住友鉱、フィリピンでレアアース事業化

2016/04/30

スカンジウムを燃料電池向けなどに生産
ミンダナオ島でニッケル鉱石から回収

 

 住友金属鉱山(住友鉱、本社:東京都港区)は、希土類(レアアース)元素のひとつであるスカンジウムの回収事業への参入を決定するとともに、主要用途のうち燃料電池向け販売に関し、米国の大手企業と酸化スカンジウムの長期販売契約を締結した。



 住友は、子会社であるコーラルベイニッケル社(所在地:フィリピン パラワン島、社長:久保田 毅氏)においてニッケル鉱石からスカンジウムを回収するパイロットプラントを2013 年に建設し、ニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程からスカンジウムを商業生産規模で効率的に回収する技術を確立した。

 このほど、住友鉱はスカンジウム回収の事業化を決定、その一環として子会社であるタガニートHPAL ニッケル社(THPAL、所在地:フィリピン ミンダナオ島、社長:久保田 毅氏)に酸化スカンジウムの中間品製造プラントを建設する。また、この中間品を最終製品である酸化スカンジウムに加工するための工程を播磨事業所に設置する。

 スカンジウムは希土類元素の一つで、現在は中国、ロシア等を中心に年間約10~15 トン(酸化スカンジウム換算量)程度生産されていると推定される。世界的に生産量が少ないことからこれまでは需要が限定されていた。

 住友が西側諸国で初めて本格的な量産を行うことでスカンジウムユーザー、とりわけ、燃料電池用途への酸化スカンジウムの長期的かつ安定的な供給が可能となる。世界的な潮流として、省エネルギーと地球温暖化への取り組みが高まっており、住友鉱は酸化スカンジウムの燃料電池分野への供給により、発電によるCO2の大幅な排出量削減にも貢献できる見込みである。

 また安定したスカンジウム源の確保により酸化スカンジウムの新規材料としての特性を生かした様々な分野での活用が期待できる。今後、燃料電池向け用途を基軸に、新規用途を開拓し、顧客とともに市場を創り上げて行く方針である。

 住友鉱は資源の効率的な回収を進めることでHPAL技術(High Pressure Acid Leach:高圧硫酸浸出法)の付加価値を高め、世界のニッケル事業における競争力をさらに向上させて行く方針でもある。

<スカンジウム回収事業化の概要>
1)投資額:約40億円
2)製造能力:約7.5t/年(酸化スカンジウム換算量)
3)製造拠点:
(前工程)THPAL:鉱石より酸化スカンジウムの中間品を回収。
(後工程)播磨事業所:中間品から酸化スカンジウムを生産。
4)生産開始時期:2018 年春を予定。
(16年4月28日の住友金属鉱山株式会社ニュースリリースより)。