昨年の株価3.9%下落、4月の最高値更新後に軟化

2016/01/03

7年ぶりの反落、資源株34%急落、不動産株4%上昇
ダブルドラゴン3倍に急騰、カジノ株は50~80%急落
ペソ対ドルレートは5%下落、3年連続のペソ安に

 2009年から2014年まで6年連続で上昇しこの間の株価が約3.8倍へと急騰したフィリピン株式市場は、2015年も 第1四半期及び4月上旬までは非常に強い動きとなっていた。

 

 フィリピン証券取引所指数(PSEi)は、2015年4月6日に終値ベースで初の8,000ポイント台乗せ、同10日には8,127.48ポイントという 終値ベースでの史上最高値を更新した。しかし、その後はギリシャ債務問題の再燃や米国の利上げ懸念(12月に実際に実施)、さらには中国経済鈍化や金融市場混乱などを背景に調整局面が続いた。

 12月は値頃感からの押し目買いの動き、米国利上げ実施に伴う目先の悪材料出尽くし感、今後の米国利上げピッチは鈍いとの期待感などにより、月間で0.36%%の反発となった。そして、2015年年間累計では3.85%下落、これまでの年間ベースでの6年連続上昇に終止符を打ち、7年ぶりの下落となった。もっとも、堅調なフィリピン経済、経常収支の長期的な黒字継続などを背景に、新興国市場のなかでは相対的に安定していたともいえる。

フィリピン証券取引所指数、ペソ対米ドルレートの動き(年末値と月末価、2015年最終日は12月29日)

フィリピン証券取引所株価指数 ペソ対米ドルレート
時期 年末・月末値 上昇率 年末・月末値 上昇率
2004年 1,822.83ポイント 26.38% 56.280ペソ -1.39%
2005年 2,096.04ポイント 14.99% 53.090ペソ 6.01%
2006年 2,982.54ポイント 42.29% 49.030ペソ 8.28%
2007年 3,621.60ポイント 21.43% 41.280ペソ 18.77%
2008年 1,872.85ポイント -48.29% 47.520ペソ -13.13%
2009年 3,052.68ポイント 63.00% 46.200ペソ 2.86%
2010年 4,201.14ポイント 37.62% 43.840ペソ 5.38%
2011年 4,371.96ポイント 4.07% 43.840ペソ 0.00%
2012年 5,812.73ポイント 32.95% 41.050ペソ 6.80%
2013年 5,889.83ポイント 1.33% 44.395ペソ -7.53%
2014年 7,230.57ポイント 22.76% 44.720ペソ -0.73%
2015年 6,952.08ポイント -3.85% 47.060ペソ -4.97%
         
2015年1月 7,689.91ポイント 6.35% 44.080ペソ 1.45%
2月 7,730.57ポイント 0.53% 44.090ペソ -0.02%
3月 7,940.49ポイント 2.72% 44.700ペソ -1.36%
4月 7,714.82ポイント -2.84% 44.520ペソ 0.40%
5月 7,580.46ポイント -1.74% 44.590ペソ -0.16%
6月 7,564.50ポイント -0.21% 45.090ペソ -1.11%
7月 7,550.00ポイント -0.19% 45.740ペソ -1.42%
8月 7,098.81ポイント -5.98% 46.735ペソ -2.13%
 9月  6,893.98ポイント  -2.89%  46.740ペソ -0.01%
 10月 7,134.26ポイント 3.48% 46.820ペソ -0.17%
11月 6,927.07ポイント -2.90% 47.145ペソ -0.69%
12月 6,952.08ポイント 0.36% 47.060ペソ 0.18%
年間 - -3.85% - -4.97%

(出所:フィリピン証券取引所やPDS資料より作成)

 2015年の大分類セクター別指数の変化率トップは持株会社(ホールディング・カンパニー)のプラス4.78%、次いで不動産のプラス3.75%。すなわち、この2セクターは年間で小幅ながら上昇となった。その他は工業7.94%下落、金融8.58%下落、サービス28.03%下落、鉱業・石油34.07%下落と マイナス・パフォーマンスとなった。原油価格や金属国際市況の急落を背景に、鉱業・石油株が大幅下落していることが目立つ。

