7月のインフレ率4.9%、ほぼ3年ぶりの高水準

2014/08/05

食料品価格の8.7%上昇が響く

 

 フィリピン国家統計局(NSO)発表によると、2014年7月の総合消費者物価(2006年=100)は前年同月比で4.9%上昇(速報値)。前月(4.4%)から0.5%ポイント上昇したが、フィリピン中央銀行(BSP)の7月のインフレ率予想圏内(4.1~4.9%)の上限にとどまると共に、政府の 2014年インフレ目標圏内(3.0~5.0%)にもおさまった。

 7月のインフレ率は2011年10月に5.2%を記録して以来最も高い水準になった。7月のインフレ率を引き上げた主な要因は、物価指数構成比の大きなシェアを占める食料品価格の上昇。最近の悪天候により米、野菜、肉類、魚類、乳製品、果物、砂糖、油脂、コーンなどの生産が影響を受け、市場への供給量が減少した結果である。

 特定食料品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は3.0%と、前月の2.8%から0.2%ポイント上昇した。

 地域別では、マニラ首都圏(地域別構成比30.006%)の総合インフレ率は3.9%で前月(3.6%)から0.3%ポイント上昇。一方、首都圏以外の地方 (地域別構成比 69.994%)の総合インフレ率は5.1%と、前月(4.7%)から0.4%ポイント上昇した。

 2014年年初7カ月間(1~7月)の平均総合インフレ率は4.3%で、2014年度政府インフレ目標(3.0~5.0%)のほぼ中央値で推移している。平均コアインフレ率は2.9%であった。 



           消費者物価上昇率(インフレ率:2006年基準の前年同月比%)

項目 14年7月 14年6月 13年7月 14年1-7月
全国    総合インフレ率 4.9 4.4 2.5 4.3
 コアインフレ率 3.0 2.8 2.3 2.9
首都圏  総合インフレ率 3.9 3.6 1.0 3.3
地方    総合インフレ率 5.1 4.7 2.9 4.7

(出所:フィリピン国家統計局資料より作成)



              総合消費者物価上昇率年平均(2006年基準、前年同月比%)

2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
平均インフレ率 8.3 4.2 3.8 4.6 3.2 3.0

(出所:フィリピン国家統計局資料より作成)


     政府のインフレ率目標と実績の推移(過去実績はその目標設定時の2000年基準値)

2008年 2009年 2010年 2011年 2012~14年 2015~16年
インフレ目標 3.0~5.0% 2.5~4.5% 3.5~5.5% 3.0~5.0% 3.0~5.0% 2.0~4.0%
インフレ率実績 9.3% 3.2% 3.8% 4.4% - -

(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)


                 総合消費者物価上昇率(2006年基準、前年同月比%)

項目 年間 13年 14年 
13年 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月  7月
総合 3.0 2.5 2.1 2.7 2.9 3.3 4.1 4.2 4.1 3.9 4.1 4.5 4.4 4.9 
食料品・非アルコール飲料 2.8 2.3 1.8 2.5 3.2 3.9 4.8 5.5 5.5 5.8 6.2 6.7 7.4 8.2 
酒類・煙草 29.8 31.1 31.0 31.2 31.0 30.7 30.9 17.6 7.1 4.9 4.1 4.0 3.7 3.5 
衣料・靴類 3.6 3.1 3.0 2.9 3.0 2.9 3.1 3.4 3.7 3.7 3.3 3.4 3.4 3.3 
住宅・光熱・燃料 1.7 0.6 -0.3 1.1 0.8 1.9 3.5 3.4 3.6 2.7 3.1 3.7 2.3 2.4 
家庭用品・営繕 3.3 2.9 2.4 2.3 2.2 2.3 2.4 2.6 2.8 2.8 2.4 2.5 2.6 2.6 
健康・医療 3.0 2.6 2.6 2.7 2.5 2.5 2.9 3.2 3.3 3.3 3.0 3.0 3.0 3.2 
交通・輸送 0.6 1.6 1.0 0.6 0.5 0.7 1.2 1.2 1.0 1.0 1.3 1.5 1.3 1.5 
通信 0.2 0.1 0.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.0 
娯楽・文化 2.3 2.5 2.5 2.5 2.5 2.5 2.4 2.5 2.5 2.4 2.4 2.3 1.2 1.3 
教育 4.5 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 5.0 5.1 
外食・サービス他 2.4 2.0 2.2 2.2 2.2 2.1 2.3 2.2 2.2 2.0 2.0 1.9 1.9 1.8 
首都圏 1.6 1.0 -0.1 1.1 1.1 1.9 2.6 2.7 2.8 2.9 3.3 3.8 3.6 3.9 
 地方 3.3 2.9 2.7 3.1 3.4 3.8 4.6 4.6 4.5 4.2 4.4 4.7 4.7 5.1 





