大手宅配便企業LBCエクスプレス、裏口上場の動き

2015/04/26

ほぼ休眠状態の上場企業フェデラル・リソース買収へ
通常の新規上場は不活発、27日にようやく今年第1号

 フィリピン証券取引所(PSE)上場のフェデラル・リソース・インベストメントグループ(FED)は、4月23日開催の取締役会において、LBCデベロップメント(LBCD)に対し、新株約5,910万株を発行することを決議した。1株当たり発行価格は1ペソとなる。


 FEDの現在の発行株式数は約4,090万株であり、上記の新株発行が実現すると、LBCDはFED株式59.1%を保有する筆頭株主となる。すなわち、LBCDがFEDを実質的に買収することになる。

 アラネタ・ファミリー傘下のLBCDは、フィリピンの大手宅配便業者であるLBCエクスプレス社(LBC社)の親会社である。LBC社は1950年代に航空貨物代理店として設立。その後、フィリピン国内において現金および一般貨物の輸送を開始し、現在ではフィリピン国内最大規模の700以上の拠点とアメリカ・カナダを中心に60以上の拠点を有する最大級の宅配便企業となっている。LBCDとLBCはともに非上場企業である。

 一方、FEDは1993年にフェデラル・ケミカルとして設立され、粘着テープや封止材などの製造販売を開始、2001年12月21日にPSEに上場された。そして、2007年9月に、事業の主目的を製造から持株会社へと変更するとともに、社名を現行のフェデラル・リソース・インベストメントグループ(FED)へと変更した。

 その後FEDは様々な経緯を辿ってきたが、最近の財務諸表等で見る限り、ほぼ休眠(ペーパー・カンパニー)に近い状態に陥っている。2014年末の従業員数は4名のみ。そして、2013年の収入は僅か17ペソで損失額が424万ペソ、2014年の収入は約15万ペソで損失が約1540万ペソとなっている。2014年末の総資産が約280万ペソ、負債が約192万ペソ、資本金が約88万ペソ、累積損失が約1億1,110万ペソと、上場企業とは思えない財務状況である。

 今後考えられる動きは、LBCDがFEDを買収した後に、FEDとLBCが合併、休眠に近いが上場ステータスを有するFEDを存続会社とすることなどである。こうすれば、非上場ではあるがフィリピン最大級の宅配便企業であるLBC社が、通常の新規上場手続きを経ないで一気に上場企業となる。すなわち、PSEへ裏口上場(バックドア・リスティング)されることになる。

 かつて、PSEには実体に乏しいペーパーカンパニー的な企業が、鉱業セクター中心にかなり上場されていた。当地では、かつて資源開発支援のために、鉱山・石油探索企業を非常に甘い条件かつ低株価で上場させていた時期がある。その名残りで、実際の産出高ゼロかほぼゼロ、1株当たり額面0.01ペソなどという企業がそこそこ残されていた。そのような実体に乏しい上場企業を利用した有力非上場企業の裏口上場が活発に行われてきた。

 裏口上場された主な企業としては、PALホールディングス(フィリピン航空持株会社)、センチュリー・プロパティ―ズ・グループ(不動産)、ブルームベリー・インベストメント(カジノ・リゾート「ソレア」保有・運営企業)、STIエドゥケーション(教育関連企業)、エンペラドール(洋酒企業)、マッケイ・ホールディングス(飲料関連持株会社)、グローバル・フェロニッケル(鉱業)などが挙げられる。大型持株会社LTグループやコスコ・キャピタル、レストラン・チェーンのMax'sグループも実質的な裏口上場と見られている。

 このように、PSEでは裏口上場の動きが活発な一方、通常の新規上場の動きは鈍い。近年の新規上場社数は年間一桁台にとどまっている。2015年についても、4月27日に予定されているクラウン・アジア・ケミカルズ(CROWN)の新規上場が第1号案件(詳細は別掲)と遅々とした動きとなっている。裏口上場は既存上場企業の中身が変わるだけで上場企業数の増加にはつながらない。上場企業数が非常に少ないPSEにおいては、通常の新規上場も活発化し上場企業数の増加につながることが望まれている(15年4月24日のフィリピン証券取引所回覧02079-2015号などより)。