在フィリピン日系企業、営業黒字比率71%に

2014/12/18

来年の増益予想比率52%:ジェトロの14年調査
事業拡大意向比率59%に上昇(中国46%に低下)

 

 日本貿易振興機構(ジェトロ)は2014年10~11月、北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施、12月16日にその結果を「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」として発表した。有効回答は4,767社(有効回答率47.3%)。調査結果のポイント・要旨、及びフィリピン進出日系企業動向は以下の通り。



1.フィリピンでの事業拡大意欲58.7%に上昇、中国では46.5%に低下
 今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」と回答した企業の割合は56.3%と、前年(59.8%)から3.5ポイント減少。中国では「拡大」と回答した企業の割合が前年比7.7ポイント減少の46.5%となり、「現状維持」が増えた。ASEANでは「拡大」と回答した企業の割合は前年比2.8ポイント減少の60.3%、2009年には5割を切ったが2012年に中国の割合を逆転し、今年はその差が13.8ポイントに拡大した。
 フィリピンでは、「拡大」と回答した企業の割合は、2009年の31.0%を底に増加傾向にある(今年は58.7%)
。事業拡大意欲が強いのは、カンボジア(79.5%)、インド (78.2%)、バングラデシュ(71.1%)などの新興国。


2.最大の問題点は全体では「賃金上昇」(72%)だがフィリピンでは44.2%、フィリピンの賃上げ率5%台
 経営上の問題点は「従業員の賃金上昇」を挙げる企業が全体で72.2%に達し、最も多かった。特に中国、インドネシア、カンボジアでは8割以上の企業が挙げた。2014年の賃金ベースアップ率(前年度比、平均)はインドネシア、パキスタン、ミャンマー、カンボジア、インド、バングラデシュ、スリランカの7カ国で、2桁を記録。2015年についても、インドネシア、パキスタン、カンボジア、インドの4カ国で2桁の上昇率を見込む。中国については賃金ベースアップ率の調査を開始した2010年以降2桁上昇が続いたが、2013年以降は1桁の上昇となり2015年は7.9%の見込み。依然として経営上の問題点として考える企業が多い。
 フィリピンの2014年の賃金上昇率は5.1%、2015年見込みも5.3%にとどまっている。経営上の問題点とされた比率は44.2%で、ASEAN諸国では最低、全体でも16位と低かった。


3.現地調達率、フィリピンは28.9%、中国は過去最高の66.2%
 コスト上昇への対応策としては、「管理費・間接費の削減」(49.5%)や「原材料調達先・内容の見直し」(41.4%)が4割を超え、「人材の現地化の推進、人件費の削減」(25.7%)を挙げる企業もあった。「自動化・省力化の推進(産業用ロボットの導入等)」(21.5%)を挙げた企業の割合は、3年前から3.6ポイント上昇した。

また、製造コストに占める割合が平均60.2%に達する材料費の低減に向けて、「現地調達率を引き上げる」方針を示した企業の割合は全体の75.7%に上る。中国の現地調達率は年々上昇しており、2005年以降最高の66.2%に達した(2005年は46.9%)。ASEANは41.9%であり、現地調達率はベトナムが伸びているものの他の主要国では2010年と比べほぼ横ばい。
 フィリピンの現地調達比率は28.9%で、スリランカの7.9%、カンボジアの8.9%、香港・マカオの18.1%に次ぐ低水準であった。そして、日本からの調達比率が43.9%、ASEANからが8.8%、中国からが6.9%であった。


4.黒字企業の割合は国・地域でばらつき、フィリピンは71.2%
2014年の営業利益(見込み)を「黒字」とした企業の割合は63.9%で、前年調査(64.6%)からほぼ横ばいであった。国・地域別では、パキスタンの同割合が84.2%と最も高く、これに台湾(83.8%)、韓国(76.2%)、オーストラリア(71.5%)、香港・マカオ(71.5%)、フィリピン(71.2%)などが続いた。他方、業歴が浅い企業が多いミャンマー(8.0%)、ラオス(23.1%)、カンボジア(25.6%)などでは、黒字企業の割合が相対的に低かった。企業規模別でみると、大企業では69.9%が黒字で、中小企業の52.6%を17.3ポイント上回った。特にインドネシア、香港・マカオ、ベトナム、マレーシア、中国では、大企業の黒字企業の割合が中小企業より20ポイント以上高い。


5.2015年の景況感は新興国を中心に大幅に改善
 2015年の見通しについては、営業利益が「改善」するとした企業の割合が49.1%に達する一方、 「悪化」は14年見込みから減少し、11.7%となった。景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した割合から「悪化」した割合を引いた数値)は37.4ポイントとなり、14年見込みと比べ21.3ポイント上昇。改善の理由は「現地市場での売上増加」が最大。また、バングラデシュ、カンボジアなどの新興国では、DI値が60ポイントを上回り、景況感が大幅に改善した。
 フィリピンでは改善見込み比率が52.2%、悪化見込み比率が11.6%。DI値は40.6%で、2014年の18.7%を大幅に上回っている


6.FTA・EPAは繊維、輸送機械器具を中心に活用進む、フィリピンでは32%
貿易を行っている企業のうち、FTA、EPA(日本が締結しているかどうかは問わない)を活用している企業の割合は43.7%となり、前年調査(41.2%)から2.5ポイント増加した。輸出、輸入別にみても、その活用率は前年調査から各々2.5ポイント増加した。国・地域別の活用率では韓国、インドネシア、ニュージーランド、タイが5割超で相対的に高い。また、業種別では繊維、輸送機械器具、化学・医薬、食料品で5割を超えており、FTA・EPAの活用が相対的に進んでいる。フィリピン進出日系企業の活用率は32.0%にとどまっている


7.AEC、RCEPでは、通関に係る制度・手続きの簡素化に期待
 2015年に発足するASEAN経済共同体(AEC)に期待する項目について、63.9%の企業が「通関手続きの簡素化(通関申告書の統一、輸出入のシングルウインドウ化)」を挙げた。特にインドネシア、ラオスでは7割以上の企業が期待している。フィリピンでも63.9%に達している。また、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の中で検討されている項目のうち、「通関に係る制度・手続きの簡素化」への期待が56.7%と最も高かった。フィリピンでは62.7%であった(14年12月16日の日本貿易振興機構発表より)。