エプソン、バタンガス港からの出荷比率30%強に

2014/07/30

寄港便増やマニラ港混乱背景に100%達成目指す

 

 JICA専門家の桑島隆一氏(フィリピン運輸通信省出向)が、メールマガジン「バタンガス・スービック・ポート・ニュース」(全文ともに日本語と英語、無料)を創刊、このほど第4号が発行された。

 バタンガス港及びスービック港は、ルソン島の成長回廊であるスービック~クラーク~マニラ~バタンガス地域の経済発展を促進させる重要な港湾として、日本の支援で建設されたものである。両港の発展は、またマニラ港に集中するコンテナ貨物を分散させ、深刻化するマニラ首都圏の交通混雑の緩和にも寄与する。

 しかしながら、新しい港湾であるがゆえにまだ両港は十分に利用されるに至っていない。このため、バタンガス港及びスービック港の一層の発展や利用振興を 目的に、最新の港湾事情、調査結果、政策決定などの情報を提供することとなった。港湾物流がグローバル化する中、物流の効率化、そして両港の利用への意思 決定に寄与することを願っている。

 第4号には、1.日本郵船のコンテナ船がバタンガス港に寄港、2. フィリピン商工会議所がマニラ港の混雑緩和に政策提言、3. スービック港が「お得」なワケ(その1)、4. 私たちのバタンガス港への思い などが掲載されている。

 今回の私たちのバタンガス港への思いは、セイコーエプソン(以下エプソン、本社:長野県諏訪市)のフィリピン生産拠点であるエプソンプレシジョン・フィ リピン(EPPI)生産管理部門からの寄稿となっている。その内容は以下のとおり。

 エプソンプレシジョン・フィリピン(EPPI)はフィリピンルソン島最南端のLIMA工業団地(リパ市バタンガス州)に位置し、1998年に創業開始、 現在はEPSON主力商品である「プリンター」、「プロジェクター」の生産を行っている。年間の輸出入物量は約6,800コンテナ(FEU)、内約80% は世界各地へグローバルに製品出荷を行っている。
 
 EPPIは創業時から立地条件的にも「近いバタンガス港」の活用を視野に入れてきたが、コンテナ船の寄港が無いなど2011年まではすべてマニラ港からの輸出入であった。しかし戦略的な視点より、船会社及びバタンガス港管理会社との交渉を重ね、約1年の準備期間を経て、2012年1月からバタンガス港の活用をスタートした。

 バタンガス港活用にあたっては、マニラより高いトラック代金やシャーシ不足、空コン不足等、沢山の難題があったが、フォワーダーと港湾管理会社との3社連携を深め、それらの課題を全て解決し、現在は全体の30%強のコンテナをバタンガスから出荷するまでに至った。また、マニラ港より格段的に安価な総コストを実現している。

 昨今、マニラ市でのトラック規制が強化され、その影響はボディーブローのようにじわじわとオペレーションの効率悪化に繋がってきている。島内全ての事業体、物流における影響度は計りしれず、将来のマニラ港の姿を暗示しているようにも見える。
 
 一方、バタンガス港に於いては、トラックバン規制が無いため、出荷したい時に出荷でき、かつ出荷からO/Bまでのリードタイムも半分という大きなメリッ トも併せ持っている。 これらのメリットとマニラ港の現状を比較すれば、おのずと「将来どうあるべきか」の答えは見えてくる。EPPIは船便が増える今こそ、もっと思い切った活用拡大を推進する。

 EPPIの目標はできるだけ早い時期に100%バタンガス港を活用する事である。どこの企業も、安価で船足の短い、そして何よりも安定したサービスを、 「今」使いたいというのが本音であろう。 しかし、目先の事だけを捉えていては、将来に渡ってバタンガス港が活性化する事はない。
 
 EPPIは率先して持てる物量を、より多くバタンガス港へ送り込み、世界各地へ出荷する事を目指す。たとえそれが一過性の痛みを伴ったとしても、将来の EPPI、将来のバタンガスの国際港への道筋と理解し、推進して行く。しかし1社だけでは力不足です。同じ思いを持った事業体・関係組織・PEZA(国) の協力があって初めてそれは実現する事でもある。 思いは、「本当に近い将来に躍動感のある国際港への脱皮、その為に今行動する!」。

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