14年の経常収支も黒字、11%増の126.5億ドルに

2015/03/22

対GDP比4.4%、OFW送金効果で12年連続の黒字
フィリピン経済の強み、株高・ペソ堅調の背景に
金融収支悪化で総合収支10年ぶりの赤字転落

 

 フィリピン中央銀行(BSP)は3月20日、2014年第4四半期(14年12月末)及び通年の国際総合収支(BOP)を発表した。

 フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金により、経常収支は黒字というパターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、景気の押し上げ要因となっている。また、フィリピン格付引き上げラッシュの大きな要素ともなってきた。

 [2014年第4四半期]
 当期の経常収支の黒字額は前年同期比43.1%増の47億0,100万米ドルに拡大した。経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は5.0%、5.9%で、 ともに前年同期の3.7%、4.4%を上回った。海外フィリピン人就労者(OFW)送金など第二次所得収支の堅調な成長とモノ貿易収支赤字削減の相乗効果が経常収支の黒字を継続させた。 OFWの送金は4.8%増の73億6,600万米ドルであった。

 一方、国際収支(BOP)は5億7,400万米ドルの黒字となったが、前年同期の12億6,000万米ドルの黒字に比べ54.5%減と大幅に縮小した。 対GNI比、対GDP比は0.6%、0.7%で、ともに前年同期の1.4%、1.7%を下回った。新統計表示ではマイナス勘定となる金融収支が2.3倍増の44億8,000万米ドルと膨らんだこと(旧統計方式では金融収支が大幅悪化、以下同様)が響いた。



第4四半期の国際総合収支(単位:百万米ドル)

項目 2014年 2013年 伸び率(%)
経常収支 4701 3286 43.1
資本移転等収支  28 32 -13.7
金融収支(マイナス勘定) 4480 1968 127.6
誤差脱漏 325 -90  463.0
国際総合収支 574 1260 -54.5

(注:2014年は速報値、2013年は改定値)

 [2014年年間]
 年間累計の経常収支の黒字額は前年比11.1%増の126億5,000万米ドルに拡大。サービス貿易収支の黒字減少で圧迫された。経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は3.7%、4.4%、 ともに前年の3.5%、4.2%を上回った。OFWの送金は6.3%増の269億6,800万米ドルであった。 

 一方、国際収支は、28億5,800万米ドルの赤字に転落(前年:50億8,500万米ドルの黒字)。マイナス勘定となる金融収支が100億8,400万米ドルと前年から4.5倍増に膨らんだこと、サービス貿易収支の黒字が縮小したことが響いた。


 年間の国際総合収支(単位:百万米ドル)

項目 2014年 2013年 伸び率(%)
経常収支  12650  11384  11.1
資本移転等収支  101 134  -24.1
金融収支(マイナス勘定) 10084  2230 352.2
誤差脱漏 -5525  -4202  -31.5
国際総合収支  -2858 5085  -156.2

(注:2014年は速報値、2013年は改定値)


 2014年12月末現在の外貨準備高(GIR)は795億米ドルで、2013年12月末の832億米ドルを4.4%下回った。GIR796億米ドルは輸入の10.4カ月分に相当する水準。また、原本ベース短期対外負債の約4.9倍、残存ベース短期対外負債の4倍に相当する水準である。

 [国際総合収支発表について]
 中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。

 ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、3月19日に発表された2015年2月及び年初2カ月間の速報値。それによると、2月は9億8,500万米ドルの黒字、年初2カ月間は11億2,100万米ドルの黒字であっ た。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期ベースである。


国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル)

項目 第4四半期 1~12月
14年 13年 伸び率(%) 14年 13年 伸び率(%)
貿易・サービス・第一次所得収支 -1570 -2791 43.7 -9906 -9690 -2.2
  貿易・サービス収支 -2086 -3093 32.6 -10977 -10647 -3.1
     貿易収支 -3711 -4847 23.4 -15851 -17662 10.3
       対GNI比(%) -3.9 -5.5 - -4.6 -5.4 -
       対GDP比(%) -4.6 -6.5 - -5.6 -6.5 -
         輸出 11340 11203 1.2 47758 44512 7.3
         輸入 15051 16051 -6.2 63609 62174 2.3
      サービス収支 1625 1754 -7.3 4874 7015 -30.5
  第一次所得収支 516 303 70.5 1071 957 11.9
第二次所得収支 6271 6077 3.2 22556 21073 7.0
経常収支 4701 3286 43.1 12650 11384 11.1
   対GNI比(%) 5.0 3.7 - 3.7 3.5 -
   対GDP比(%) 5.9 4.4 - 4.4 4.2 -
資本移転等収支   28 32 -13.7 101 134 -24.1
 
金融収支(マイナス勘定)   4480 1968 127.6 10084 2230 352.2
  直接投資 977 471 107.5 789 -90 973.1
  証券投資 1202 1118 7.5 2460 -1001 345.7
  金融派生商品 -31 -47 32.6 -48 -88 45.8
  その他投資 2332 426 448.0 6883 3410 101.9
 
誤差脱漏 325 -90 463.0 -5525 -4202 -31.5
 
国際総合収支 574 1260 -54.5 -2858 5085 -156.2
 対GNI比(%) 0.6 1.4 - -0.8 1.6 -
 対GDP比(%) 0.7 1.7 - -1.0 1.9 -
 
OFW送金額合計 7366 7028 4.8 26968 25369 6.3
 うち銀行経由分 6666 6347 5.0 24348 22984 5.9

(出所:BSP資料より作成、注:14年は全て速報値)


 [対外収支の長期的な動き]
 国際総合収支は2005年以降黒字が定着。貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するというパターンであったが、10年ぶりに赤字に転落した。金融収支の黒字拡大(=対外投資の急増)が響いた。一方、経常収支は2003年から12年連続の黒字となっている。長期的かつ継続的な統計が入手不可能であるが、手許数値比較では2014年の経常収支黒字は史上最高水準となっている(15年3月20日のフィリピン中央銀行発表などより)。
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フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)

04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年
貿易・サービス収支 -7461 -9113 -6595 -6142 -11725 -6728 -8231 -11492 -12747 -10647 -10977
 対GNI比 -6.6% -7.0% -4.3% -3.3% -5.3% -3.0% -3.1% -3.9% -4.3% -3.3% -3.2%
 対GDP比 -8.2% -8.8% -5.4% -4.1% -6.8% -4.0% -4.1% -5.1% -5.3% -3.9% -3.9%
経常収支 1625 1980 5341 7112 3627 9358 8922 7125 6949 11384 12650
 対GNI比 1.4% 1.5% 3.5% 3.8% 1.7% 4.2% 3.4% 2.4% 2.3% 3.5% 3.7%
 対GDP比 1.8% 1.9% 4.4% 4.8% 2.1% 5.6% 4.5% 3.2% 2.8% 4.2% 4.4%
国際総合収支 -280 2410 3769 8557 89 6421 14308 11400 9236 5085 -2858
 対GNI比 -0.2% 1.9% 2.5% 4.6% 0.0% 2.9% 5.4% 3.8% 3.1% 1.6% -0.8%
 対GDP比 -0.3% 2.3% 3.1% 5.7% 0.1% 3.8% 7.2% 5.1% 3.7% 1.9% -1.0%

(出所:中央銀行資料より作成、注: 2014年は速報値、2013年は改定値)