日本、フィリピンの公共施設無料Wi-Fi基盤整備支援

2015/05/08

情報通信研究機構がホワイトスペース利用技術提供

 

 国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)は、このほど、フィリピン科学技術省情報通信技術局(ICTO)との間でTV放送帯ホワイトスペースの有効利用に必要な周波数管理技術を提供するための契約を締結した。

 ウィキペディアによると、ホワイトスペースとは、特定の電波利用サービスを目的に特定周波数帯の利用免許が与えられているにもかかわらず、チャンネル間の有害な混信を防ぐために設けられた、能動的に使用されていない周波数領域である。世界的な無線通信の利用増加に伴う帯域の不足から、帯域の有効利用が着目されてきている。

 ICTOは、今後、フィリピンの公共施設全域にWi-Fiによる無料インターネット接続のためのインフラを展開するFree Wi-Fi Projectを推進し、その際に、ICTOはNICTが開発したTV放送帯ホワイトスペース技術を利用する予定である。NICTは、ICTOとTVホワ イトスペース技術の提供に関する覚書を今年3月に締結した。

 ICTOでは、フィリピン全域の公共スペース等において、無料のWi-Fiインターネット接続を提供するインフラ整備を計画している。ICTOは、Free Wi-Fi Projectに活用できる技術の一つとしてTV放送帯のホワイトスペースに注目し、特にインターネット接続を十分に提供できていない地域への利用可能性について検討している。

 ホワイトスペースの利用に当たっては、TV放送に干渉を与えないように慎重な運用が必要とされるが、そのためには各地点において利用可能な周波数を分析するホワイトスペースデータベース(データベース)と呼ぶ管理装置が必要になります。
 
 一方で、NICTは、データベースをTVホワイトスペース利用に必要な技術の一つと位置付け、その技術的評価を行う目的で、米国や英国を含む世界各国の基準を満たすデータベースの開発を行い、実証試験を重ねてきた。NICTは、ICTOからの要請に基づき、このFree Wi-Fi ProjectにおいてTVホワイトスペースを利用するために必要なデータベース技術を提供することを目指し、覚書を締結して協議を重ねてきた。

 そして、NICTとICTOは、こNICTが開発したホワイトスペースデータベースをICTOが利用するためのライセンス契約を締結した。このデータベースには、ICTOが提供するフィリピンのすべてのTV放送送信所の情報が入力されており、地形情報に基づき放送エリアを計算し、指定した地点において 通信に利用が可能なチャネルの一覧を作成することができる。
 
 将来的には、TVホワイトスペースを利用する通信システムが位置情報をデータベースに送信し、運用可能なチャネルをデータベースから通信システムに自動的に送信して、通信システムを継続運用するという利用形態が期待できる。
 
 なお、フィリピンでは、今年2月から地上デジタル方式(ISDB-T)によるデジタルTV放送サービスが開始されている。このため、このデータベースで は、日本において利用されている放送エリアの計算方式(ISDB-T対応)を採用している。

 今後NICTは、ICTOとの覚書に基づき、Free Wi-Fi Projectの推進に必要な技術協力を引き続き行っていく。
TVホワイトスペースの利用については、各国の状況を踏まえて慎重に運用することが必要であり、NICTは今後、様々な状況に応じて柔軟に応用できるようTVホワイトスペース技術の研究開発を更に進めていく。
 
 なお、2015年5月6日(水)~8日(金)にマニラで開催のGlobal Summit 2015(Dynamic Spectrum Alliance主催)において、ICTOがホワイトスペースデータベースをデモ出展中である(詳細: http://www.dynamicspectrumalliance.org/summit.html)。
(15年5月7日の国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)ニュースリリースなどより)。