336億円のフィリピン向け円借款、25日に調印

2015/08/25

ダバオ市の物流改善と首都圏橋梁の耐震化支援

 

 国際協力機構(JICA)は、8月25日、フィリピン・マニラにて比政府との間で、総額336億890万円(計2件)を限度とする円借款貸付契約に調印した。

 フィリピンは世界で最も自然災害の多い国の一つであり、なかでも環太平洋火山帯に位置する地理的特性により、大規模地震の被害の多い国である。そのため、将来起こり得る大規模地震への対策として、特に経済活動の中心であるマニラ首都圏において、交通・運輸ネットワークの耐震機能強化を含む減災対策が喫緊の課題となっている。

 また、ミンダナオ島は南西部で長年続いた内戦の影響等により国内の他地域と比較して経済発展が遅れていたが、2014年3月のフィリピン政府及びモロ・イスラム解放戦線(MILF)間のバンサモロ包括和平合意文書の署名を受け、農水産業や鉱物産業等を中心とする本格的な経済成長への期待が高まりつつある。その中で、効率的な物流の実現に向けた道路整備が重要課題となっている。

 このような状況を踏まえて今回借款契約を調印した2件の円借款事業の特徴は、以下の通りである。

(1)「マニラ首都圏主要橋梁耐震補強事業」(借款額:97億8,300万円)
-マニラ首都圏の主要2橋梁の耐震性向上を支援-

 マニラ首都圏は、人口が1990年時点の795万人から2013年には約1.5倍の1,254万人に急速に増加し、国土の0.2%を占めるエリアに人口の13%、GDPの37%が集中する経済活動の最大拠点となっている。一方で、マニラ首都圏の交通・物流の要となっている多くの橋梁は、その物理的状況のみならず、位置する地域の地震強度や地質工学的要因から、耐震補強や架替が必要な状況となっている。

 この事業は、マニラ首都圏の幹線道路上の主要な橋梁のうち、交通量の多い重要路線に位置している等、優先度が高いと判断されたガダルペ橋およびランビンガン橋について、耐震性向上のための架替・補強を行うことで、マニラ首都圏の交通・運輸・ネットワークの強靭性、及び大都市での災害発生時における都市機能維持能力の強化を図り、マニラ首都圏における安定的且つ持続的な経済活動の活性化に寄与することを目的としている。

 JICAは、2013年に開発計画調査型技術協力「大規模地震被害緩和のための橋梁改善調査プロジェクト」を通じ、橋梁耐震設計基準の改訂案の策定を支援しており、本事業では同改訂基準案を基に、橋梁の架替及び補強が実施される予定である。

 なお、今次貸付契約が調印された円借款事業には本邦技術活用条件(STEP)が適用され、耐震補強に関する技術を始め、工事期間中の交通制限を最小化するための近接施工、急速施工等の日本の技術の活用が期待される。

(2)「ダバオ市バイパス建設事業(南・中央区間)」(借款額:239億0,600万円)
-ミンダナオ島ササ港等港湾部や同市中心部へのアクセス強化を支援-

 ダバオ市は、主要輸出港であるササ港等からミンダナオ島の主要輸出品目である農産物やダバオ市周辺の日系企業の生産する農産物及び工業製品が輸出されており、島外へのゲートウェイの機能を有し、ミンダナオ島の経済成長の牽引役として、今後重要性を増すことが見込まれている。しかしながら、ダバオ市中心部は、人口過密化に伴う交通渋滞が深刻化しており、トラックの通行規制等の影響もあり、輸送コストを押し上げる一因となっている。

 この事業は、ダバオ市南端部と同市中心部を結ぶバイパス道路の建設及び既存道路の舗装改良を通じて、ササ港等港湾部や同市中心部へのアクセスを強化し、同市を核とするミンダナオ島最大級の経済圏内の物流改善と交通渋滞の改善を図り、もってミンダナオ島の経済発展に寄与することを目的としている。

  なお、今会貸付契約が調印された円借款事業は本邦技術活用条件(STEP)が適用され、トンネル区間建設に係る掘削技術等の日本の技術の活用が期待される。2件とも、日本タイドで償還期間40年(据置10年間)、年利は本体0.10%、コンサルティング・サービス0.01%となっている、

 JICAは、今後とも、円借款、技術協力、無償資金協力等の多様なODAスキームを一体的に運用しながら、質の高いインフラ整備などを通じ、フィリピンの抱える諸課題の解決に向け、包括的に取り組んでいく方針である(15年8月25日の国際協力機構プレスリリースなどより)。