三菱UFJ、政府系銀行UCPB取得に関心との報道

2015/06/19

外資規制撤廃でM&A活発化、みずほも買収の動き

 

 昨年のフィリピン銀行業界における外資規制撤廃法成立により、60%という出資比率上限や10行までという外資系金融機関数制限がなくなり、外資100%出資銀行設立や現地銀行の100%買収も可能となった。

 このような状況下で、日系を含む外国銀行が買収、新規参入の動きを見せつつある。まず、これまで駐在員事務所開設にとどまっていた三井住友銀行が、マニラ支店開設申請を行い、中央銀行から今年2月13日に予備認可を取得するに至った。

 また、みずほフィナンシャルグループが、サンミゲル傘下の商業銀行バンク・オブ・コマース(BOC)への60%程度までの出資を検討、交渉を行っていると報じられている。みずほ銀行はこの件に関して正式にはコメントしていないが、昨年のフィリピン銀行業界における外資規制撤廃などの流れの中で、 ASEANの中でも成長力の高いフィリピンにおいて業界再編成の動きが活発化する可能性がある。

 一方、みずほ銀行と同様に既にフィリピンでフルバンキング支店を開設している三菱東京UFJ銀行も、更なるビジネス機会拡大のため、フィリピンにおいて買収・資本参加の可能性を探るとも報じられている。そして、現在進行しつつあるフィリピン政府系の商業銀行ユナイテッド・ココナツ・プランターズ・バンク(UCPB)の民営化を巡り、国内外の金融機関12社ほどが買収に名乗りを上げているなかに、三菱UFJフィナンシャル・グループが含まれているとのことでもある。

 UCPBの資産規模は国内銀行で9位、支店数は230店でほぼ半数がマニラ首都圏に立地しているとのことである。現在、UCPB株式の73.9%が政府によって保有されている。UCPB買収の条件は、73.9%の株式取得と150億ペソ以上の新たな資金投入とのこととのことである。

 三菱UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)やその傘下の三菱東京UFJ銀行は、フィリピンを有望視、重要視している。三菱東京UFJ銀行はこれまで、フィリピ ンへの投資・進出日系企業への支援体制を強してきている。同行のフィリピンへの投資・進出企業支援には、以下のような長い歴史がある。
・1953年10月: 旧東京銀行が駐在員事務所を開設
・1977年11月:オフショア業務を主体とする支店開設
・1995年04月: フルバンキング゙業務開始

  フィリピンでは、1994年に外国銀行自由化法が成立し、1948年以来46年ぶりに新規の外国銀行の参入が認められた。この際に支店開設が認可された邦銀は、同行とみずほ銀行のみであり、それ以降、新たな外銀の支店開設は認められていなかった。

 最近のフィリピンは、英語を話す優秀かつ若い人材確保、中国やベトナムなどに比し緩やかな人件費の上昇、特に輸出企業にとって魅力的な投資優遇措置などの観点から、改めて生産基地・輸出加工基地として見直されるとともに、インドネシアに次ぐアセアンで第二の人口規模を誇ることから、内需マーケットとして も注目度が高まっている。

 また、アキノ大統領のもと、政治的な安定がもたらされ、経済面では長年の懸案である財政赤字の大幅な削減に向けた積極的な取り組みが奏功しつつある。世界の三大格付機関によるフィリピンのソブリン格付の投資適格以上への引き上げなど、フィリピンへの投資環境は急ピッチで改善傾向にある。

 三菱東京UFJ 銀行が2013年12月に、タイのアユタヤ銀行を約 1,706億バーツ(約5,360億円相当)で買収したが、フィリピンでも大型買収が実現する可能性がある。