2月のインフレ率0.9%に鈍化(前月1.3%)

2016/03/05

年間目標(2~4%)下限以下の推移続く
寄与度:食料0.5%、外食・サービス0.2%

 

  フィリピン統計庁(PSA)発表によると、2016年2月のインフレ率(総合消費者物価指数(CPI、2006年=100}の前年同月比上昇率)は0.9%(速報値)となり、前月(1.3%)、前年同月(2.5%)から鈍化した。

 フィリピン中央銀行(BSP)の事前予想 (0.9~1.7%)圏内に落ち着いたが、2016年政府インフレ目標(2.0~4.0%)の下限以下の推移となっている。特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は1.5%で、前月の1.8%から0.3%ポイント低下した。

 2月のインフレ率が鈍化した主な要因は、特定の非食品品目の物価が下落したこと。ガソリン・軽油・LPGが値下がりしたことで、一部地域ではジープニー運賃が値下がりし、非食品部門のインフレ率低下に寄与した。

 総合インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏(地域別構成比30.006%)は0.1%で前月から0.5%ポイント低下。一方、地方 (地域別構成比 69.994%)は1.2%で、前月から0.3%ポイント低下した。

 インフレ率が最も高かった地方はミンダナオ・イスラム教徒自治区(3.0%)、カガヤン・バレー地方 (2.9%)、ダバオ地方(2.4%)。セブ州など中央 ビサヤ地方は2.2%。最もインフレ率が低かった地方は、ビコール地方(-0.3%)であった。

 2016年年初2カ月間の平均インフレ率は1.1%で、2016年政府インフレ目標(2.0~4.0%)の下限以下の推移となっている。平均コアインフレ率は1.6%。


CPI上昇率(インフレ率:2006年基準、前年同月比%)

項目 16年2月 16年1月 15年2月 16年1-2月
全国    総合インフレ率 0.9 1.3 2.5 1.1
       コアインフレ率 1.5 1.8 2.5 1.6
首都圏  総合インフレ率 0.1 0.6 2.2 0.4
地方    総合インフレ率 1.2 1.5 2.6 1.4

(出所:フィリピン統計庁資料より作成)


インフレ率目標と実績の推移(11年以前の実績はその目標設定時の00年基準値、それ以降は06年基準)

10年 11年 12年 13年 14年 15年 16~18年
インフレ目標 3.5~5.5% 3.0~5.0% 3.0~5.0%  3.0~5.0% 3.0~5.0% 2.0~4.0% 2.0~4.0%
インフレ率実績 3.8% 4.6% 3.2% 3.0%  4.1% 1.4% -

(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)


総合CPI上昇率(2006年基準、前年同月比%)

項目 年間 15年 16年
15年 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
総合 1.4 2.5 2.4 2.2 1.6 1.2 0.8 0.6 0.4 0.4 1.1 1.5 1.3 0.9
食料品・非アルコール飲料 2.5 4.8 4.3 3.9 3.2 2.1 1.3 1.2 0.8 0.7 1.7 1.7 1.7 1.5
酒類・煙草 3.8 3.9 3.9 3.9 3.7 3.8 3.8 3.7 3.6 3.7 3.9 4.4 4.7 4.9
衣料・靴類 2.6 3.1 3.0 2.8 2.6 2.5 2.6 2.3 2.1 2.2 2.3 2.3 2.1 1.8
住宅・水道光熱費 -1.3 -1.1 -0.2 -0.5 -1.5 -1.3 -1.1 -1.8 -2.2 -2.1 -1.2 -0.3 -0.5 -1.2
家庭備品・営繕 1.9 2.2 2.1 2.3 2.2 1.9 1.8 1.7 1.6 1.5 1.6 1.6 1.5 1.5
健康・医療 2.1 2.7 2.5 2.3 2.3 2.2 1.9 1.8 1.5 1.7 1.8 1.9 1.8 1.9
交通・輸送 -0.1 -0.5 -0.2 -0.2 0.1 0.2 -0.5 -0.6 -0.3 0.1 0.6 2.2 1.5 -0.5
通信 0.0 -0.1 -0.1 -0.1 -0.1 -0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1
娯楽・文化 1.1 1.2 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.0 1.0 0.9 1.0 1.1 1.0 1.0
教育 4.2 5.1 5.1 5.1 5.1 3.7 3.5 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6 3.6
外食・サービス他 1.3 1.5 1.5 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.4 1.4 1.4 1.5
首都圏 1.0 2.2 1.9 1.5 0.7 0.6 0.8 0.2 0.1 0.2 1.0 1.1 0.6 0.1
 地方 1.5 2.6 2.6 2.3 1.8 1.4 0.8 0.8 0.4 0.5 1.1 1.5 1.6 1.2