 個別ではカジノ関連株の急落が目立った。例えば大型カジノリゾート「ソレア」を運営するブルームベリー・リゾーツの株価が一年間で約60%急落、「シティ・オブ・ドリームス マニラ」を運営するメルコ・クラウン(フィリピン)リゾーツの株価は約80%急落、「リゾーツワールド マニラ」を運営するトラベラーズ・インターナショナル ホテルグループの株価は約50%急落した。足許の業績が赤字であること、中国経済停滞や領海問題で中国人訪問者が減少するとの懸念などが響いた。

 一方、中小型成長株の急上昇も目立った。ジョリビー系の不動産企業ダブルドラゴンの株価は一年間で約3倍に、携帯電話コンテンツなどを開発するIT企業サーパスは一年間で約70%の上昇となった。両社とも、2014年にPSEのSME(中小企業)ボードに上場した新興企業である。ダブルドラゴンは早くも2015年にPSEメインボードへ指定替えとなっている。

 2015年の1日当たり平均売買額は前年比1.8%増の89億6,412万ペソ。外人の売買額シェアは48%で、前年の49%を僅かに下回った。外人は約597億ペソの売り越しとなり、前年の約557億ペソの買い越しから急悪化となった。米国利上げの動きなどを背景にした新興国市場回避の動きがフィリピンにも及んだといえる。

 2015年末のPSE時価総額は前年末比5.5%減の13兆4,651億ペソ、そのうち、国内企業時価総額は同4.5%減の11兆1,878億ペソであった。株価が小幅ながら下落したこと、新規上場がクラウン・アジア・ケミカルズ、SBSフィリピン、メトロリテイル、イタルピナスという中小型4社にとどまったこと、バイオ燃料のケムレス・テクノロジーズなどが自主的上場廃止となったことなどから、PSE時価総額は前年末比縮小という結果となった。

フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率 

項目 12年の上昇率 13年の上昇率 14年の上昇率 15年終値 15年上昇率
フィリピン証券取引所指数 32.95% 1.33% 22.76% 6,952.08 -3.85%
全株指数 21.48% -2.29% 17.99% 3,990.47 -6.43%
  金融株指数 57.49% -6.42% 18.78% 1,550.68 -8.58%
  工業株指数 25.48% 2.11% 37.89% 11,031.22 -7.94%
  持株会社株指数 47.01% 5.41% 16.03% 6.601.26 4.78%
  不動産株指数 55.59% -4.30% 27.42% 2,915.60 3.75%
  サービス株指数 6.70% 8.20% 13.94% 1,530.22 -28.03%
  鉱業・石油株指数 -17.43% -38.59% 32.70% 10,427.24 -34.07%

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)

フィリピン証券取引所の(年末・年間値) 

項目 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
フィリピン証券取引所指数 3,052.68 4,201.14 4,371.96 5,812.73 5,889.83 7,230.57 6,952.08
年末時価総額(億ペソ) 60,291 88,611 86,970 109,301 119,313 142,517 134,651
  国内企業時価総額 39,919 68,922 72,390 94,163 96,452 117,128 111,878
  外国企業時価総額 20,372 19,689 14,580 15,138 22,861 25,389 22,773
1日平均売買額(億ペソ) 41.1 49.5 57.1 72.6 105.2 88.0 89.6
外人の売買額シェア 32.4% 38.1% 37.8% 45.0% 51.0% 49.0% 48.0%
外人買越額(億ペソ) 149.2 356.2 565.2 1,099.8 155.9 557.2 -597.1
PER(株価収益率) 23.26倍 21.32倍 16.57倍 17.97倍 17.79倍 20.13倍 19.48倍

(出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)

 一方、PDS(フィ リピン・ディーリング・システム)でのペソ対米ドルレートは、2015年12月末終値が1米ドル=47.060ぺソとなり、月間で0.18%反発、月間ベースでは8カ月ぶりの上昇となった。しかし、2015年年間では4.95%下落、年間ベースで3年連続のペソ安となった。米国利上げ懸念が強まった11月9日に終値ベースで約5年半ぶりの47ペソ台を記録、その後も軟調に推移した(PSEやPCD取引記録などより)。