金融取引統合(株式と債券)構想ストップ
2016/03/30
SEC、PSEの債券取引所買収案を棄却
サンミゲルは両取引所の主要株主
フィリピンにおける株式、債券など金融取引統合化構想にストップがかけられた。
現在フィリピンでは、株式や株式に絡んだ派生商品(ワラントなど)の上場、売買はフィリピン証券取引所(PSE)が担当している。一方、債券や固定利付き商品の上場、売買等に関しては、フィリピン・デーリング・システム・ホールディングス社(PDS)傘下の電子取引所(PDEx)が担当している。
2015年末現在のPDSの株主構成は、フィリピン銀行協会(BAP)28.9%、PSE21%、シンガポール証券取引所(SGX)20%、タタ・コンサルタンシーサービス(TCS)アジア8.0%、コンピューターシェア・テクノロジー8.0%、サンミゲル4.0%、フィリピン・アメリカンライフ&ジェネラルインシュアランス(フィーラム・ライフ)4%、FINEXリサーチ&デベロップメント財団(FINEX)3.1%など。
2013年にPSEとPDS合併による金融取引統合化構想が浮上した。双方とも株主構成が多様であることもあって、その交渉には時間がかかってきたが、2014年10月に、PSEが銀行協会(BAP)の保有するPDS株式28.9%を取得することで合意、PSEとBAPの間で売買条件概要書に署名が行われた。この売買が実現するだけで、PSEのPDS保有比率は49.9%に高まる。そして、PSEは他の株主からもPDS株式を取得しPDSを子会社化することで金融取引統合化を図る意向であった。
そして、2015年7月22日に、PSEと銀行協会(BAP)との間で、BAP保有のPDS株式28.9%のPSEへの売却に関する正式合意書に署名が行われた。この売買が完了すると、PSEのPDS保有比率は49.9%に高まる筈であった。
さらに、2015年10月26日に、FINEXが保有するPDS株式19万2,776株(3.1%相当)をPSEに売却することで合意、両社間でPDS株式売買契約書への署名が行われた。売買価格は1株当たり360ペソ、売買総額は約6,940万ペソとまで決定された。この売買は証券取引委員会(SEC)などの監督機関の承認を前提に、2015年11月27日までに完了する見込みであった。
BAPやFINEXによるPDS株式のPSEへの売却決定に続き、他の大株主も売却に動きつつあった。PSEによると、最終的なPDS保有比率は、当初目標としていた70%を大幅に上回る95%程度に達する見込みとなった。すなわち金融取引統合化に向けて大きく前進した感があった。
ただし、PSEによるPDS買収は、PSEを監督する証券取引委員会(SEC)の承認が前提となる。PSEは2015年4月に、SECに対して、PSEの出資に関する規制免除(Exempting relief)申請を行った。
しかし、SECは3月28日に、「PSEによる規制免除申請を正当化する明確で説得力のある根拠が示されていない。PDS買収が公平な取引を損なわないという証拠も示されていない」と発表した。すなわち、SECはPSEによるPDS買収案を棄却した。
ただ、PSEは金融取引効率化やコスト低減には、PDS買収による金融取引統合が不可欠であるとしており、再申請などの措置を講ずると見られる。
この動きの中で注目されるのは、サンミゲルが、サンミゲル退職プランを通じてPSEの実質筆頭株主(個別名明示分だけで10.30%保有、合計で20%程度保有と見られる)であるとともに、PDSの上位株主(4%保有)となっていることである(16年3月28日のフィリピン証券取引所回覧01579-2016号などより)。