第2四半期の経常収支黒字、41%増の31億ドル

2014/09/23

上半期累計では39億ドルの黒字、対GDP比2.9%
OFW送金効果で黒字継続、12年連続の黒字へ

 

 フィリピン中央銀行(BSP)は9月22日、2014年第2四半期(14年6月末)及び上半期(1~6月)の国際総合収支(BOP)を発表した。

 フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金により、経常収支は黒字というパターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、景気の押し上げ要因となっている。また、フィリピン格付引き上げラッシュの大きな要素ともなってきた。

 [2014年第2四半期]
 14年第2四半期の経常収支の黒字額は前年同期比41.5%増の31億2,200万米ドルに拡大した経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は3.7%、4.4%で、 ともに前年同期の2.7%、3.2%を上回った。海外フィリピン人就労者(OFW)送金など第二次所得収支の堅調な成長と貿易収支赤字削減の相乗効果が経常収支の黒字を継続させた。 OFWの送金は5.9%増の65億8,900万米ドルであった。

 一方、国際収支(BOP)は3億3,000万米ドルの黒字となったが、前年同期の10億4,100万米ドルの黒字に比べ68.3%減と大幅に縮小した。 対GNI比、対GDP比は0.4%、0.5%で、ともに前年同期の1.3%、1.5%を下回った。

第2四半期の国際総合収支(単位:百万米ドル)

項目 2014年 2013年  伸び率(%)
経常収支  3122  2207  41.5
資本移転等収支  26  31  -16.1
金融収支(マイナス勘定)  912  2649  -65.6
誤差脱漏  -1905  1452  
国際総合収支  330 1041  -68.3



 
[2014年上半期]
 14年上半期の経常収支の黒字額は前年同期比10.3%減の39億1,800万米ドルに縮小した経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は2.4%、2.9%で、 ともに前年同期の2.7%、3.3%を下回った。OFWの送金は6.2%増の126億7,400万米ドルであった。 

 一方、国際収支は、41億4,400万米ドルの赤字に転落(前年同期25億7,700万米ドルの黒字)。新統計表示ではマイナス勘定となる金融収支が46億0,700万米ドルと前年同期から6.5倍に膨らみ、経常収支の39億1,800万米ドルの黒字を大きく上回ったことによる。


上半期の国際総合収支(単位:百万米ドル)

項目 2014年 2013年  伸び率(%)
経常収支  3918  4369  -10.3
資本移転等収支  52  57  -8.8
金融収支(マイナス勘定)  4607  709  549.8
誤差脱漏  -3507  -1141  -207.4
国際総合収支  -4144  2577  赤字転落


 世界経済成長 は、日米など先進諸国の景気回復が順調なペースで進んでいるが、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和縮小などにより、金融市場の不安定さが増し、新 興市場資産に対するリスク選好度が低下。フィリピンへの資本流入にも悪影響を与えた。その結果、第2四半期末の外貨準備高(GIR)は807億米ドル。2013年12月末の832億米ドルを3%下回った。これは輸入の11カ月分に相当する水準。また、原本ベース短期対外負債の約8.4倍、残存ベース短期対外負債の6倍に相当する水準である。

 [国際総合収支発表について]
 中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。

 ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、9月22日に発表された2014年8月及び年初8カ月間の速報値。それによると、8月は1億1,400万米ドルの黒字、年初8カ月間は35億3,000万米ドルの赤字であった。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期ベースである。


 国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル)

項目 第2四半期 上半期
14年 13年 伸び率(%) 14年 13年 伸び率(%)
貿易・サービス・第一次所得収支 -2354 -2847 17.3 -6555 -5287 -24.0
  貿易・サービス収支 -2550 -2923 12.8 -6848 -5480 -25.0
     貿易収支 -3154 -4210 25.1 -8594 -7604 -13.0
       対GNI比(%) -3.7 -5.2 - -5.3 -4.8 -
       対GDP比(%) -4.5 -6.2 - -6.4 -5.7 -
         輸出 11630 11135 4.4 21756 21681 0.3
         輸入 14784 15345 -3.7 30350 29285 3.6
      サービス収支 604 1287 -53.1 1746 2124 -17.8
  第一次所得収支 196 76 157.9 293 193 51.8
第二次所得収支 5475 5054 8.3 10473 9656 8.5
経常収支 3122 2207 41.5 3918 4369 -10.3
   対GNI比(%) 3.7 2.7 - 2.4 2.7 -
   対GDP比(%) 4.4 3.2 - 2.9 3.3 -
 
資本移転等収支   26 31 -16.1 52 57 -8.8
 
金融収支(マイナス勘定)    912 2649 -65.6 4607 709 549.8
  直接投資 -429 852 純流出へ -1079 42 純流出へ
  証券投資 -521 -478 -9.0 1894 -1263 買い越しに
  金融派生商品 -7 -25 72.0 -26 24 売り越しに
  その他投資 1869 2301 -18.8 3817 1905 100.4
 
誤差脱漏 -1905 1452 マイナスへ -3507 -1141 -207.4
 
国際総合収支 330 1041 -68.3 -4144 2577 赤字転落
 対GNI比(%) 0.4 1.3 - -2.5 1.6 -
 対GDP比(%) 0.5 1.5 - -3.1 1.9 -
 
OFW送金額合計 6589 6222 5.9 12674 11931 6.2
 うち銀行経由分 5944 5633 5.5 11422 10800 5.8

(出所:BSP資料より作成、注:14年は全て速報値)

 [対外収支の長期的な動き]
 国際総合収支は2005年以降黒字が定着、2010年に143億800万米ドル、対GNI比5.4%、対GDP比7.2%という史上最高の黒字を計上した。 貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するというパターンが定着している。経常収支は2003年から11年連 続の黒字となっている。長期的かつ継続的な統計が入手不可能であるが、手許数値比較では2013年の経常収支黒字は史上最高水準となっている(14年9月22日のフィリピン中央銀行発表などより)。


フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)   

03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年  12年 13年
貿易・サービス収支 -7814 -7461 -9113 -6595 -6142 -11725 -6728 -8231 -11492 -12747 -11704
 対GNI比 -7.6% -6.6% -7.0% -4.3% -3.3% -5.3% -3.0% -3.1% -3.9% -4.3% -3.6%
 対GDP比 -9.3% -8.2% -8.8% -5.4% -4.1% -6.8% -4.0% -4.1% -5.1% -5.3% -4.3%
経常収支 285 1625 1980 5341 7112 3627 9358 8922 7125 6949 9423
 対GNI比 0.3% 1.4% 1.5% 3.5% 3.8% 1.7% 4.2% 3.4% 2.4% 2.3% 2.9%
 対GDP比 0.3% 1.8% 1.9% 4.4% 4.8% 2.1% 5.6% 4.5% 3.2% 2.8% 3.5%
国際総合収支 115 -280 2410 3769 8557 89 6421 14308 11400 9236 5085
 対GNI比 0.1% -0.2% 1.9% 2.5% 4.6% 0.0% 2.9% 5.4% 3.8% 3.1% 1.6%
 対GDP比 0.1% -0.3% 2.3% 3.1% 5.7% 0.1% 3.8% 7.2% 5.1% 3.7% 1.9%

(出所:中央銀行資料より作成)