比ボホール島、ファブラボ活用で地域・産業振興
2015/01/06
3Dプリンターが威力、11日には3D組立イベント
3Dプリンタのボンサイラボ(本社:東京都港区)は、2015年1月11日に日本全国のファブラボ6カ所(仙台、渋谷、鎌倉、浜松、佐賀、太宰府)とフィリピンのファブラボ・ボホールの合計7カ所に3Dプリンタ『BS01+』の組立キットを提供、同時に『新春 3Dプリンタ組立てイベント』を開催する。イベントの模様はインターネットでライブ配信する。
<各拠点で3Dプリンタを“同時に”組立て>
ボンサイラボから各ファブラボに8色カラーの筐体正面に『BS01+』のロゴのない『BS01+』と同じ仕様の3Dプリンタを特別に提供、各ファブラボ がレーザーカッターや彫刻などを使い独自にロゴを入れて仕上げ、オリジナリティ溢れる3Dプリンタに仕上げる。
このイベントは“ものづくりを始めたい!”という一般の人たちにも開放される。メンバーとの交流の場として、また3Dプリンタの構造や仕組みを理解する 場として各ファブラボが連携しながら組み上げていく斬新なイベントになる。見学は無料だが、ファブラボに事前申込が必要である。
<地域発の“ものづくり・ムーブメント”発展のきっかけに>
今回の取り組みは、日本全国に展開するファブラボと、アジアの中でも積極的に活動するフィリピンに『BS01+』を提供することで、今後3Dプリンタを 「実際に見てみたい」、「体験したい」人が地域のファブラボに訪れ、「ものづくりをしたい」人たちが集まるきっかけを提供することでファブラボの活性化に つながり、日本を中心とした3Dプリンタをはじめとする“ものづくり・ムーブメント”がより発展するきっかけになればと考えている。
<『新春 3Dプリンタ組立てイベント』開催概要>
・開催日時 :2015年1月11日 11:00~ (集合は10:00)
・参加費 :無料
・内容 :ボンサイラボの超小型3Dプリンタ『BS01+』を各ファブラボが同時に組み立て。
・フィリピン開催地:ファブラブ ボホール(所在地:ボホール島 6300 タグビララン市)
なお、ファブラボとは、市民が自由に使える3Dプリンターなどのデジタル工作機械を備えた草の根ものづくり工房と、インターネットで相互に接続されたそ の世界的なネットワークのことである。2002年に米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授が著書『ものづくり革命 パーソナ ル・ファブリケーションの夜明け』で紹介して以来、世界中に急速に広がり、2014年現在、世界に400ヵ所以上、アジアには30ヵ所以上の拠点があると いわれている。
近年のものづくりでは、3Dプリンターなどデジタル機械の価格低下の影響もあり、地域や個人の問題を自分たちで解決しようとする市民による「問題解決型 デザイン」が盛んになっている。とりわけ、ファブラボを中心として行われる、インターネットを介して共有されたデータを利用する相互的な問題解決型デザイ ンは、「オープン・イノベーション」と呼ばれ、世界的に勢いを増している。
ガーシェンフェルド教授の著書を通じてその存在を知ったという、JICA青年海外協力隊員の徳島さんが、ボホール島州立大学にファブラボを設立しようと 思い立っ たのは2012年のこと。高品質なものづくりの支援を目指しフィリピンに赴任した徳島さんの目に入ったのは、至る所に捨てられたプラスチックのごみと、そ れらを集めて生計を立てる人々の姿。ならば、プラスチックごみをそのまま売るのではなく、一度原料に戻して製品化すればもっと稼げるのではという発想が源 になっている。
徳島さんの奮闘を受けて、貿易産業省(DTI)、科学技術省(DOST)、ボホール島州立大学、JICAが共同で、市民工房「ファブラボ・ボホール」を 設立した。ボホール 州では、このファブラボを利用して、170以上に及ぶ工芸・食品セクターの地元中小零細企業の支援と、新しいコンセプトによる理科・数学・科学・技術横断 授業(STEM教育)の導入を予定している。
この「ファブラボ・ボホール」を起点に、 昨年5月2日から6日間にわたって、ボホール島州立大学においてものづくり国際会議「FAN1(FabLab Asia Network 1st Conference)」が開催された。「FAN1」にはアキノ大統領をはじめ、ドミ ンゴDTI長官など、中央政府からの参加者に加え、ボホール州政府やタグビララン市などの地元政府からも多くの関係者が参加するなどフィリピン国内でも大 きな注目を集めた。
タグビララン市は、「FAN1」で発表された、超小型機器による廃プラスチックリサイクル技術を用い、市内全町の15ヵ所にリサイクル設備を設立 することを決めた。放置されてごみの山となっている廃プラスチックの問題を解消すべく急ピッチで準備が進められつつある。
プロジェクトが軌道に乗れば、それぞれの施設に、廃プラスチック材を活用した3Dプリンターシステムやデジタル加工機などを追加し、タグビララン市内全 町にミニ・ファブラボを出現させる「Fab City化計画」も検討されており、ファブラボとオープン・イノベーションへの大きな期待をうかがわせる。
このような大きな価値を生んだ「FAN1」と、その後のファブラボ・ボホールの活動について、アキノ大統領自身が参加し高く評価したことや、国や分野を 越えた横断的で国際的な活動である点などが評価され、「FAN1」は2014年度グッドデザイン賞(公益財団法人日本デザイン振興会主催)の「公共向けの 取り組み・社会貢献活動部門」での受賞に至った(14年12月24日のボンサイラボ株式会社ニュースリリース、JICAウエブサイトなどより)。