日本人商工会議所会員数600超に、40年間で10倍に

2015/10/15

日商ウェブサイトに羽生明央JCCIP事務局長が執筆
経済、投資、社会構造、生活環境などを概括

 

 日本商工会議所ウエブサイトの10月14日付けニュースライン最新海外事情レポートに、「フィリピン経済アウトライン(マニラ) 」という記事(http://www.jcci.or.jp/news/2015/1014163325.html)が次のように掲載されている。執筆者はフィリピン日本人商工会議所(JCCIP)の羽生明央事務局長である(以下、ほぼ原文のまま)。

 『世界経済フォーラム(WEF)が9月30日に発表した2015年版の「世界競争力報告」によると、フィリピンは140ヶ国・地域中47位で、前年の52位から5ランク上昇。近年順調に順位を上げている。東南アジア諸国の中でも、日本から飛行機で約4時間半と近く、英語が通じるフィリピンは、海外進出 先の候補地として十分に検討の余地があると言える。
 
 フィリピン日本人商工会議所の会員数は本年9月現在605で、約40年前の設立時からほぼ10倍の会員数となった。当地への進出を考えている日系企業からフィリピンの経済状況や駐在員の生活環境等の問い合わせもあることから、本稿では、まずはフィリピン経済のアウトラインをざっと見て行きたい。

1.経済成長
 フィリピンは東南アジア諸国の中でも高い成長率を維持している。2015年第2四半期(4~6月)のGDP実質成長率は前年同期比5.6%で、前年より も少し鈍化はしたが、引き続き高い成長率が見込まれている。

2.人口の特徴
 2014年に1億人を突破。平均年齢は23歳で、合計特殊出生率は3.1。平均寿命は約70歳。綺麗な人口ピラミッドを形成しており、当面高齢化しない。

3.労働者・人件費レベル
 明るい国民性、若くて勤勉、手先の器用さなど、労働者の質は東南アジア諸国内において引けをとらない。教育熱心な国情もあり、高卒以上の労働者予備軍が毎年150万人輩出される。人件費は高卒の場合は概ね最低賃金からスタート。最低賃金は各地方別に政労使の三者で決められ、原則として年1回改定される。 現在マニラ首都圏では481ペソ/日(1ペソ2.6円換算で、約1,250円/日)。
 
 JCCIPI会員企業に対するアンケート調査では、基本給と諸手当を合わせた初任給の額は、理系の専門学校卒が約13,000ペソ(平均値)、4・5年制大学卒が約17,000ペソ(平均値)、文系の専門学校卒が13,000ペソ弱(平均値)、4・5年制大学卒が約18,000ペソ(平均値)となってい る。

4.社会構造
 フィリピン世帯の約8割は、一月あたり概ね2万ペソ(1ペソ2.6円換算で、5.2万円)以下で暮らしている。よい職を得るために必要な高等教育費用の 捻出が厳しいため、低収入状況からの脱却が難しい。出生率が高く、一世帯平均6人家族とも言われている。

 国内での雇用の受け皿が少ないのと、英語を話せるということもあり、労働人口約4000万人の1/4(約1,000万人)は、海外へ出稼ぎに行っている。

5.投資環境
 フィリピンでは自国産業保護の考えが強くあり、外国投資ネガティブリストによって外国資本の参入を規制している。業種によって外国資本の出資に制限があ り、例えば小売業については1店舗当たりの投資額が83万米ドル以上で合計払込資本が250万米ドル以上などの規制がある。街中でよく見る日系企業名の小 売店やレストランは、実際にはフランチャイズ契約で地元企業が経営していたりすることが多い。

 一方、外国資本を呼び込む工夫もしており、いわゆる経済特区のPEZA(フィリピンエコノミックゾーンオーソリティ)エリアが全国に300以上展開され ている。PEZAエリアは100%独資での進出が可能で、法人税が一定期間免税(免税期間後は5%の特別法人所得税適用)、輸出入関税が免税、通常12% のVATが免税などの様々な特典を用意し、外国資本による国内労働力の吸収を図っている。

6.生活環境
 フィリピンに進出するにあたり駐在員の生活環境が気になるところだが、衣食住いずれも十分といえる。当地で日本と同じ物を手に入れようとすると日本で購 入するよりも高くなってしまうが、必要な物はほぼ入手できる。日本食レストランの選択肢も数多くあり、食に困ることはない。住居は日本人駐在員が多く住む マカティ、ボニファシオ、ロックウェルといったエリアは、治安面もほぼ問題なく快適に過ごすことができる。フィリピンは犯罪が多いというイメージがある が、日本人が被害にあっている事件は大半がマニラ市歓楽街で発生しているケースが多く、日々最低限の注意を払って生活している分には危険な目にあうことは ないといえる』(日本商工会議所ウエブサイト・ニュースラインより)。