東ソー、比マブハイ・ビニールを子会社化へ

2015/07/26

BDO保有株を追加取得、公開買い付け実施
09年起源の買収案件が6年後に実現見込

 

フィリピンの有力ソーダ製品製造・販売会社企業であるマブハイ・ビニ―ル・コーポレーション(マブハイ社、フィリピン証券取引所上場=PSE、本社:マニラ首都圏マカティ市)は、7月23日に、「マブハイ社の主要株主である東ソーが、BDOユニバンクから、BDO保有のマブハイ社株式2億3,457株(35.47%相当)を追加取得することで合意した」と発表した。


 2015年3月末時点で、東ソーはマブハイ社株式を約39.92%を保有している。上記のBDOからの追加取得が完了するとその保有比率は75%以上に達する。東ソーは証券取引委員会(SEC)規則に従い、マブハイ社の少数株主(東ソーとBDO以外の株主)に対する公開買い付け(TOB)を実施することになる。

 マブハイ社は1934年にマブハイラバー社として設立され、1960年に化学品、PVC製品事業開始を決定した。1965年から苛性ソーダ年産4千トンの生産能力で生産・販売を開始した。その後、フィリピンにおける苛性ソーダの需要拡大に伴い、生産増強を行っており、フィリピン唯一の電解メーカーとして、その地位をより確固たるものとしてきたという経緯がある。

 マブハイ社の2014年年間の売上高は前年比3.3%増の14億5,184万ペソ、純利益は同8.4%増の7,903万ペソであった。2015年第1四半期(1月~3月)の売上高は前年同期比10.5%増の3億6,502万ペソ、純利益は同95.5%増の1,499万ペソと続伸基調となっている。

 東ソーは、80%出資のフィリピン・レジンズ・インダストリーズ(1994年設立、塩化ビニール樹脂等の製造・販売)、74.5%出資のトーソー・ポリビン(1998年設立、塩ビコンパウンド等の製造・販売)などの拠点を有しているが、フィリピンでの拠点拡充の一環として、2000年にマブハイ社に資本参加した。現在、マブハイ社の取締役11名のうち2名を占めている。

 三菱商事もマブハイ社に資本参加(2015年3月末で約6%を保有)するとともに、原料の塩類を供給している。2015年3月末の東ソーと三菱商事合計のマブハイ保有比率は約45.92%である。

 なお、東ソーは2009年10月に、マブハイ社(当時出資比率;東ソー33.77%、BDO34.08%、三菱商事5.76%など)について、筆頭株主であるBDOから全株式及びその他の株主から株式公開買い付け(TOB)方式による株式の買取を決定した。このマブハイ社株式TOB応募期間は09年12月23日までであった。東ソーはこのTOBにおいて、最大32.15%のマブハイ社株式を取得する意向であった。当時のBDO保有分34.08%とTOB応募分を合わせると東ソーのマブハイ社への出資比率は最大94.24%に高まり、マブハイ社は東ソー子会社となるはずであった。そして、東ソーが三菱商事と共にマブハイ社の経営を行うことになるとも発表された。

 しかし、地元企業のメトロ・アライアンス・ホールディングス(MAHEC)が、BDO保有のマブハイ社株式の議決権などはMAHECに帰属すると主張、マカティ地裁に提訴するに至った。これを受けて、東ソーは、BDOとMAHEC間のマブハイ社株式所有権争議が解決されクレームがなくなるまで、BDO保有のマブハイ社株式取得を一時停止することを決定した。そして、マブハイ社子会社が現時点まで先送りされたかたちとなってきた。

 7月23日の発表では、2009年以降のMAHECの動きなどに関する詳細は発表されなかったが、BDOからのマブハイ社株式追加取得合意と改めて発表されたことは、2009年起源のマブハイ社子会社化構想が実現しつつあるようだ(15年7月24日のフィリピン証券取引所回覧04075-2015号などより)。