                    食料品物価上昇率(2006年基準、前年同月比%)

項目 食料 コーン 果物 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 パン・シリアル 砂糖・菓子類 その他食品
13/7月 2.3 2.4 3.6 4.9 4.3 2.1 2.6 1.7 -7.6 2.5 -2.8 3.1
8月 1.8 3.9 3.6 4.3 -2.6 2.0 1.4 1.7 -7.3 3.6 -4.1 2.8
9月 2.5 7.1 3.9 3.8 -3.7 2.0 1.5 1.7 -6.8 6.0 -4.2 3.3
10月 3.4 7.8 3.7 3.8 1.2 2.2 2.5 1.6 -5.6 6.4 -4.0 3.4
11月 4.0 8.1 3.6 3.9 5.4 2.2 3.1 1.5 -4.5 6.6 -2.7 3.3
12月 5.0 9.2 3.8 4.3 9.8 2.3 3.3 1.7 -1.9 7.4 0.1 3.6
14/1月 5.7 10.0 3.3 4.2 12.1 2.6 4.3 2.0 0.4 8.0 2.0 3.8
2月 5.9 10.7 3.0 5.5 12.0 2.6 3.9 2.3 1.2 8.4 2.4 3.9
3月 6.0 11.8 4.5 5.8 8.7 2.9 3.9 2.4 2.2 9.4 3.1 4.7
4月 6.5 12.1 4.9 5.8 8.2 3.4 5.0 2.5 3.4 9.7 3.6 6.5
5月 7.1 12.9 5.6 6.1 8.4 4.0 5.6 2.8 5.1 10.3 4.3 9.1
 6月  7.8  13.6  7.2  4.6  12.4  4.6 5.4  3.1 6.1   10.8  6.4 10.3
 7月 8.7   14.4  7.8  5.8  16.1  5.1 5.8  3.6 7.0   11.5  7.1 10.0

(出所:フィリピン国家統計局資料より作成)


 なお、中央銀行(BSP)発表によると、2014年7月の総合インフレ率(2006年=100)4.9%への寄与度は、食料品・非アルコール飲料3.2% (うち食料品3.1%)、住宅・光熱・燃料0.5%、外食・サービス他0.2%、教育0.2%、酒類・煙草0.1%、衣料・靴類0.1%など。

 中央銀行(BSP)は、今後も、通貨政策の決定が物価安定の基本方針と一致するよう価格や生産の動向を綿密に監視していく方針を示した(14年8月5日のフィリピン国家統計局と中央銀行発表より)。
 

               14年7月のインフレ率(2006年=100)と寄与度(%)

項目 物価指数
構成比
7月 1-7月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 4.9 4.9 4.3 4.3
食料品・非アルコール飲料 38.98 8.2 3.2 6.5 2.5
   うち食料品のみ 36.29 8.7 3.1 6.8 2.5
酒類・煙草 2.00 3.5 0.1 6.2 0.1
衣料・靴類 2.95 3.3 0.1 3.4 0.1
住宅・光熱・燃料 22.47 2.4 0.5 3.1 0.7
家庭用品・営繕 3.22 2.6 0.1 2.6 0.1
健康・医療 2.99 3.2 0.1 3.1 0.1
交通・輸送 7.81 1.5 0.1 1.3 0.1
通信 2.26 0.0 0.0 0.0 0.0
娯楽・文化 1.93 1.3 0.0 2.1 0.0
教育 3.36 5.1 0.2 4.8 0.2
外食・サービス他 12.03 1.8 0.2 2.1 0.2

(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)