長大と栗本鐵工所、ミンダナオ水道事業に参画

2015/03/24

長大が出資、栗本鐵工所が導水管納入
JICAのツーステップローン活用決定

 


 総合建設コンサルタントの長大(本社:東京都中央区)は、フィリピンの特別目的会社「タギボ・アクアテック・ソリューションズ」(TAS)の大株主であるエクイパルコ社から5%の株式譲渡を受けることで最終合意、3月20日に同社と出資契約を締結した。

 

 TASは、フィリピンはミンダナオ島北東部のブトゥアン市の水事業(上水供給事業)の運営主体となる特別目的会社で、既にブトゥアン市水道公社へ水を一括(バルク)供給するコンセッション契約を締結している。長大は、TASへの出資を通じて、この水事業に参入することで合意、昨年10月14日にTASの全株主との間で覚書を締結、今回の契約締結に至った。長大にとっては、この事業が国内外を通じて、初めての水事業への参入となる。

 3月20日に、ブトゥアン市で執り行われたこの契約の調印式には、長大の井戸昭典・取締役常務執行役員事業推進本部長が出席、エクイパルコ社のロニー・ラグナダCOOと契約書に署名した。 また調印式には、TASの株主であるツインピーク社の高野元秀社長のほか、栗本鐵工所から、松村 信・化成品事業部 事業開発部 事業開発二課課長と、川島 康弘・鉄管事業部 海外部営業課が参列、高野社長、松村課長が立会人として契約に署名を行った。

 栗本鐵工所は、この水事業において導水管を納入すべく協議を重ねて、TASと合意、長大の調印式に先立ち、TASとの間で導水管の契約調印式を行った。長大は、日系企業の参画という目的から、栗本鐵工所の本取引実現に向けて、関係者間の調整・協議等をサポートしてきた。栗本鐵工所では、既に来月の現地納入に向けて、既に製造段階に入っている

 この水事業は、人口増加や井戸水の使用規制等によって増加が続く水需要に応えるために、厳しい財政状況にあるブトゥアン市水道公社に代わって、TASが新規の設備投資と維持管理を担い、2015年から25年の長期にわたって事業運営を行い初期投資の回収と収益をあげる官民連携(PPP)事業である。尚、同水道公社から住民らへの配水や料金徴収事業は、TASの業務に含まれておらず、引き続き同水道公社が行うこととなっている。

 また、この水事業は、独立行政法人国際協力機構(JICA)のツーステップローン(EDP)の活用が決定している。今後、フィリピン開発銀行(DBP)との間で融資契約を締結、JICAツーステップローンの融資が実行される予定である。さらには、JICAのツーステップローンの活用決定を受けて、設備拡充に伴うパイプとバルブの調達を、日系メーカーから行うべくTAS内で検討・協議を進めていた。

 現在エクイパルコ社及びツインピーク社では、ミンダナオ島において、この水事業と同様の上水供給事業のコンセッション獲得に向けてプレFS調査を進めている。今後も長大は、エクイパルコ社及びツインピーク社と共同で、水事業での更なる展開を図っていくこととしている。

 この水事業でも、長大が進めるアシガ小水力発電事業と同様、長大の出資のほか、JICAのツーステップローンの活用、栗本鐵工所の製品納入により、日本政府が推進する「インフラ・システム輸出」に沿うものに近づいてきた。 長大は、日本や日本企業とのパイプ役として、引き続き日本企業の参画を増やしつつ、ミンダナオ島の経済発展に貢献して行く方針である。

 なお長大は、ミンダナオ島最大のゼネコンであるエクイパルコ社、ツインピーク社、ハイドロリソース社の現地企業3社と共に、ミンダナオ島北東部で3つの少水力発電事業「アシガ川小水力発電事業」、「タギボ川小水力発電事業」、「ワワ川小水力発電事業」の開発を進めている。また、エクイパルコ社らと、ミンダナオ島北アグサン州ブトゥアン市において、農林水産・食品加工分野に特化した工業団地の開発(以)に共同で取り組んでいくことについて既に合意、2013年3月に覚書を締結している。この事業は現在、既に施工(設備拡充)のステージにあり、年内に運営を開始する予定である。

 長大は、今回の水事業への参画を通じて、小水力発電事業に加えて、工業団地開発事業をサポートする電力と水のインフラ供給に関与することとなる。このほか、日本の技術の導入を図り、現地への技術移転も進めながら、エクイパルコ社が主導でブトゥアン市周辺において進めている、稲作や精米事業、鰻や海老の養殖、飼料製造事業といった農業系のプロジェクトにも関与している。

 まず電力と水の安定供給を図り、次に農林水産の豊富な資源を生かした一次産品の安定供給体制を整備。優秀で廉価な労働力もセールスポイントとして、計画中の工業団地に日本の製造加工業を誘致し、原産品に付加価値を付けて輸出する構想である。サプライチェーンやビジネスプロセスをなるべく現地に留めることで、雇用創出を実現し、地域開発にもつながるビジネスモデルを構築、現地の経済発展に貢献することを最終目的としている(15年3月24日の株式会社長大ニュースリリースより)。