フィリピンから帰国の米国女性、ジカ熱発症

2016/03/07

 

 フィリピン保健省は、3月7日、米国感染症防止対策センター(US-CDC)による「フィリピンから帰国した女性のジカ熱感染が確認された」との報告書を公表した。

 この女性は今年1月、フィリピンに4週間滞在、米国帰国直前1週間くらいから発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、班丘疹などの症状を訴え、このほど、ジカウイルス試験で陽性反応が確認された。フィリピン保健省はUS-CDCと協力して、感染経路などを調査している。

 2015年5月以降、ブラジルをはじめとする中南米地域などにおいてジカ熱の発生が報告されている。日本外務省などによれば、ジカウイルスは、デングウイルスと同じフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスであり、ジカ熱はデング熱やチクングニア熱と同様、ウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染する。感染した人を蚊が刺すと、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊に人が刺されると感染する可能性がある。

 ジカウイルスを保有した蚊に刺されて感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は3~12日で、およそ2割の人に発症する。発症すると軽度の発熱(38.5℃程度)、頭痛、関節痛、筋肉痛、班丘疹、疲労感、倦怠感などを呈するが、一般的にデング熱やチクングニア熱より軽症と言われている。しかし、ブラジルでは妊婦がジカウイルスに感染することで胎児が感染し、小頭症児が多発している。胎児が小頭症と確認された妊婦の羊水からジカウイルスRNAが検出され、小頭症で死亡した新生児の脳の病理組織からもウイルスが検出されている。ジカ熱そのもので健康な成人が死に至ることは稀であるが、基礎疾患があり免疫力が低下している場合は死に至ることもある。

 現在、ジカ熱、デング熱及びチクングニア熱には特有の薬がなく、対症療法が行われる。有効なワクチンもなく、蚊に刺されないようにすることが唯一の予防方法である(16年3月7日のフィリピン保健省発表や日本外務省広域情報などより)。