日本、フィリピンからの実験用サルの輸入停止

2015/09/14

イナリサーチ等の施設で猿エボラ出血熱発症の疑い

 

 医薬品開発支援企業であるイナリサーチ(JASDAQスタンダード市場上場、本社:長野県伊那市)は、農林水産省より「フィリピンに所在する農林水産大臣の定める3つの出国検疫施設からのサルの輸入を停止した」との連絡を受け、改めて農林水産省及びフィリピン現地との確認を行った結果、以下のような発表を行った。

<輸入停止の経緯など>
 現在、同社のフィリピン子会社であるイナリサーチ フィリピン(INARP)のカニクイザル育成施設(他社ブリーダーより仕入れ、出荷検疫を行う施設)において、サル特有の感染症発症の疑いがあるとの結果が出たことを受け、フィリピン政府がその確認及び調査を行っている。感染症に関しては特定の病名は発表されなかったが、レストンエボラウイルス感染症と考えられる。

 フィリピン政府は、イナリサーチを含むフィリピン国内3施設のカニクイザルの全頭検査を実施すると共に当面のカニクイザルの施設間移動を禁止した。一方、日本の農林水産省においては、原因等が明確になるまで当面の間、フィリピンからのカニクイザルの輸入を停止する事を決定し、9月11日夜にその旨イナリサーチに連絡が入った。

<レストンエボラウイルス感染症>
 1989年から、カニクイザルの飼育施設や検疫施設でレストンエボラウイルス(レストンEBOV)によるエボラ出血熱様の流行が報告されてきている。レストンEBOVの名称は、1989年に米国のバージニア州のレストンのサル検疫施設で初めてウイルスが分離されたことに由来する。

 レストンEBOVは、ウイルス感染サルを介して輸入される可能性があるため、日本では承認した国の承認施設以外からのサルの輸入禁止措置がとられてきた。承認施設からのサルの輸入に際しても、輸出国での輸出前検疫と日本での輸入検疫が行われている。フィリピンの3施設からの輸入は認められてきたが、今回、その3施設からの輸入停止という措置が講じられたのである。

 イナリサーチは、「今回の輸入停止措置については、フィリピンにおける全施設の検査が終了し次第、両国の関係省庁の連携のもとに早期に事態の収束が図られるものと推測される」とコメントしている。また、イナリサーチ グループでは既に他の産地国からの調達ルートを確立しており、再生医療等特殊な用途向けの個体については、本社にて一定数の在庫を保有している」とコメントしている。

 なお、イナリサーチは、医薬品、医療器具、食品、化学品等の安全性や有効性を研究する業務を主として行っている。特長ともいえる猿試験では、1994年に実験用サルの原産国であるフィリピンに子会社INARPラグナ州)を立上げ、実験用猿(主にカニクイザル)の個体確保や供給を行ってきている(15年9月14日の株式会社イナリサーチ発表などより)。