デフレの様相、生産者・卸売物価の下落続く

2015/09/09

急鈍化の消費者物価に先立ちマイナス圏内に

 

  既報の様に、フィリピン統計庁(PSA)発表によると、2015年8月の総合消費者物価(2006年=100)は前年同月に比べて 0.6%上昇(速報値)にとどまった。これは、1995年以降過去20年間で最も低い上昇率(インフレ率)である(1995年以降のデータを2006年基準で算出)。年初8カ月間の平均インフレ率は1.7%で、2015年政府インフレ目標(2.0~4.0%)の下限以下での推移となっている。



 消費者物価上昇率(インフレ率:2006年基準の前年同月比%)

項目 15年8月 15年7月 14年8月 15年1-8月
全国    総合インフレ率 0.6 0.8 4.9 1.7
       コアインフレ率 1.6 1.9 3.4 2.2
首都圏  総合インフレ率 0.2 0.8 4.4 1.2
地方    総合インフレ率 0.8 0.8 5.0 1.8

(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 一方、2015年6月の全国総合卸売物価指数(1998年=100)は226.9(速報値)で前年同月から3.7%低下、昨年11月以降8カ月連続でマイナス成長が続いている。前月(-4.1%、改定値)に比べて0.4%ポイント上昇したが、前年同月(+4.6%)からは大きく鈍化した。卸売インフレ率低下の主要因は、鉱物燃料・潤滑油類の急激な値下がり(前年同月比-26.0%)などである。2015年上半期で平均では4.7%の低下となっている。

フィリピン卸売物価指数変化率(1998年=100、対前年同月伸び率:単位%)

時期 全国 ルソン ビサヤ ミンダナオ
14年 6月 4.9 4.8 4.6 5.6
7月 3.4 3.3 3.5 3.8
8月 3.1 3.0 3.3 3.0
9月 1.7 1.6 3.3 1.9
10月 1.0 0.8 2.8 1.5
11月 -0.4 -0.8 1.1 1.3
12月 -4.1 -4.8 -1.2 -0.8
15年 1月 -6.4 -7.2 -3.0 -3.0
2月 -4.9 -5.4 -2.4 -2.1
3月 -4.7 -5.2 -1.9 -3.0
4月 -4.4 -4.9 -0.5 -2.9
5月 -4.1 -4.8 -0.3 -1.8
6月 -3.7 -4.2 -1.0 -2.1
         
07年平均 3.2 2.8 5.4 4.1
08年平均 11.9 12.9 7.9 7.4
09年平均 -3.9 -4.6 -4.7 2.8
10年平均 5.9 6.3 4.0 4.4
11年平均 8.7 9.6 6.4 2.7
12年平均 1.1 1.2 0.1 1.7
13年平均 1.6 2.2 1.9 7.0
14年平均 2.7 2.5 3.2 4.3

(出所:比国家統計庁資料より作成、改定値あり、15年6月は速報値)

 また、フィリピン統計庁(PSA)は9月4日、2015年7月の生産者物価指数(PPI、2000年=100)速報値を発表した。それによると、全製造業の生産者物価指数は前年同月に比べて6.4%低下、前年(6.3%低下)よりさらに鈍化した。主要20品目のうち、石油製品、木・木製品)、家具・備品類3部門が二桁低下となったことが特に影響している。7カ月間平均では5.6%の低下となっている。ただし、この調査の対象企業は688社と少なく、今回の発表数値は回答率82.6%(568社)である。そのため、後日かなり大幅に改定される可能性がある。

 フィリピンの全製造業の生産者物価指数(2000年=100)推移

時期 15年1月 15年2月 15年3月 15年4月 15年5月 15年6月 15年7月
生産者物価指数 144.1 144.1 144.1 143.7 143.4 140.4 139.7
対前年同月伸び率(%) -5.0 -5.5 -5.6 -5.6 -4.8 -6.3 -6.4

(出所:フィリピン統計庁資料より作成 注:7月分は速報値)

 いずれにしても、原油価格の急落などを背景に、フィリピンの消費者物価上昇率は非常に低い水準で推移し、卸売物価、生産者物価は前年同月比で下落が続いている。すなわち、デフレの様相を見せている。今後、エルニーニョ現象に伴う干ばつの影響による農作物などの値上がりや、原油価格の反発などにより物価上昇率がやや高まる可能性はあるが、現時点では、歴史的な超低インフレ状況にあるといえる(PSA、NSOの発表や資料などより)。