比セブン・イレブン首位の座強固、9月末1,480店に
2015/11/10
1年間で311店増加、地方も拡大、セブのシェア8割超
ミニストップ511店、ファミリーマート113店等と大差
業績堅調、地方進出負担こなし9カ月間で10%増益に
フィリピンでコンビニエンス・ストア業界が順調に発展しつつある。現在は業界断トツのセブンイレブンをマーキュリー・セルフサービスやミニストップが追うという構図になっている。そして、2013年にはファミリーマートとサークルKが進出、2015年3月にはローソンもフィリピン1号店をオープンした。
首位のセブンイ レブンは、台湾系のプレジデント・チェーン・ストア(ラブアン)ホールディングスが51.561%を所有(2015年9月末現在)するフィリピン・セブン社 (PSC)によって運営されている。 PSCは1982年11月に設立され、同年12月に米国テキサス州ダラスのサウスランド社(その後セブン・イレブン 社に社名変更)からフィリピンでのセブンイレブン運営ライセンスを獲得。
フィリピンでのセブンイレブン第1号店は、 1984年2月にケソン市エドサ通り沿いにオープンした。当初の出店ピッチは鈍く1996年にようやく100店体制となった。しかし、2000年の小売業界規制緩和を契機に下表のように出店ピッチが速まり2010年に500店を突破した。そして2013年年末には1,009店となり、1千店の大台を突破した。そして、2014年末には1,282店へと増加した。
2015年に入っても店舗数は順調に増加している。年初からの9カ月間で210店をオープン、12店を閉鎖した。この結果、2015年9月末の店舗数は1,480店に達し、前年同月末の1,169店から311店、率にして27%の増加となっている。直営店比率は40%、フランチャイズ店比率が60%である。また、最近は地方へも積極進出している。1,480店の地方別内訳はマニラ首都圏を含むルソン1,318店、セブを中心とするビサヤ149店、ダバオを中心とするミンダナオ13店となっている。セブでは90店を展開、業界店舗数シェアが80%超となっている。
ミンダナオに関しては、今年5月初旬、ダバオ市にミンダナオ島1号店をオープンした。ミンダナオ島では今年中に50店(ダバオ市周辺で30店、カガヤン・デ・オロ市周辺で20 店)、3年内に120店オープンを目指す。また、世界的なリゾート地であるボラカイ島にも進出、5月29日にステーション3にボラカイ1号店をオープン した。また、ボラカイ島の玄関口であるカティクランのジェッティーポートにも開店し、ボラカイ2店体制となった。3年以内にボラカイで11店オープンする予定とのことである。
店舗網の拡充とともにPSCの近年の業績は好調に推移している。PSCの最終損益は2004年の200万ペソの赤字から2014年には8億7,330万ペソの黒字へと10年間でドラスティックに改善している。
2015年9カ月間(1月~9月)のPSCの業績も堅調に推移した。全店売上高は前年同期比24.8%増の184億0,770万ペソ、商品売上高は同29.1%増の157億1,300万ペソ、営業利益は同11.8%増の7億6,090万ペソ、純利益は同10.1%増の5億1,550万ペソに達した。1株当たり純利益(EPS)は同9.8%増の1.12ペソであった。増益率が増収率より低かったのは、ミンダナオ進出など地方でのネットワーク構築コストが嵩んだことなどによる。
フィリピンのセブン・イレブン店舗数(年・月末)と純利益(単位:百万ペソ)推移推移
時期 | 06年 | 07年 | 08年 | 09年 | 10年 | 11年 | 12年 | 13年 | 14年 | 2015年3月 | 6月 | 9月 |
店舗数 | 287 | 311 | 368 | 447 | 551 | 689 | 829 | 1,009 | 1,282 | 1,341 | 1,405 | 1,480 |
純利益 | 20.1 | 54.8 | 84.3 | 155.8 | 276.9 | 356.3 | 465.2 | 682.6 | 873.3 | 112.9 | 356.5 | 515.5 |
(出所:フィリピン・セブン資料などより作成)
なお、当初計画では、今年年間で350~400店の新店をオープン予定。積極的な出店などを背景に、2015年の設備投資額は前年比50%増の30億ペソに達する見込みである。このような好調なセブンイレブンを後続コンビニが追撃しようとしているが、セブンイレブンの動きも早く、現時点では店舗数差は下表のように拡大傾向にある。ミニストップ511店の約3倍、ファミリーマート113店の約13倍となっている。
フィィリピンの主な日系コンビニ店舗数(セブン・イレブンは直接的には台湾プレジデント・チェーン・ストアの傘下)
時期 | 10年末 | 11年末 | 12年末 | 13年末 | 14年末 | 15年3月末 | 6月末 | 9月末 |
セブン・イレブン | 551 | 689 | 829 | 1,009 | 1,282 | 1,341 | 1,405 | 1,480 |
ミニストップ | 332 | 327 | 337 | 386 | 454 | 472 | 495 | 511 |
ファミリーマート | 0 | 0 | 0 | 31 | 87 | 95 | 105 | 113 |
(出所:フィリピン・セブン資料、ミニストップ資料などより作成、ミニストップとファミリーマート店舗数は日本側発表値)
店舗網や業績向上を背景に、近年のPSCの株価は目覚ましい上昇を続けている。PSCは1998年2月4日にフィリピン証券取引所(PSE)に上場され た。長い間不人気で株価も低迷していたが、2010年台以降に大幅上昇トレンドに入った。上場後の最安値は2005年6月15日に記録した0.59ペソ(その後の4回の株式配当などを調整した数値)であったが、直近(2015年11月10日)の終値は110ペソであり、10年間で200倍近くとなっている。場中の瞬間最高値は今年6月初めに記録した185ペソであり、底値から314倍となっている。成長期入りしたフィリピンのコンビニエンス・ストア業界で断トツの セブン・イレブンの実績が反映されているといえよう(15年11月10日のフィリピン証券取引所回覧06053-2015号などより)。