三菱東京UFJマニラ支店、1ドル=50ペソへの下落予想
2015/11/30
経済・為替講演会、来年の予想レンジ45.50~50.50ペソ
三菱東京UFJ銀行マニラ支店は、11月27日、首都圏マカティ市ドュシタニ・ホテルにおいて、毎年恒例の経済・為替関連講演会を開催した。
この講演は2部構成で、第1部が三菱UFJリサーチアンドコンサルティング研究理事の五十嵐敬喜氏による「2016年の日本およびグローバル経済を展望する」、第2部が三菱東京UFJ銀行マニラ支店為替資金課の津村啓介課長による「フィリピン経済概況とペソ金利為替見通し」という構成であった。
第一部担当の五十嵐氏は、日本経済新聞夕刊の「十字路」などに定期寄稿。2014年3月までテレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」のレギュラーコメンテーターを務めた。2014年4月から亜細亜大学経済学部特任教授を兼任。その他テレビ、新聞、経済雑誌への出演、寄稿、著書なども多い。
五十嵐氏は、「中国の実態経済悪化は発表数値以上に深刻である可能性があり、構造的な成長率の低下が避けがたい。新興国経済は米国金融政策引締めへの転換の動きの影響を受けつつある。米国経済もこれまでの長期的回復傾向がいつまで続くかが問題であるしユーロ圏の回復ピッチも鈍い。これらを背景に、日本の景気回復ピッチは極めて緩やかで、かつ長続きしそうにない」と概括、当面のグローバル経済は伸び悩みそうであると予想した。
津村氏による第2部の「フィリピン経済概況とペソ金利為替見通し」では、フィリピン経済について、「消費を軸とした6%弱という2015年の成長率見込みは域内高水準であり評価できる。輸出環境が厳しいなか、従来以上に内需依存型となる可能性がある。消費に加え建設や政府支出が期待される。エルニーニュ現象の影響が拡大すれば農業生産に打撃となる。2015年のインフレ率鈍化は資源価格の恩恵。2016年はエルニーニョ現象の影響等が懸念され、中央銀行のインフレ警戒感も強い」と概括された。
ペソ対米ドルレートの2015年の動きに関しては、「第1四半期は株高に伴いペソ高となったが、その後は従前よりペソ安材料である米国利上げ観測に敏感に反応するようになった。2014年に持ち堪えた分、2015年はペソが下げ足を速めた(2013年は8.1%のペソ安、2014年は0.7%のペソ安、2015年は11月末現在で5.1%のペソ安)」と概括された。
2016年に関しては、ペソを動かす主な材料として①米国利上げ(ペース)、②世界景気動向、③フィリピン自身の経済情勢が挙げられた。メインシナリオとして、「米国景気が上向きが『強い米国』復活気運。ドル独歩高に一定の警戒感は出るも、ドルが全般的に買われる展開が続く。一方、フィリピン経済は中立見通しだが、大統領選後しばらくは政治調整が続く可能性。経常黒字の縮小が続けばペソを支える要因に欠き、ドル高ペソ安が進行」と示された。そして、メインシナリオが加速すれば、節目の1米ドル=50ペソを目指す展開になるとの予想が示された。
三菱東京UFJ銀行マニラ支店による期間別ペソ対米ドル相場予想(15年11月時点)
・2016年第1四半期(1月~3月) :予想レンジ45.75~48.50、予想中心レンジ46.50~48.00
・2016年第2四半期(4月~6月) :予想レンジ45.50~49.00、予想中心レンジ46.50~48.50
・2016年第3四半期(7月~9月) :予想レンジ45.50~50.00、予想中心レンジ47.00~49.50
・2016年第4四半期(10月~12月) :予想レンジ45.50~50.50、予想中心レンジ47.00~50.00
2016年のペソ政策金利に関しては、「景気動向に不透明感があるうえ、第2四半期に予定されている金利コリドー制導入に伴う調整もあり、積極的には動きづらい状況である」と説明された。そして、「金利コリドー制導入に伴う政策水準調整の内容にもよるが、慎重派の中央銀行だけに、物価や景気、国内流動性に目立った現象がなければ金利据え置きが予想される。特別預金口座(SDA)金利は現行の2.5%が継続されるであろう」との予想が示された(15年11月27日の三菱東京UFJ銀行マニラ支店講演会やその資料などより)。