東京電力とマニラ電力(メラルコ)、提携覚書に署名
2015/02/08
顧客サービス強化のため先端技術・情報共有へ
当地最大の配電企業マニラ電力(メラルコ)と東京電力(東電)は、2月6日、マニラ首都圏パシグ市のメラルコ本社において、顧客サービス強化に関する提携覚書(MoU)に署名した。
このMoUのもとで、東電とメラルコは、日本とフィリピン両国の電力顧客サービスを向上させる先端エネルギー・ソリューションにつながる最新・最高の技術・情報を共有する。署名はメラルコのオスカー・レイエス社長兼CEO(最高経営責任者)と東電国際部の小島英夫部長との間で行われた。このほか署名式には、、メラルコのアルフレッド・パンリーリョ専務兼家庭顧客サービス部長、ラモン・セギスムンド専務兼人事・法人サービス部長、メラルコ傘下の発電企業メラルコ・パワー・ジェネレーション(Mジェン)のアーロン・ドミンゴ副社長、東電と丸紅の折半フィリピン合弁企業TeaMエナジーの久米俊郎副社長兼CFO(最高財務責任者)などが出席した。
約63年の歴史を有し日本の電力需要の約3分の1を担う東電は、非常に豊富な電力関連技術の集積があり、最近では、次世代自動車用バッテリー、スマートメーター活用サービス、エネルギー業界向けクラウドサービスなどの先端技術開発にも余念がない。また、2016年の電力家庭向け小売り自由化に向けて、組織改編や異業種との提携などにも着手しつつある。
一方、約550万の顧客を有するメラルコは、発電事業再参入を果たし数年内に1500メガワットの発電能力を構築する方針。そして、電力プリぺイドカード、電動車両(EV)やEV充電ステーション、電力消費効率化に資するメラルコ・バーチャル・エンジン(MoeV)アプリケーションなどのエネルギー・ソリューションや技術開発のパイオニアとしても知られている。
東電とメラルコは東日本大震災・福島第一原子力発電所事故(原発事故)発生以前から協力関係を築いてきたが、原発事故以降は、事故処理や被災者に対する賠償への対応に追われる東電にメラルコが配慮、新たな提携合意などはしばらく行われなかった。
しかし、東電が原発事故の賠償費用の確保や2016年の電力小売り自由化などに備えるための収益多様化の一環として、「2014年度 東京電力グループ アクション・プラン(2014年3月31日公表)」において、「既存の海外事業会社を活用しつつ、海外IPP投資事業についても拡大を図る」方針を掲げ、実際に、フィリピンでの投資再開を決定したことなどを受けて、両社は提携関係を強化、今回の顧客サービス強化に関する提携覚書に至ったようだ。
フィリピンにおいて、東電は丸紅とともに2006年12月に、米独立系発電大手ミラント社が実施したミラント社グ ループ会社でフィリピン最大のIPP事業持株会社であった「ミラント・アジア・パシフィック社(MAPL社)」資産売却に関する国際入札において、34億2,400万米ドルで落札した。この落札資産(3発電所など)をベースに、丸紅と東電の折半合弁企業TeaMエナジーがフィリピンで発電事業を展開してきている。
そして、TeaMエナジーはフィリピン最大級の独立系発電企業(IPP)となるとともに、辺境地域の電化にも大きく貢献してきた。しかし、原発事故の損害賠償資金確保の一環として、一時は東電がフィリピン事業から撤退するのではとの観測が浮上、その動向が注目されてきた。
そのような状況下で、2014年にTeaMエナジーは、現地有力発電企業アボイティス・パワーの子会社サーマルパワー(TPI)と合弁企業パグビラオ・エナジー社 (PEC社)を設立し、パグビラオ第3発電所(400メガワット)を建設することを決定した。すなわち、福島第1原子力発電所事故で中断していた東京電力の海外投資が再開するといえる。
パグビラオ第3発電所(388メガワット)は、ケソン州にTeaMエナジーが所有する既存のパグビラオ発電所(735メガワット)と同じ敷地内に建設される。完工は2017年と予定されている。完工すると、パグビラオ発電所の総発電能力は1,123メガワットとなる。総事業費は9億7,600米ドルと見込まれている(15年2月6日のマニラ電力プレスリリースなどより)。