卸売物価デフレの様相、7月は3.7%の下落
2015/10/05
9カ月連続下落、消費者物価(CPI)に先行
本日発表の9月CPI上昇率も1%以下との観測
フィリピン統計庁(PSA)によると、2015年7月の全国総合卸売物価指数(WPI、1998年=100)は226.4(速報値)で前年同月から3.7%低下、昨年11月以降9カ月連続でマイナスが続いている。
前月(3.7%低下)から横ばい、前年同月(3.4%上昇)からは大幅鈍化した。特に、鉱物燃料・潤滑油類(前年同月比-27.7%)の二桁下落が響いた。地域別では、ルソンが前年同月比4.1%下落、ビサヤ地方は同1.9%下落、ミンダナオ地方は同2.2%下落と全地域でマイナスが続いている。
7月の全国消費者物価指数(CPI)上昇率は0.8%(2006年=100)%へと鈍化したが、一応プラス圏にとどまっている。なお、当地の総合卸売物価指数(WPI)発表は、消費者物価指数(CPI)発表(翌月の5日前後)に比べ非常に遅いことに留意する必要がある(15年10月2日のフィリピン国家統計局発表より)。
フィリピンWPI上昇率の推移(1998年基準、対前年同月伸び率:単位%)
時期 | 全国 | ルソン | ビサヤ | ミンダナオ |
14年 7月 | 3.4 | 3.3 | 3.5 | 3.8 |
8月 | 3.1 | 3.0 | 3.3 | 3.0 |
9月 | 1.7 | 1.6 | 3.3 | 1.9 |
10月 | 1.0 | 0.8 | 2.8 | 1.5 |
11月 | -0.4 | -0.8 | 1.1 | 1.3 |
12月 | -4.1 | -4.8 | -1.2 | -0.8 |
15年 1月 | -6.4 | -7.2 | -3.0 | -3.0 |
2月 | -4.9 | -5.4 | -2.4 | -2.1 |
3月 | -4.7 | -5.2 | -1.9 | -3.0 |
4月 | -4.4 | -4.9 | -0.5 | -2.9 |
5月 | -4.1 | -4.8 | -0.3 | -1.8 |
6月 | -3.7 | -4.2 | -1.0 | -2.1 |
7月 | -3.7 | -4.1 | -1.9 | -2.2 |
07年平均 | 3.2 | 2.8 | 5.4 | 4.1 |
08年平均 | 11.9 | 12.9 | 7.9 | 7.4 |
09年平均 | -3.9 | -4.6 | -4.7 | 2.8 |
10年平均 | 5.9 | 6.3 | 4.0 | 4.4 |
11年平均 | 8.7 | 9.6 | 6.4 | 2.7 |
12年平均 | 1.1 | 1.2 | 0.1 | 1.7 |
13年平均 | 1.6 | 2.2 | 1.9 | 7.0 |
14年平均 | 2.7 | 2.5 | 3.2 | 4.3 |
既報のとおり、フィリピン統計庁(PSA)は9月4日、2015年7月の生産者物価指数(PPI、2000年=100)速報値を発表した。それによると、全製造業の生産者物価指数は前年同月に比べて6.4%低下、前月(6.3%低下)よりさらに鈍化した。
フィリピンの全製造業の生産者物価指数(2000年=100)推移
時期 | 15年1月 | 15年2月 | 15年3月 | 15年4月 | 15年5月 | 15年6月 | 15年7月 |
生産者物価指数 | 144.1 | 144.1 | 144.1 | 143.7 | 143.4 | 140.4 | 139.7 |
対前年同月伸び率(%) | -5.0 | -5.5 | -5.6 | -5.6 | -4.8 | -6.3 | -6.4 |
また、9月4日のPSA発表によると、2015年8月の総合消費者物価(2006 年=100)は前年同月に比べて 0.6%上昇(速報値)にとどまった。これは、1995年以降過去20年間で最も低い上昇率(インフレ率)である。本日(10月5日)発表予定の9月の総合消費者物価上昇率も1%以下であったとの観測が支配的である。
いずれにしても、原油価格の急落などを背景に、フィリピンの消費者物価上昇率は非常に低い水準で推移し、卸売物価、生産者物価は前年同月比で下落が続いている。すなわち、デフレの様相を見せている。今後、エルニーニョ現象に伴う干ばつの影響による農作物などの値上がりや、原油価格の反発などにより物価上昇率がやや高まる可能性はあるが、現時点では、歴史的な超低水準にあるといえる(PSA、NSOの発表や資料などより)。