15年成長率5.8%、純輸出悪化を内需でカバー

2016/01/28

ASEAN主要国2位、アジア主要国で4位の伸率
アキノ政権6年間で6.2%(移動平均)と高水準

 

 2015年第4四半期(10~12月)GDP成長率(前年同期比実質ベース:以下同様)は6.3%で、前期の6.1%(速報値6.0%から上方改訂)からは拡大したが、前年同期の6.6%には及ばなかった。

 セクター別成長率は農林水産業がマイナス0.3%(前年同期4.2%)、鉱工業が6.8%(同9.1%)、サービス産業が7.4%(同5.6%)であった。主力のサービス産業の成長率が高まったが、鉱工業が非常に好調であった前年同期からは大幅鈍化したこと、悪天候の影響で農林水産業がマイナス成長へと悪化したことが響き、全体の成長率が前年同期比鈍化という結果となった。

 支出項目別伸び率は、家計最終消費支出が6.4%(前年同期5.0%)へと拡大、政府支出も17.4%(同9..4%)と拡大した。更に、資本形成も13.5%(同3.0%)へと急拡大した。しかし、輸出の伸びが7.1%(同12.8%)と鈍化した。一方、GDPのマイナス勘定となる輸入の伸びが13.3%(同9.9%)へと拡大した。すなわち、純輸出(輸出マイナス輸入)の急激な悪化が大きく響いたといえる。

 これらの結果、2015年通年(1月~12月)GDP実質成長率は5.8%となり、前年の6.1%から鈍化、政府目標の7~8%には遠く及ばなかった。ただし、民間エコノミストの事前推定コンセンサス(5.74%)を若干上回った。また、ASEAN主要5カ国のなかではベトナムに次ぐ2番目、アジア主要国のなかでもインド、中国、ベトナムに次ぐ4番目に高い伸びとなった。また、アキノ政権発足後の6年間の「移動平均は6.2%で、1978年以来最高の伸びとなった。



 年間のセクター別成長率は農林水産業が0.2%(前年1.6%)、鉱工業が6.0%(同7.9%)、サービス産業が6.7%(同5.9%)であった。鉱工業では製造業が5.7%(同8.3%)、建設業が8.9%(9.9%)と双方堅調ながら、前年からは鈍化となった。サービス産業では、不動産が7.3%と高水準ながら前年の8.7%から鈍化したことが目立つ。
 
 年間の支出項目別伸び率は、家計最終消費支出が6.2%(前年同期5.4%)へと拡大、年間でも牽引役となった。政府支出も9.4%(同1.7%)、資本形成も13.6%(同5.4%)へと拡大した。しかし、第4四半期と同様に、輸出の伸びが5.5%(同11.3%)へと急鈍化する一方、GDPのマイナス勘定となる輸入の伸びが11.9%(同8.7%)へと拡大した。すなわち、純輸出の急激な悪化が年間成長率の鈍化につながったといえる。

 年間のGNI(国民総所得)成長率は5.4%で、前年の5.8%から鈍化した。GDPの伸び率鈍化にくわえ、フィリピン人海外就労者(OFW)送金など海外からの純所得の伸びが3.6%(前年4.1%)へと鈍化したことが響いた(16年1月28日のフィリピン統計庁発表などより)。

 

産業・支出項目別GDP実質成長率(年率)の推移(2000年基準:単位:%)

項目 構成比 四半期成長率 累計成長率
15年 14年 15年 14年 15年
期間 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1-12月
GNI(国民総所得) 100.0 6.6 6.9 3.9 5.7 4.2 5.4 5.8 6.2 5.8 5.4
GDP(国内総生産) 83.7 5.6 6.7 5.5 6.6 5.0 5.8 6.1 6.3 6.1 5.8
NPI(海外からの純所得) 16.3 11.1 7.9 -3.1 1.4 0.8 3.6 4.7 5.4 4.1 3.6
セクター別内訳
農林水産業 8.8 0.6 3.4 -2.6 4.2 1.1 -0.2 0.3 -0.3 1.6 0.2
 農林産業 7.2 1.4 4.5 -2.6 4.3 1.9 -0.3 0.2 0.7 2.0 0.7
   米 2.3 3.3 6.4 -10.0 6.8 1.4 -2.8 -15.7 -3.7 2.8 -4.3
   コーン 0.4 1.3 11.8 -5.8 27.3 4.0 -15.7 -1.7 -6.1 5.2 -3.2
 水産業 1.6 -3.1 -1.6 -2.4 4.2 -2.9 -0.1 1.1 -4.5 -0.4 -1.8
鉱工業 28.6 5.4 9.1 7.8 9.1 5.5 5.9 5.5 6.8 7.9 6.0
 鉱業・採石業 0.6 9.0 2.1 4.2 5.9 -3.1 -7.1 3.6 7.8 4.9 -1.3
 製造業 20.5 7.0 11.1 7.5 7.7 6.0 4.7 5.5 6.6 8.3 5.7
 建設 5.2 1.0 7.2 13.1 17.9 5.4 15.3 5.4 8.4 9.9 8.9
 光熱水道 2.3 0.3 3.0 3.0 5.1 5.1 2.7 6.6 4.8 2.8 4.8
サービス業 46.4 6.8 5.9 5.6 5.6 5.4 6.6 7.2 7.4 5.9 6.7
 運輸倉庫通信 6.4 8.2 6.9 5.2 4.5 8.3 6.4 8.1 8.9 6.2 7.9
 商業・自動車修理等 14.4 6.1 6.5 7.0 3.4 5.5 6.6 8.3 7.0 5.7 6.9
 金融 5.6 5.7 6.1 8.4 8.9 4.3 5.8 5.4 7.4 7.2 5.7
 不動産等 9.0 10.2 8.5 6.7 9.7 6.3 7.0 7.8 7.9 8.7 7.3
支出別内訳
家計最終消費支出 60.7 6.1 5.7 4.9 5.0 6.0 6.2 6.1 6.4 5.4 6.2
政府最終消費支出 7.3 1.9 0.0 -2.5 9.4 1.7 3.9 17.4 17.4 1.7 9.4
資本形成 22.3 12.8 8.3 -0.2 3.0 11.6 17.2 12.4 13.5 5.4 13.6
 固定資本 21.0 1.7 6.9 10.7 8.0 10.0 8.9 13.3 22.5 6.8 14.0
   建設 8.1 -1.0 10.5 13.9 19.2 6.7 13.1 5.7 7.8 10.9 8.4
   耐久設備 11.1 4.0 3.8 7.7 -0.1 13.5 6.4 19.1 40.2 3.7 20.3
輸出等 31.7 12.7 7.9 12.1 12.8 6.4 2.1 6.5 7.1 11.3 5.5
輸入等(控除勘定) 39.1 16.3 4.9 4.7 9.9 8.7 10.4 14.9 13.3 8.7 11.9

(出所:国家統計庁資料より作成)