食料品物価上昇率(2006年基準、前年同月比%)

項目 食料 コーン 果物 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 パン・シリアル 砂糖・菓子類 その他食品
15/1月 5.6 8.6 3.9 11.7 2.1 4.8 4.9 4.6 3.2 6.9 4.3 5.0
2月 4.9 7.2 2.4 11.4 -0.3 4.4 5.3 4.5 2.8 5.8 3.7 4.6
3月 4.4 5.6 0.9 11.1 1.5 3.7 5.3 4.1 2.1 4.5 3.3 4.7
4月 4.0 4.6 0.8 10.9 2.1 2.2 6.1 3.8 1.7 3.7 3.9 4.5
5月 3.2 3.2 0.1 9.4 2.4 1.3 5.0 3.3 0.8 2.6 4.9 4.1
6月 2.1 2.0 -0.3 8.7 -3.2 0.7 4.7 3.0 0.2 1.7 3.8 5.3
7月 1.3 0.1 -0.5 6.1 -3.6 0.7 4.1 2.4 -0.3 0.3 3.3 4.9
8月 1.1 -0.9 -0.7 4.7 2.0 0.3 3.1 1.8 -0.3 -0.5 2.9 4.3
9月 0.7 -1.7 -0.7 3.9 2.3 0.4 2.5 1.5 -0.4 -1.0 2.6 2.2
10月 0.7 -2.3 -1.4 3.5 3.2 0.7 3.0 1.3 -0.6 -1.6 3.1 3.0
11月 1.7 -2.4 0.0 3.6 12.1 0.9 3.6 1.2 -0.1 -1.6 3.9 2.8
12月 1.8 -2.6 0.4 3.5 12.0 0.8 4.2 1.3 0.2 -1.7 4.9 2.4
16/1月 1.7 -2.4 0.9 3.4 11.9 0.8 3.4 1.2 0.2 -1.5 5.6 3.0
2月 1.5 -2.0 1.8 3.3 9.7 0.9 2.3 1.1 0.2 -1.2 6.4 3.7

(出所:フィリピン統計庁資料より作成)


 なお、中央銀行(BSP)発表によると、2月の総合インフレ率(2006年=100)0.9%への寄与度は、食料品・非アルコール飲料 0.6% (うち食料品 0.5%)、住宅・水道光熱費 -0.3%、外食・サービス他 0.2%、教育 0.1%、酒類・煙草 0.1%、衣料・靴類 0.1%など。

 2カ月間平均インフレ率1.1%への寄与度は、食料品・非アルコール飲料0.6% (うち食料品0.6%)、住宅・水道光熱費 -0.2%、外食・サービス他0.2%、教育0.1%、酒類・煙草0.1%、衣料・靴類 0.1%。

 テタンコ中央銀行総裁は、2月のインフレ率は目標(2.0%~4.0%)の下限以下となったが、早晩目標圏内に収斂、目標圏での動きになると判断している。ただし、持続的経済成長に繋がる物価安定を確実にするために、国内はもとより、欧米、中国等の景気動向や物価傾向を引き続き注意深くモニターしていく方針である(16年3月4日のフィリピン統計庁・中央銀行発表より)。


2016年2月及び2カ月間のインフレ率(2006年=100)と寄与度(%)

項目 物価指数 2月 1-2月
構成比 インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 0.9 0.9 1.1 1.1
食料品・非アルコール飲料 38.98 1.5 0.6 1.6 0.6
   うち食料品のみ 36.29 1.5 0.5 1.6 0.6
酒類・煙草 2.00 4.9 0.1 4.8 0.1
衣料・靴類 2.95 1.8 0.1 1.9 0.1
住宅・水道光熱費 22.47 -1.2 -0.3 -0.9 -0.2
家庭用品・営繕 3.22 1.5 0.0 1.5 0.0
健康・医療 2.99 1.9 0.1 1.9 0.1
交通・輸送 7.81 -0.5 0.0 0.5 0.0
通信 2.26 0.1 0.0 0.0 0.0
娯楽・文化 1.93 1.0 0.0 1.0 0.0
教育 3.36 3.6 0.1 3.6 0.1
外食・サービス他 12.03 1.5 0.2 1.5 0.2

(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)