証券取引所のボニファシオ移転、17年上半期と予定

2016/02/27

昨年は21%減益、市場反落や新規上場減少など響く

 

 フィリピン証券取引所(PSE、自身もPSEに上場)が、2月26日に、2015年(1月~12月)の決算速報を発表した。

 それによると、2015年の営業収入は前年比20%減の12億1,421万ペソ、純利益は同21%減の6億8,281万ペソと二桁減収減益決算となった。4月中旬以降の株式市場調整の動き、上場関連手数料収入が同41%減の4億8,300万ペソへ急減したことなどが響いた。ちなみに、2015年の新規上場はクラウン・アジア・ケミカルズ、SBSフィリピン、メトロリテイル、イタルピナスという中小型4社にとどまり、2014年の7社から更に減少した。

 代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)は 2009年から2014年まで6年連続で上昇しこの間の株価が約3.8倍へと急騰した。2015年4月6日に終値ベースで初の8,000ポイント台乗せ、同10日には8,127.48ポイントという 終値ベースでの史上最高値を更新した。しかし、その後はギリシャ債務問題の再燃や米国の利上げ懸念(12月に実際に実施)、さらには中国経済鈍化や金融市場混乱などを背景に調整局面が続き、年間では3.85%下落、7年ぶりの下落となった。

 2015年の1日当たり平均売買額も前年比1.8%増の89億6,412万ペソと伸び悩んだ。外人の売買額シェアは48%で、前年の49%を僅かに下回った。外人は約597億ペソの売り越しとなり、前年の約557億ペソの買い越しから急悪化となった。米国利上げの動きなどを背景にした新興国市場回避の動きがフィリピンにも及んだといえる。2015年末のPSE時価総額は前年末比5.5%減の13兆4,651億ペソ、そのうち、国内企業時価総額は同4.5%減の11兆1,878億ペソであった。フィリピン証券取引所指数(PSEi)が小幅ながら下落したこと、新規上場が中小型4社にとどまったこと、バイオ燃料のケムレス・テクノロジーズなどが自主的上場廃止となったことなどから、PSE時価総額は前年末比縮小という結果となった。

 フィリピン証券取引所の動き(年末・年間値、2016年は2月26日時点の数値)

項目 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 16年2月26日
フィリピン証券取引所指数 3,052.68 4,201.14 4,371.96 5,812.73 5,889.83 7,230.57 6,952.08 6,771.30
年末時価総額(億ペソ) 60,291 88,611 86,970 109,301 119,313 142,517 134,651 130,931
  国内企業時価総額 39,919 68,922 72,390 94,163 96,452 117,128 111,878 109,544
  外国企業時価総額 20,372 19,689 14,580 15,138 22,861 25,389 22,773 21,387
1日平均売買額(億ペソ) 41.1 49.5 57.1 72.6 105.2 88.0 89.6 61.7
外人の売買額シェア 32.4% 38.1% 37.8% 45.0% 51.0% 49.0% 48.0% 50.0%
外人買越額(億ペソ) 149.2 356.2 565.2 1,099.8 155.9 557.2 -597.1 -52.9
PER(株価収益率) 23.26倍 21.32倍 16.57倍 17.97倍 17.79倍 20.13倍 19.48倍 19.11倍

 (出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)

 2016年は、PSEiが年初から2月26日まで2.6%下落、一日当たり平均売買金額は2015年同期比47%減の61億7,281万ペソへと急減している。外人も52億9,121万ペソの売り越しで、2015年同期の411億8.376万ペソの買い越しから急悪化している。2015年同期はPSEiの史上最高更新が続くなど非常に好調であったことを考慮する必要があるが、2016年は苦しいスタートとなった。確定した新規上場案件はゼロである。したがって、PSEの当面の業績は厳しいものとなりそうであるが、後半からの回復を期待している状況である。

なお、PSEは2013年に、首都圏タギグ市ボニファシオへの移転を正式決議している。この決議によると、PSEは、本社所在地を、現在のマカティ市アヤラ・トライアングルのPSEプラザ・タワー1から、ボニファシオ基地跡大再開発プロ ジェクトの中心である先端都市ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)に移転する。

 具体的には、BGCの5thアベニューと28thストリートの交差する地点で、セント・ルークス病院の向かい側となる。PSEの移転構想自体はかなり以前からあり、BGCの開発主体であるフォート・ボニファシオ開発社(FBDC)が、BGCの魅力を高めるべく、PSEの本社や取引フロアをBGCに誘致 しようとしたことに端を発する。

 FBDCは2002年に、5,000平米の土地をPSEに寄贈した。当初計画では、PSEは早い段階でBGCに移転する予定であったが、その後の景気変動やマカティ市への影響などを考慮し、慎重な対応が行われてきた。この土地開発はアヤラランドと共同で進められつつある。PSE移転後はBGCの魅力が一段と高まることになると期待されている。

 PSEは2月26日に、「PSEのBGCへの移転は2017年上半期と予定している」と発表した(16年2月26日のフィリピン証券取引所回覧00903-2016号などより)。