フィリピン海外安全情報(危険情報)発出
2016/05/21
5月19日に日本外務省は、フィリピンについての海外安全情報(危険情報)を発出した。その中の地域情勢以下の通り。
・「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」
(継続):ミンダナオ地域の一部地域(南サンボアンガ州、北サンボアンガ州、サンボアンガ・シブガイ州、サンボアンガ市、西ミサミス州、南ラナオ州、北ラナオ州、コタバト州(旧北コタバト)州、マギンダナオ州、スルタン・クダラット州、サランガニ州、バシラン州、スールー州及びタウイタウイ州)(周辺海域を含む)
・「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」
(継続):ミンダナオ地域の中で上記の「渡航中止勧告」発出地域以外の地域(カミギン州、ディナガット・アイランズ州、カガヤン・デ・オロ市及びダバオ市及びジェネラル・サントス市を除く)(周辺海域を含む)
(継続):パラワン州南部(プエルトプリンセサ市以南の地域)
・「十分注意してください」
(継続):上記地域以外のマニラ首都圏を含む全地域。
そのなかで、テロ・誘拐情勢に関しては、以下のように記載されている。
①フィリピンには,イスラム系反政府武装組織(バンサモロ・イスラム自由運動/戦士団(BIFM/BIFF)、モロ民族解放戦線ミスアリ派(MNLF-MG),アブ・サヤフ・グループ(ASG)、ジュマ・イスラミーヤ(JI)等)や共産系反政府武装組織(新人民軍(NPA))等多くの過激派組織が存在する。イスラム系反政府武装組織は無差別爆弾テロ事件、身代金目的の誘拐事件等を行い、NPAは「革命税」を徴収するとの名目で企業や富裕層に対する恐喝等を行っている。
②2014年のフィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)間の包括和平合意を受けて、MILFによるテロ活動は減少していると見られる一方、和平合意に反発するMNLF-MG、BIFM/BIFFによるテロ活動がは現在まで散発的に発生しており、今後活発化する可能性もある。また、ASG等イスラム系反政府武装組織によるテロの危険性は依然として高く、十分な警戒が必要である。
2013年9月にはMNLF-MGがミンダナオ西部のサンボアンガ市に侵入し、住民数百人を人質に市街地に立て籠もり、国軍等治安当局と大規模な武力衝突する事件が発生した。また、BIFM/BIFFは、コタバト州やマギンダナオ州で国軍等との衝突を繰り返している。さらに、ASGは、サンボアンガ地域やスールー州をはじめとして、ミンダナオ地方全域で身代金目的の外国人誘拐や地元住民の拉致、地元企業に対する襲撃等の事件を繰り返している。加えて、インドネシアを中心に活動しているイスラム過激派組織ジュマ・イスラミーヤ(JI)は、フィリピン南部のミンダナオ地域にも拠点を有し、ASG等フィリピン固有のイスラム系反政府武装組織と連携しながら軍事訓練やテロ活動を行っていると見られている。
また、これらの組織の中には、イスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)への支持を表明している組織が存在する。その一つであるASGは、2014年9月、ドイツ政府がISILに対する米国の行動への支援をやめず、身代金を支払わなければ人質のドイツ人2名を殺害する旨警告する動画を公開した。また、BIFFはインターネットのSNSを通じてISILと連絡を取っていると主張している。今後、ISIL等によるテロの呼びかけに呼応し、これらの組織がテロ活動を活発化させる危険性があることから、特段の注意が必要である。
③NPAは、ミンダナオ地域、ルソン地域及びビサヤ地域の広い範囲で国軍等治安当局と交戦し、また「革命税」の支払を拒否する企業への襲撃を継続している。国軍は、同組織が結成記念日である3月29日前後に襲撃を行う傾向があるとし、警告を発するとともに、対策を講じている。2014年3月、フィリピン治安当局がフィリピン共産党(CPP)党首及び同幹部を逮捕し、その後も他の幹部を逮捕していることから、NPAによる報復的ゲリラ活動の活発化が懸念され、引き続き十分な注意が必要である。
④フィリピン全土、特にミンダナオ地域においては、身代金目的の誘拐の脅威が高まっている。2013年にはマニラ首都圏において日本人実業家1名が誘拐されたほか、2014年には、パラワン州でヨットで旅行中のドイツ人観光客が武装集団に誘拐されるなど、マニラ首都圏やミンダナオ地方等でドイツ人、中国人、韓国人など外国人が被害に遭ったものを含め、誘拐事件が数十件発生している。2015年9月には,ミンダナオ地方ダバオ州サマル島のリゾート施設で、カナダ人やノルウェー人など外国人が誘拐され、居あわせた邦人も負傷する事件が発生した。同年10月には、同地方北サンボアンガ州ディポログ市で、レストラン経営者のイタリア人が誘拐された。日頃から治安情報の収集に努めるとともに、毎日の行動がパターン化しないよう注意する、不用意に不特定多数の人間に自らの身辺情報を流さない等、ターゲットにならないよう慎重な行動を心がけられたし。
⑤シリアやチュニジアにおいて日本人が殺害されるテロ事件をはじめ、ISIL(イラク・レバントのイスラム国)等のイスラム過激派組織又はこれらの主張に影響を受けている者によるとみられるテロが世界各地で発生していることを踏まえれば、日本人、日本権益がテロを含む様々な事件に巻き込まれる危険がある。このような情勢を十分に認識し、誘拐、脅迫、テロ等の不測の事態に巻き込まれることがないよう、海外安全情報及び報道等により最新の治安・テロ情勢等の関連情報の入手に努め、日頃から危機管理意識を持つとともに、状況に応じて適切で十分な安全対策を講じるよう心がけられたし。
なお、今回のフィリピンについての海外安全情報(危険情報)は、日本外務省のホームページ(http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo.asp?infocode=2016T099#ad-image-0)に掲載されている(16年5月19 日の日本外務省発表などより)。