NTT等の移動式通信復旧装置、セブ島で実導入

2016/04/05

「アタッシュケース型」、被災地を即時Wi-Fiエリア化

 

 日本電信電話(NTT)およびNTTコミュニケーションズ(NTTコミュニケーションズ)は、日本政府(総務省)とフィリピン政府(科学技術省)、国際連合の専門機関の一つである国際電気通信連合(ITU)に協力し、2013年11月の台風で大きな被害を受けたフィリピン セブ島の被災地において、通信の即時回復を可能とする「移動式ICTユニット」を用いた実証実験を2014年12月から2016年3月にかけて実施した。



 移動式ICTユニットとは、大規模災害時に被災地に搬入・設置することで、避難所などのスポットを短時間でWi-Fiエリア化し、通話やデータ通信の機能を提供可能なシステムで、東日本大震災を契機に、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、東北大学が総務省からの委託を受けて開発した。
 
 今回の実証実験を通して、移動式ICTユニットがフィリピンの台風被災地における通信ネットワークの応急復旧に有効であることを確認するだけでなく、巨大台風来襲を想定した新たなユースケースを創出するなど、セブ島サンレミジオ市の対災害体制整備に貢献した。

 これを受けてサンレミジオ市は、NTTコミュニケーションズが提供した移動式ICTユニットの市内各地への配備拡大に向けて「アタッシュケース型ICT BOX」の実導入を2016年3月に開始した。サンレミジオ市では、災害復旧用途に限らず、移動式ICTユニットを平時のインフラとして活用した教育・医療等のサービス提供など、移動式ICTユニットの利用用途拡大を計画している。

 「アタッシュケース型ICT BOX」は、提供機能を絞り込むことで、さらに可搬性を高めた移動式ICTユニッである。通話機能を提供するアタッシュケースには、交換機能を有するパソコン、バッテリー、Wi-Fiアクセスポイントを搭載し、被災地に持ち込むことで、即座に周辺の通話手段を提供する。

<巨大台風来襲を想定した移動式ICTユニットのユースケース>
 2013年の巨大台風30号(フィリピン名:ヨランダ>時には有線・無線共に通信サービス復旧に約2カ月を要したため、市庁舎と各エリア間の情報共有は人が移動して直接連絡する以外に方法がなかった。
 移動式ICTユニットを用いることで、市長は被災時に警察・ヘルスセンタ・避難所などに電話をして被災状況をヒアリングするとともに、各被災地域で撮影された写真を移動式ICTユニットにインストールされたファイル共有機能を用いて参照し、被災状況を視覚的に確認することができるようになる。また被災した当時、被災者・救援物資等の状況はすべて紙で管理されていたが、移動式ICTユニットを用いることで、これらのリストを各拠点とコマンドセンタ間でリアルタイムに編集・管理することができ、各地域への迅速な救援物資配布指示が可能になる。

  NTTなどは今後、実証実験の成果を活かして、世界で発生する大規模災害時の被災地支援への移動式ICTユニット適用を働きかけ、災害が多い諸外国への普及活動を推進して行く方針である(16年4月4日の日本電信電話株式会社とNTTコミュニケーションズ株式会社ニュースリリースなどより)。