フィリピン、南シナ海係争地域での資源開発を停止

2015/03/04

国際仲裁配慮、フィレックスが天然ガス探査棚上げ

 

 フィリピンの有力鉱山フィレックス・マイニング傘下のフィレックス石油(PXP)が60.49%を保有する英国資源探査・開発企業である フォーラム・エナジー(フォーラム)の2012年の調査結果によると、南シナ海パラワン島西方沖のサービス コントラクト(SC)72鉱区(リード環礁{フィリピン名;レクト環礁}サンパギータ・ガス田)の天然ガス埋蔵量は莫大である。

 2012年4月に発表されたSC72鉱区の天然ガス埋蔵量調査結果によると、同鉱区での天然ガス埋蔵量は最低でも4兆6,660億立法フィートであり、強気な見積もりでは16兆6,120億立法フィートに達するとのことであり、それまでの見込みを大幅に上回った。

  ただし、この環礁地域は中国との領土権問題で揺れている地域である。この鉱区開発参加権を有するフィレックス・マイニングのパンギリナン会長は、2012 年11月に、政治問題を棚上げし、中国国営企業である中国海洋石油総公司(CNOOC) に対して共同開発することを提案した。

 しかし、この共同提案の前進は見られず、昨年4月にはパンギリナン会長が「両社は交渉を中断した。対話は途絶え交渉再開の目途や計画はない」と表明、中国との共同開発構想は事実上消滅した。そして、フォーラム単独での探査を開始する意向を表明、探査活動を行いつつあった。

 しかし、フィリピン・エネルギー省は昨年12月に、中国との領土権係争地域に立地するSC72鉱区に不可抗力(フォース・マジュール、force majeure)条項を宣言、探査活動停止を命じた。これを受けて、フィレックス・マイニンググループ(担当企業はフォーラム)は、12月15日から探査活動を停止している。

 SC72鉱区が立地するレクト環礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあり、フィリピン政府はリード環礁での領有権争いは存在しないと主張して きている。しかし、フィリピン政府は2013年に、南シナ海での中国との領有権に関して、国連海洋法条約に基づく国際仲裁裁判を請求したという経緯があ る。この国際仲裁の手続きに配慮、SC72鉱区における探査停止を決定したものと見られる(15年3月3日のフィリピン証券取引所回覧00986-2015号などより)。