サンミゲル、14年のコア純利益3.4倍の279億ペソ

2015/03/29

営業利益1%増の558億ペソ、報告純利益は45%減少
キリン出資のSMB5%増収、純利益8%増の135億ペソ

 

フィリピンを代表するコングロマリットとなったサンミゲル(SMC)が、3月27日に、2014年(1月~12月)の決算速報を発表した。



 SMCの2014年の純収入は前年比5%増の7,824億ペソに達した。営業利益は同1%増の558億ペソ、EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は同14%増の881億ペソであった。そして、報告純利益は同45%減の281億ペソへと大幅減少した。ただし、前年の純利益507億ペソには、マニラ電力(メラルコ)株式約27%の売却益(400億ペソ超)が含まれている。このような一時的損益を除いた2014年の経常的純利益(コア純利益)は同244%増(約3.4倍)の279億ペソへと急増した。すなわち、実質3.4倍増益決算であったといえる。もっとも、2013年のコア純利益が低水準であったともいえる。

 キリン・ホールディングス(キリン)が出資するサンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)の販売数量は同2%増の2億0,730万ケースに達した。販売価格が上昇したこともあって売上高は同5%増の790億ペソとなった。増収効果やコスト節減などにより営業利益は同2%増の221億ペソ、純利益は同8%増の135億ペソと堅調な決算となった。

 ヒネブラ・サンミゲルが展開する洋酒部門の販売数量は同4%増の2,210万ケースとなった。販売価格上昇などで売上高は同8%増の155億ペソ、営業損益は3億5,800万ペソの黒字に転換した(前年は7億9,300万ペソの赤字)。

 サンミゲル・ピュアフーズによる食品部門の売上高は同3%増の1,030億ペソと1千億ペソの大台を突破した。営業利益は同17%増の65億ペソに達した。一 方、パッケージ部門(サンミゲル山村パッケージング)の売上高は同4%減の242億ペソにとどまったが、紙器事業、PET事業、輸出の改善などで営業利益は同11%増の23億ペソへと回復した。

 多角化事業である電力関連事業の発電量は同5%増の1万7,000ギガワット時(Gwh)、純収入は同14%増の843億ペソ、営業利益は同26%増の259億ペソに達した。サンミゲルの発電事業は、2010年第3四半期から持ち株会社SMCグローバル・パワー・ホールディングス のもとに集約されている。現在リマイ発電所(150MW×2)やマリタ発電所(150MW×2)を建設中である。

 石油製品部門(国内最大の石油元売り企業であるペトロン)の販売数量は同6%増の8,650万バレル、売上高は同4%増の4,825億ペソに達した。しかし、営業利益は同35%減の76億ペソ、純利益は同41%減の30億ペソへと二桁減少した。これは、原油市況急落に伴う年後半にかけての石油製品販売価格急落によるものである。高値で仕入れた在庫損失が65億ペソ発生したことで大幅減益決算となった。。

 足許の業績は市況変動に大きく左右されているが、中期的には推進中の精製能力増強や効率化、石油化学事業拡充による高付加価値化、買収したエッソのマ ーシア石油川下事業のさらなる戦力化などにより、業績は上昇基調を辿ると見込んでいる。

 多角化部門に関しては、ぺトロンによるエッソ・モービル・マレーシア石油川下事業買収(総額5億7,730万米ドル)効果が顕在化しつつあるうえ、カティクランのボラカイ空港拡張工事進展、タ―ラック~ラ・ウニオン高速道路の一部開通、スカイウエイ第3期事業(ルソン南北高速道路連結)建設、ニノイ・アキノ国際空港高速道路プロジェクト・フェーズⅡ建設本格化など拍車がかかっている。

 更なる多角化、事業基盤拡大の過程で有利子負債が膨張し、2014年末時点で前年末比7%増の4,830億ペソに達していることを先行きの懸念材料とする見方もある。しかし、現金残高も2,590億ペソと高水準で、業容は急ピッチで拡大を続けている。また、負債対自己資本比率は2.12倍、有利子負債対自己資本比率は1.24倍、純負債対EBITDA比率は2.36倍という水準である(15年3月27日のフィリピン証券取引所回覧01487-2015号などより)。