの単肥製品を輸入しており、年間輸入量は45万トンに達し、年産能力34万トンを大幅に上回っている。したがって、2019年までに生産能力を約40%高め、トップの座を強固にするとともに、良質な肥料供給体制を強化していく方針である。
2015年はエルニーニュ現象の影響による農作物不作を背景に、フィリピン肥料需要は前年比5%減と不振であった。しかし、2016年はエルニーニュ現象が消滅しつつあり、肥料市場も回復に転ずると期待される。アトラス社の販売数量も前年比5%以上となることが期待される。そして、全肥料市場の25%以上を占めるNPK市場でのシェアを46%に高めることを目指している。
アトラス社の鷲見社長は、自社の発展のみならず、フィリピンの農業の効率性向上や競争力強化、農民の生計向上へ一層貢献していくとの方針を表明している。そして、フィリピン政府に対しても、農業振興のための助成金制度や農民向け融資制度や融資保証の拡充、機械化推進支援などを提言している。
日本も、農家一戸当たりの耕作面積が狭く農業従事者の平均年齢が57歳と、フィリピン同様の悩みを抱えている。しかし、日本の1ヘクタール当たりコメ収穫量は70トンでフィリピンの4トンを大幅に上回っている。そして、日本の農業総生産額は692億米ドルで世界第7位の規模となっている。鷲見社長は、フィリピンも農業政策を強化すれば生産性や効率性が高まると見ている。
アトラス社も、フィリピン農業向上のために、農民に対する農業技術や肥料技術に対する啓蒙活動を展開している。その一環として、国際稲作研究所(IRRI)と共同でソフトウェア「ライス・クロップ・マネージャー」を開発した。このソフトは其々のコメ生産委必要な肥料のタイプや量を自動的に産出するものである。
なお、マニラ・ブレティン紙の上記に関する記事は、そのホームページに全文が掲載されている(http://www.mb.com.ph/farming-is-not-just-a-vocation-but-should-be-a-stable-business/ )(双日ホームページや5月25日付けマニラブレティン紙ビジネス・プロファイルなどより)。