世界初の全パーツ3D出力義足、比で事業化検討

2016/02/22

JICAの中小企業海外展開支援、SCHデザインが開発

 

 国際協力機構(JICA)は、「中小企業海外展開支援事業~基礎調査~」において(株)SHCデザイン(神奈川県横浜市、増田恒夫代表取締役)が提案する「3Dプリント義足製作ソリューション事業基礎調査」(フィリピン)を採択した。

 フィリピンでは34.5万人の義足適用患者のうち、10.5万人は義足装着により生産労働への従事が可能になると言われている。しかし、義足装具士と義足提供クリニックの不足により、多くの義足適用患者が義足を装着できずにいる。また、従来の義足の価格は2万2千円以上であり、高価であることから義足を一度も所持・使用したことがない足切断患者は91.8%に上るとされている。

 株式会社SHCデザインが開発した製品『3Dプリント義足製作ソリューション』は、膝下義足適合患者の断端部を3Dスキャンし、それを元に専用3Dソフトウェアでデータを制作し、特殊材料を用いて専用3Dプリンターで義足を出力する仕組みである。特殊材料とは、柔軟性があり人体親和性が高い特殊素材-株式会社JSR社より協力-で、これにより、関節部も兼ね備えた世界初の全パーツ完全3Dプリントによる膝下義足の製作が可能となった。同製品では、従来価格に比べ安価な義足(約1万2千円~)の提供が可能になる。しかも、製作期間が短く、制作環境(3Dソフトウェア、3Dプリンターのセット)も、非常に安価(約25万円~)にて提供することができる。

 この基礎調査において、SHCデザインはフィリピンにおける3Dプリント義足製作ソリューション事業・製品の有効性、市場受容性等を調査する。同製品の普及により、フィリピンの低所得者層を中心とした義足のニーズに応え、障害者の生産労働への従事を可能にし、生活の質を高めることに貢献することが期待される。

 この調査は、我が国の中小企業を対象とした「中小企業海外展開支援事業~基礎調査~」として実施される。基礎調査は、優れた製品や技術力を有する中小企業が途上国に進出することによる開発課題解決の可能性及びODA事業との連携可能性を検討するためのもので、均等に必要な基礎情報の収集と海外展開事業計画の策定を目的としている。本スキームは2012年度より実施されており、2015年度分は昨年9月に公示を行い、40件の応募のうち17件が採択された。今後の契約交渉を経て契約に至ったものから、順次調査を実施する。

 なお、採択された17件のうち、フィリピン案件は上記の「3Dプリント義足製作ソリューション事業基礎調査」のほか、 ウェザー・サービス株式会社(千葉県)の「気象情報および防災情報提供サービス事業の基礎調査」、インフィック株式会社(静岡県)の「日本式介護システム導入事業基礎調査」が採択された(16年2月22日の国際協力機構プレスリリースより)。