山一電機、中国製造事業をフィリピンへ移管

2015/12/20

深セン現法を解散、比子会社プライコンが増産

 

 コネクタやICソケットなどを手掛ける山一電機(本社:東京都大田区)は、12月18日開催の取締役会において、連結子会社である山一電子(深セン)有限公司(本社:中国広東省)を解散し清算することを決議した。

 山一電子(深セン)有限公司は、1994年5月に、中国での電子部品の製造を目的として設立され、現在まで事業活動を行なってきた。しかしながら、立地する工業団地について深セン市南嶺村当局より新たな土地利用計画に基づく移転要請があり、広東省内外の移転および山一電機グループ生産拠点での生産移管について、顧客への製品製造の影響を軽微とすることを最優先に検討した。

 その結果、グローバル生産体制およびコスト競争力強化の観点から、深セン市内での移転による事業継続が困難と判断し、生産品の一部をフィリピン子会社であるプライコン マイクロエレクトロニクス社(PMI)に生産移管、また、一部を中国の取引先に生産委託し、山一電子(深セン)有限公司を解散し清算することを決定した。山一電子(深セン)有限公司は、山一電機の唯一の中国生産拠点であることから、現時点では、中国での生産撤退(一部委託生産を除く)ということになる。これまで進めてきた「中国集中リスク軽減」を超える動きである。

 山一電機は、1994年に「プライコン マイクロエレクトロニクス」(PMI)の経営権を取得、子会社化した。PMIは現在、フィリピン・ラグナ州カブヤオのライトインダストリー&サイエンスパーク1に立地。コネクター、ソケット、テスト用ソケット、フレキシブル配線板などの製造を行っている。山一電機の出資比率は99%強である。

 その後、山一電機は、2011年9月の取締役会において、PMIにコネクタ製品及び太陽電池モジュール用接続製品の生産ライン立上げのため、300万米ドルの追加出資することを決議した。対フィリピン追加投資の目的は、中国に集中しているコネクタ類の生産を分散化すること(中国集中リスク軽減)と表明された。

 さらに山一電機は、2014年度を初年度とする中期3カ年経営計画の達成に向けて、製品開発力、販売力、製造力、収益力および財務力を高め、「顧客が満足する製品・サービスを提供できる会社」の基盤づくりを図っている。その一環として、PMIに隣接する工場不動産取得を決議した。
 
 山一電機グループは、現時点では、国内の他に、フィリピン、中国、韓国、ドイツに海外生産拠点を有しているが、中期3カ年経営計画の達成に向けて、テストソケット製品や車載機器向けコネクタ製品および多層基板製品の生産拡大に向けた増産体制を整備する必要が生じていることや、PMIの隣接地などの好条件であったことから決断した。
 PMIが新たに取得する工場不動産は、2015年度中に改修工事し、稼動開始を予定しており、フィリピンでの生産能力倍増を計画している。このための投資金額は3億2,000万円と発表されている。
 
 なお、山一電機はフィリピンにおいてPMIIのほか、100%子会社テスト・ソリューション・サービス(TSS、旧名パイコン・テクノロジー・フィリピン)も有している。TSSは、半導体信頼性検査サービス企業であり、ラグナ州ビニャンのラグナ・インターナショナル工業団地(LIIP)内に立地する。2007年に山一電機が、米国パイコンから取得、完全子会社化した。

 いずれにしても、山一電子(深セン)有限公司の解散・清算により、山一電機グループにおけるフィリピンの重要性が一段と高まることになりそうである(15年12月18日の山一電機株式会社ニュースリリースなどより)。